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「イスラム国」邦人拘束情報から1週間 「捕虜交換」交渉難航 長期化の恐れ

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「イスラム国」邦人拘束情報から1週間 「捕虜交換」交渉難航 長期化の恐れ

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トルコ南部キリス近くのシリアとの国境地帯。トルコ軍の装甲車の向こう側で煙が上がっていた=2014年8月22日、トルコ・キリス(共同)  シリア北部で過激派「イスラム国」に湯川遥菜さん(42)、千葉市花見川区=が拘束されたとみられる事件が発覚して8月24日で1週間。

 湯川さんが同行していた反体制派武装組織「イスラム戦線」は、自分たちが拘束しているイスラム国関係者との「捕虜交換」交渉を開始したが、難航しているもようだ。反体制派の間では長期化を懸念する見方も出ている。

 「イスラム戦線」の地区幹部によると、湯川さんは(8月)14日にアレッポ郊外でイスラム国に拘束され、アレッポ郊外バーブに身柄が移されたとの情報がもたらされている。

 イスラム国の地元指導者の監視下にあるとみられ、イスラム戦線の地区幹部が交渉を提案、イスラム国側は前向きに応じる意向を伝えてきた。しかし、その後、具体的な進展はないという。

 シリアの過激派に詳しい専門家ハッジ氏は、イスラム国はこれまでに、アサド政権や、ほかの反体制派との間で捕虜交換に応じたことがあると説明する。ただ、外国人が関わる場合には「イスラム国との交渉はより厳しくなる」と指摘した。

 一方、シリア人記者は「解放に必要なのは身代金だ」と断言する。米紙ニューヨーク・タイムズによると、イスラム国に拘束されていたフランス人4人とスペイン人3人は身代金支払い後に解放された。

 反体制派の有力組織「シリア国民連合」がつくる「暫定政府」当局者は(8月)22日、イスラム国が日本政府にも身代金を要求する可能性が高いと指摘。反体制派の多くがイスラム国に2年以上拘束されたままで「いまだに安否すら分からない」と明かし、今回の事件も長期化すると予測した。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪勢力図激変 トルコ国境地帯、危険な越境≫

 迫撃砲弾が次々と落ち、鉄条網を隔てたオリーブ畑から煙が立ち上る。過激派「イスラム国」に拘束されたとみられる湯川さんが入ったシリア北部に隣接するトルコ国境地帯。「死を覚悟しなければ、シリアに行くべきではない」。越境取材経験のあるトルコ人記者は、シリアでは武装勢力間の勢力図が激変したとして、危険な越境に疑問を呈した。

 武装組織と激しい戦闘

 トルコ南部キリスに近い国境。装甲車のトルコ軍兵士たちがにらみを利かせる先には、シリア領が広がる。「すぐその辺りが、イスラム国の支配地域だ」。案内人が、イスラム国の黒い旗が掲げられた天然ガス施設を指さすと「ドン」という音が空気を震わせ、付近に迫撃砲5発が着弾した。

 湯川さんが同行していた反体制派武装組織「イスラム戦線」がイスラム国を攻撃しているといい、戦闘の激しさをうかがわせる。国境から見える丘の向こうには、湯川さんが拘束されているとみられるシリア北部バーブの町があると案内人が説明した。

 「いつどこにイスラム国が現れるか分からなくなった」。1年ほど前に、トルコ南東部アクチャカレからシリア入りしたドアン通信のハサン記者が振り返る。

 敵味方が判然とせず

 ハサン氏を含む計4人の取材チームは、地元武装勢力の案内で越境。イスラム国の支配が及んでいないはずの地域に、15人ほどの黒覆面の男たちが現れ、刀を突き付けてきた。イスラム国メンバーを名乗る男らはトルコ人のハサン氏を引き渡すよう武装勢力に要求、ハサン氏らは命からがら走って逃げた。

 シリア北部のトルコとの国境地帯は2012年頃まで、反体制派の穏健派武装組織「自由シリア軍」が大半を掌握していた。しかし、反体制派の分裂や過激なイスラム国の台頭で状況は一変。敵味方が判然としない複雑な状況となった。

 ハサン氏は湯川さんについて「遠い日本から来て、これほどの危険を冒してまでシリア入りする理由は何なのか」といぶかしみ、「自分は恐ろしくて二度と行かない」と硬い表情で付け加えた。(共同/SANKEI EXPRESS

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