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特別編(下) きものに込めた人生の物語 敬愛する池田重子先生に作っていただいた宝物
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こちらは東海道五十三次の場面を描いたきものです。帯留めは、刀のつば。無事旅を終えられるようにとの護身用です。人生は旅。「すべてはここから始まるのだ」という物語が込められています=2014年7月11日、東京都港区(寺河内美奈撮影)
≪いきつくのは「人に喜んでほしい」≫
そこで思うのは、「どんな時も愛を持って生きてゆきたい」ということ。愛があれば憎しみも消えてゆく。「悲しみも苦しみも自分の人生」と愛を持って「受け止め」、きちんと向き合って「清め」、そして「流す」。
そうやってすべてを洗い流し、無になって初めて「如実智心」…自分の心を知ることができるのです。
けれども、「三つ子の魂百まで」という言葉もありますが、それでもどうにもならないのが「完璧」を追い求めてしまう心。美しさは日々の平穏な暮らしから生まれますが、ぼんやりと生きていては気づけません。毎日、鋭い刃物の上を渡っているように生きているからこそ、その美しさに気づくことができるのです。
つまり、完璧に生きるというのは、美を得ると同時に、刃を背負ってしまうということ。自分の求めるように、他人をねじまげようとしてしまいます。だからといって、「他人に完璧を求め」なければいいのか。特に組織ですと、部下にも完璧を求めなければ「ぬるい上司だ」と思われてしまい、組織は低迷していってしまいます。やさしくして、許して実績をあげられるのなら、みんなやるのですから。
人は誰も刃を持っています。人間も動物ですから、怖い人には向けず、「ぬるい」人に刃を向けます。それは「甘えの刃」ですね。
完璧を求めなければ組織は回らない、かといってそうしては自分が苦しい…。だから、管理職につくと体調を崩してしまうのでしょう。
そんなときに、心を癒やしてくれるのが「美しい景色」。どんな言葉よりも、刀を背負った人の心を癒やしてくれる。母性愛を自然は自分に与えてくれます。
生きるとは、感謝して、食べて笑ってがんばって、泣いて迷って傷ついて、愛して癒やされて、そしてまた感謝して…の繰り返し。何回やっても、ゴールは見えません。ゴールなき闘いをどう楽しむか。それが人生なのだと思います。
私は「虎」年の生まれです。干支が4回回って少しののち、「五十の手習い」で書を始めました。自分に欠けたものを補おうと、習い始めたのです。自分の引き出しをもっともっと広げたい。そんな心の持ちようが、「美」につながっていくのだと思います。私なりに見つけた「美」で、少しでもみなさまに喜んでいただけたら…。「人に喜んでほしい」。そう、私の人生は、すべてそこにいきつくのです。(愛を込めて IKKO)
(美容家 IKKO/撮影:寺河内美奈/SANKEI EXPRESS)
2012年から雅冬炎(みやびとうえん)の姓号で書道を本格的に習い始め、13年に老舗コンクール「毎日書道展」で初出品初入選。今年も隷書作品が漢字部の佳作賞に輝いた。