月２回掲載している人気連載「美のカリスマ　ＩＫＫＯのちょっといい話　聞きたい？」。今回は老舗コンクール「毎日書道展」に２年連続で入賞・入選を果たした腕前を持つＩＫＫＯさんが、人生のすべてを凝縮した格言を、自身の書と、「最も敬愛する１人」と語るきものデザイナー・池田重子先生に作っていただいた着物でつづった特別回です。

　≪自身の書でつづった「美しく生きる」≫

　墨と布が織りなす美しき和の世界。読めば涙が止まらなくなる“きものつづり”を、４ページにわたってお届けします。

　今回の特別編のきっかけは、インターネットで、ファンの方が私が今まで発信してきた言葉を、音楽とともに「名言集」として動画にしてくださったのをたまたま見つけたことです。私の言葉をホームページでまとめてくださっている方も。「涙が止まらない」と言ってくださる方もいて…。私の言葉が、少しでもみなさんのお役に立てているのだ…と、本当にうれしく、ありがたく思いました。それと同時に、おこがましいかもしれませんけれど、せっかくこうした表現の場をいただいているので、自分自身でも、今までの人生を自分なりに「格言」としてまとめてみたいと思ったのです。

　重ねた人生から「格言」が

　格言とはなんでしょうか。音楽や小説、映画などからヒントをいただいてできたもの。そして、自分の人生を積み重ねてきて自然と生まれてきた言葉…この２つだと思います。

　私も気がつくと５２歳。美、恋、仕事…。私なりに、日々自分の人生を受け止めて極めてきたつもりです。その中で生まれてきた「美しく生きるってなに？」という問いに対する確信を、格言としてお伝えしたいと思います。

　まず、「自分の人生ってよかったよね」と思えるように「生きる」ためには、「感謝」が何よりも大事です。人は、自分一人では生きていけません。常に周りを愛し、感謝することで、周りも「もっとよくしてあげよう」と思ってくれる。決して見返りを求めて感謝するのではありません。偽善の感謝は見破られます。心からの感謝が自然と自分の生きやすい道を作ってくれるのです。

　人のために尽くしてがんばる

　そうすると、人間関係の摩擦がなくなり、「福」が生まれます。１つ「福」がやってくると、雪だるまのようにどんどん福が膨らんでいく。

　これをきちっとやるために必要なのは何か。「たくさん食べて、笑って、がんばること」です。食べることはエネルギーをためること。暗い顔をしていては、運気も逃げていってしまいます。笑えば免疫力もあがるといいますね。そうすれば目標に向かってたくさんがんばれる。

　けれど、人生、がんばってもうまくいかないこともあります。それは、ひょっとして「一『生』懸命」と「一『所』懸命」の違いに気づいていないからかもしれません。「一生懸命」は、自分の人生のためにがんばること。「一所懸命」は中世の武士が先祖伝来の所領を命懸けで守ったことに由来します。つまり、一つの組織のために命がけでがんばること。

　もし、仕事でがんばってもうまくいかないことがあったら、「一生懸命」…つまり、自分のためだけにがんばっているのではないか、と考えてみてください。自分のためだけにがんばっていると、どうしても自分のクセが出てきてしまう。まずは、「一所懸命」…人のために尽くしてがんばってください。それが、結果として「一生懸命」につながっていくのです。

　涙の理由と解決する方法

　そうやってがんばっていると、いつか「別れ道」がやってきます。別れ道は迷い道。「こんなにがんばっているのに…」と、「涙」が生まれることでしょう。ここでお伝えしたいのは、「涙は体の一部。涙を大事にしてあげて」ということ。涙は体を痛めつけながら出てきます。自分の体が一生懸命絞り出した涙だからこそ、涙をむだ遣いしないでほしいのです。涙をたくさん流しても、根本的には解決しません。厳しいことを言いますが、涙を流していれば、悲劇のヒロインのような気分でいられる。酒に酔って逃げるように、涙に逃げているだけなのです。大事なのは、涙が流れた理由を受け止めて、解決する方法を見つけることです。涙を流すときは、「どういう意味の涙なのだろう？」としっかりと向き合ってみてください。

　涙が出たとき、その原因を放置していると、「心のよどみ」ができてしまう。涙をいくら流しても、根本的に解決しなければ、よどみを洗い流すことはできません。（美容家　ＩＫＫＯ／ＳＡＮＫＥＩ　ＥＸＰＲＥＳＳ）