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戦闘開始50日 ガザ無期限停戦合意 勝者なき解決 ハマス、和平の壁

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戦闘開始50日 ガザ無期限停戦合意 勝者なき解決 ハマス、和平の壁

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ガザ本格停戦合意と今後の交渉議題=2014年8月26日、仲介役のエジプト発表。※イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスが合意  イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスは8月26日、パレスチナ自治区ガザでの本格停戦に合意した。仲介役のエジプトが26日夜発表した。停戦は26日午後7時(日本時間27日午前1時)に発効、双方は攻撃を停止した。合意は無期限の停戦とし、人道物資搬入のためにイスラエルがガザ境界封鎖を緩和するなどの内容。

 7月8日に始まったガザでの戦闘は26日で50日目。ガザ側で2100人以上、イスラエル側も約70人が死亡しながら、双方が譲歩の姿勢を見せないまま消耗戦の様相を呈していた大規模戦闘に終止符が打たれた。

 イスラエルは近く、合意に基づきガザとの境界封鎖を緩和する。人道物資や復興のため建設資材が近く搬入される見通しだ。

 ハマスのアブズフリ報道官は「われわれはガザの勝利を宣言する」と述べ、ガザでは多くの住民が街頭に出て停戦を祝った。イスラエル政府のレゲブ報道官は合意について「われわれはガザの民生支援をするのに問題はない」と説明した。

 ケリー米国務長官は26日、合意を「強く支持する」との声明を出し、全ての当事者が完全に順守するよう要請。国連の潘基文事務総長も歓迎声明を発表した。

 合意では、イスラエルが人道物資や復興資材の搬入を認めるほか、ガザ沖での漁業規制を緩和。イスラエルが主張する「ガザの非武装化」やハマスが求めるガザでの港湾建設など残る課題については1カ月以内に交渉を再開する。

 ガザでは死者のほかに1万1000人以上が負傷。国連によると、イスラエル軍の攻撃で家を失った住民約47万5000人が避難民となっている。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪勝者なき解決 ハマス、和平の壁≫

 パレスチナ自治区ガザでの戦闘は50日目にようやく、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスが本格的な停戦で合意した。ハマス武装解除、ガザ封鎖解除という双方の主張は棚上げとなる勝者なき解決。今回の戦闘はパレスチナ国家樹立を目指す中東和平交渉にとってハマスが巨大な壁として立ちはだかっていることをあらためて示した。

 挙がらぬ成果

 「国民に平穏を取り戻す」。イスラエルのネタニヤフ政権はガザ軍事作戦について繰り返しこう説明してきた。地上作戦に踏み切り、ハマスがイスラエルへの攻撃などに使っていた地下トンネルを破壊。イスラエル治安筋は「多くのハマス戦闘員も殺害した」と述べ、ハマスに打撃を与えたと主張した。

 一方で、ガザからのロケット弾の射程はイスラエルが2005年にガザ撤退を実行して以降、確実に伸びている。イスラエル軍によると、ガザ戦闘でイスラエルに対し発射されたロケット弾は4500発超。ハマスの戦力拡大を証明した。

 地元メディアによると、ネタニヤフ首相の支持率は地上作戦開始直後に80%を超えたが、停戦直前には半分ほどにまで落ち込んだ。軍兵士60人超が死亡し「地上作戦を再開すれば被害が拡大する恐れがある」(イスラエル治安筋)。またガザ側の死傷者が増えれば国際社会からイスラエルへの風当たりが強まるのは必至だった。

 「ガザの勝利を宣言する」。ハマスのアブズフリ報道官は8月26日夜、本格停戦合意発効を受けこう訴えた。ガザ市民も街頭で喜びを爆発させる。しかし合意で言及されているのはガザへの人道支援、復興物資の搬入などだけ。ハマスが望んだガザ境界の封鎖解除や港湾・空港の建設は先送りに。

 ガザでは子供を含む2100人以上が亡くなり、自宅を失い避難所生活を余儀なくされている住民も多い。犠牲の大きさを考えると、現時点で手にしたものは大きいとはいえない。それでも、一時停戦を繰り返す中での交渉で「成果」が挙がらず、ハマスは圧倒的な軍事力を誇るイスラエルから大幅な譲歩を引き出すことはできないと判断した。

 高まる存在感

 ガザ戦闘で、イスラエルとの和平交渉の当事者、パレスチナ自治政府のアッバス議長の出番はほとんどなかった。

 アラファト前議長の死後、06年にパレスチナ評議会(議会)選で第1党となったハマスは政治勢力として大きな影響力を持つ。今年4月にはアッバス議長と暫定統一政府の発足を目指すことで合意。議長はイスラエルの反発があってもパレスチナの結束を選択した。

 イスラエル側にとっても、アラファト時代のように自爆テロで和平交渉を妨害する存在としてハマスに対応するだけでは済まなくなっている。ネタニヤフ首相は「ハマスは和平交渉の相手ではない」との立場を貫いているが、軍事的にも政治的にも存在感を増したハマスへの対処が政権内で議論となる可能性はある。(共同/SANKEI EXPRESS

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