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アルゼンチン国債 デフォルト問題が長期化

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アルゼンチン国債 デフォルト問題が長期化

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米ニューヨーク  【アメリカを読む】

 7月末にアルゼンチン国債の一部が債務不履行(デフォルト)と認定された問題が長期化の様相をみせている。アルゼンチンの株式市場はデフォルト直後は急落したものの、その後は比較的安定した値動きで、2001年のデフォルト時のような大混乱はみられていない。ただし焦点となる米ヘッジファンドとの協議は解決の見通しがつかず、デフォルト扱いになった国債を保有する金融機関が即時完済を求めるといった事態も想定される。アルゼンチンの通貨ペソは下落基調が鮮明になっており、国民生活に大きな影響がでる懸念は依然としてくすぶっている。

 支払い能力は残存

 アルゼンチンは01年の債務不履行時に債務削減に応じた債権者への利払いができない状態で、7月30日には米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズがアルゼンチン国債の外貨建て長期信用格付けを一部債務不履行を示す「SD(セレクティブ・デフォルト)」に格下げ。8月1日には、デリバティブ(金融派生商品)取引の業界団体である国際スワップデリバティブ協会(ISDA)がアルゼンチンの債務不履行(デフォルト)を認定した。

 しかしアルゼンチンの株式市場はデフォルト認定直後は大きく値を下げたものの、その後は比較的安定した値動き。01年のデフォルト時のような、銀行に預金引き出しが殺到する取り付け騒ぎや、物価上昇を見越して生活必需品を買い占める動きは起きていない。

 デフォルトにも関わらずアルゼンチン経済が大混乱を回避している背景には、今回のデフォルトではアルゼンチンに支払い能力が残されていることがある。

 平等規約が年末に失効

 アルゼンチンが債権者に利払いできない理由は、米国の裁判所が全額返済を求めているヘッジファンドとの合意なしには利払いを認めないと判定したため。アルゼンチン側は利払いのための資金をニューヨークの銀行に預けているとの主張を繰り返しており、金融市場には「今回のデフォルトは一時的なもので、いずれは利払いが認められ、アルゼンチンはデフォルトから脱却できる」との観測もある。

 またアルゼンチン国債の保有者を平等に扱うよう定めた規約が年末に失効することから、市場には「年明けであればアルゼンチンがヘッジファンドに全額を返済しても、アルゼンチンが懸念するような、ヘッジファンド以外の他の債権者からも同様の扱いを求められるという事態は起きない」との楽観論もある。

 ただし米国の裁判所がヘッジファンドとの合意を求めている以上、ヘッジファンドの意向がアルゼンチンの命運を握っている状況に変わりはない。一部では第三者の金融機関がヘッジファンドからアルゼンチン国債を買い取り、ヘッジファンドを問題から切り離す案も浮上したが、ヘッジファンドは(8月)13日、「金融機関による買い取り額が安すぎる」と不満を表明して受け入れを拒否した。

 全額返済なら国民に不満

 また、クリスティーナ・フェルナンデス大統領(61)はヘッジファンドへの強硬姿勢を貫いて支持率を上げてきた経緯もある。年明け以降に、これまで「ハゲタカ」と呼んで厳しく批判してきたヘッジファンドへの全額返済に方針変更すれば、国民の間に不満が出る可能性もある。市場の楽観論にも関わらず、アルゼンチン国債のデフォルト問題は短期的な解決策は見通せないままだ。

 こうした事態が長引けば、利払いを受けられない債権者は何らかの対応をとらざるを得ない。債権者には、デフォルトが認定された場合に債務の即時完済を求める権利があり、この権利が行使されればアルゼンチンは数百億ドル単位の返済を求められる。事態の長期化懸念を受けて、アルゼンチンのブラックマーケットでは(8月)13日、ペソの対ドルレートが1ドル=13.15ペソまで下落し、デフォルト後の最安値を付けた。

 通貨の下落は、アルゼンチン国内での物価や金利の上昇を招く要因で、国民生活に大きな影響を及ぼしかねない事態だ。フェルナンデス氏は現段階では国民の支持を受けているが、経済状況が悪化した場合には、ヘッジファンドへの全額返済に応じざるを得なくなる場面も出てくることも想定される。

 アルゼンチン国債のデフォルト問題はそれぞれの思惑が複雑にからみあっており、事態の進展にはしばらく時間がかかりそうだ。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS

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