ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
トレンド
「明日に向かう力与えられたら」 上橋菜穂子さんに「国際アンデルセン賞」メダル授与
更新
9月10日、首都メキシコ市で国際アンデルセン賞の賞状を授与される上橋菜穂子(うえはし・なほこ)さん(左)=2014年、メキシコ(共同) 「児童文学のノーベル賞」といわれる国際アンデルセン賞の作家賞を受賞した作家・上橋菜穂子(うえはし・なほこ)さん(52)が10日、メキシコ市で賞を主催する国際児童図書評議会(IBBY)からメダルと賞状を授与された。
日本人作家の受賞は1994年のまど・みちおさん以来20年ぶり。画家賞を含めると4人目となる。
1989年のデビューから四半世紀。2年に1度、子供の本に貢献した作家に贈られる賞に、「夢を見ているよう。これをきっかけに優れた日本の作家の本がどんどん海外に出て行ってくれたら」と喜ぶ。
代表作は、産経児童出版文化賞を受賞した「精霊の守り人」(96年刊)に始まる、「守り人」シリーズだ。「子供が読んでも、大人が読んでも面白い物語」と自ら胸を張るとおり、短槍(たんそう)使いの女用心棒バルサを主人公にした壮大な異世界ファンタジーは、全10巻と外伝2巻が刊行され、累計370万部を突破するベストセラーに。2016春にはNHKで綾瀬はるかさん主演の実写ドラマも放送開始予定。日本だけでなく、英語、スペイン語、イタリア語、中国語など多くの言語に翻訳されるなど時代と国境を超えて愛され続け、「物語ほど自然に感情に訴えながら伝わるコミュニケーション手段はない」との信念を裏付ける。
1962年、東京都生まれ。作家としての心の原風景は、幼い頃にある。体が弱く、病気がちだった少女は、父方の祖母のひざの上で昔話をたくさん聞かされたという。筋書きは祖母のアドリブで自在に変わり、想像する楽しさを自然と植え付けられた。「すごく調子の良い語りで物語が大好きになった」と振り返る。
文化人類学者として川村学園女子大学の特任教授も務める。オーストラリアの先住民アボリジニの研究などフィールドワークから来る、土地の文化や自然を慈しむ視点は「自然やあらゆる生き物への優しさや敬意にあふれている」(IBBY)と評された。「多様な価値観、文化を持つ人々が葛藤しながら生きる姿を描きたい。さまざまな環境にいる世界の子供たちに、(私の物語が)明日に向かって歩く力を与えてくれたらうれしい」
共同通信によると、授賞式のスピーチでも、異文化に生きる者同士の物語を描いた英国の歴史作家ローズマリ・サトクリフ(1920~92年)に大きな影響を受けたと明かした。「物語は『他者になる』力を与えてくれる。その力があるから私たちは他者と共に歩んでいく道を探せるのかもしれない」(SANKEI EXPRESS)