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イラク新政権発足 国防相、内相未定の見切り発車 見えない「イスラム国」撃退戦略

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イラク新政権発足 国防相、内相未定の見切り発車 見えない「イスラム国」撃退戦略

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イラクの首都バグダッドで連邦議会に出席するハイダル・アバディ首相=2014年9月8日(ロイター)  イラク連邦議会は8日夜、ハイダル・アバディ首相候補(62)が提出した閣僚名簿を賛成多数で承認し、アバディ政権が発足した。主要各派が参加したが、治安を担う焦点の国防相、内相は未定。目標だった「挙国一致体制」の確立には至らず、10日の組閣期限を前に見切り発車となった。

 新政権は北部の主要都市を支配するイスラム教スンニ派の過激派「イスラム国」との対決が最優先課題となる。アバディ新首相は8日の演説で「結束してテロ集団から国土を解放し、治安と安全を取り戻す」と誓った。イスラム国がイラク北部の主要都市モスルを電撃的に制圧してから10日で3カ月だが、支配地域の住民から一定の支持を得ているほか、隣国シリアの戦闘で市街戦の経験がある難敵。早期撃退への戦略はまだ見当たらず、紛争が数年に及ぶのは必至の情勢だ。

 マリキ前政権のシーア派優遇政策が他勢力の離反とイスラム国の台頭を招いたことを踏まえ、スンニ派やクルド人も副大統領、副首相などに起用。国防相と内相の人事は約1週間の先送りを表明した。

 シーア派内に影響力を残すマリキ前首相を儀礼的なポストの副大統領の一人として処遇し、クルド人のジバリ前外相は副首相に。外相にはシーア派のジャファリ元首相が、石油相にはシーア派のアブドルマハディ元副大統領が起用された。

 マリキ氏は4月末の総選挙で勝利し、3期目の首相続投が確実視されていた。しかし、6月のイスラム国進攻を受けた国家分裂の危機に対応できず、内外の圧力を受けて8月14日に退陣を表明した。

 オバマ米大統領は8日、アバディ新首相と電話協議し、新政権の承認に祝意を伝えるとともに、イスラム国の脅威に対抗するため一層緊密な連携を図る方針で一致した。

 アバディ首相は、内相にシーア派民兵指導者を据えようとしたが、他派との調整が難航。スンニ派の起用を検討する国防相とともに人事を先送りせざるを得なかった。

 政権の顔触れは、副大統領のマリキ氏を含め、各派の重鎮がずらり。イラクの専門家は「長年のライバル同士も多く、イスラム国撃退に向けた真の挙国一致体制がつくれるかどうか予断を許さない」と分析する。

 それでも各派が期限内に閣僚を承認したのは、新政権を発足させなければ米欧から十分な軍事支援を受けられず、イスラム国に対峙できないとの危機感が背景にある。

 イスラム国は6月にモスルとティクリートを制圧。その後首都バグダッドに向けて進撃したが、政府軍は首都から約100キロ圏の防衛ラインをなんとか死守してきた。北部では8月、イスラム国がクルド人自治区の中心都市アルビルに一時約40キロまで迫り、クルド人部隊ペシュメルガは米国の空爆支援を得てようやく押し戻している状況だ。

 ペシュメルガのヒクマト報道官は「空爆によりクルドの防衛ラインが守られるようになった」と指摘。「(イラク軍から奪った)米国製の高性能兵器を持つイスラム国と戦うには同様の装備が必要。(米国などから)ライフルなどは届いたが、重火器の供与を待っているところだ」と述べた。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪シーア派アバディ首相 温厚な性格、融和期待≫

 アバディ新首相は、退陣したマリキ首相と同じイスラム教シーア派「アッダワ党」の元反体制活動家。しかし、温厚で、異なる意見に耳を傾ける点では対照的な人柄だ。宗派、民族間の対立を抑え、過激派「イスラム国」の台頭を封じて国家分裂を回避するという難題を担う。

 1952年、首都バグダッドの名家に生まれた。父は著名な医師。バグダッド大で学び、英マンチェスター大で電気工学の博士号。英BBC放送(電子版)によると、BBCが入居していたロンドン中心部のビルにエレベーター管理業務で数年間出入りしていたこともある。

 当時の与党バース党独裁に反対するアッダワ党の活動に取り組み、英国でのスポークスマン役を務めた。イラク国内でアッダワ党の地下活動をしていた2人のきょうだいはフセイン政権下で処刑された。

 2003年のイラク戦争開戦後に帰国して通信相や首相顧問を務め、05年の連邦議会議員に当選、副議長も務めた。目立たないタイプだが、政治家としての経験は豊富で、これまでも首相候補に取りざたされてきた。

 英語や西側事情に比較的通じているとされる。「敵をつくらない」と人柄が評価される半面、「シーア派政治勢力の本流に属し、利害はマリキ氏と同じ」とされ、大胆な政策転換は困難との見方もくすぶる。

 8日の連邦議会演説では「権力の分散を進める」とスンニ派やクルド人への配慮を見せた。(共同/SANKEI EXPRESS

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