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朝日新聞 誤報問題の教訓 マスメディア「情報独占」許されず
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朝日新聞が5月20日付の紙面で報じた「吉田調書」の記事=2014年 朝日新聞が、東京電力福島第1原発の吉田昌郎(まさお)元所長=昨年7月、58歳で死去=の証言(吉田調書)をめぐる記事を取り消した問題は、報道の責任の重みが改めて明らかとなった。同時に、インターネットの普及でマスメディアの「情報独占」や疑義への対応に厳しい目が注がれるようになった現状も浮き彫りにした。朝日問題がメディア界に突き付けた教訓とは何か。
朝日新聞は5月20日付朝刊で、吉田氏が政府事故調査・検証委員会の聞き取りに答えた「聴取結果書」を入手した、と報道。解説記事では調書の公開が限定されていたことを指摘し、「全資料 公表すべきだ」と主張していた。だが、政府が実際に調書を公表した今月11日、朝日自身が記事を取り消すという皮肉な結果になった。
朝日新聞は11日の会見で、政府の調書公開と記事取り消しの時期が重なった因果関係を否定したが、ジャーナリストの門田隆将(かどた・りゅうしょう)氏は「調書を公開されたら記事の恣意(しい)性が検証されてしまうことを懸念したのだろう」と指摘する。今回、吉田氏を実際に取材した門田氏がブログで疑問を呈したことでネット上の注目が集まり、雑誌などが「疑問」を取り上げる下地をつくったといえる。
門田氏は「今回は、たまたま私のブログが注目されたが、今や当事者がネットで発信できる時代。一次情報を独占し、その一部を大衆に下げ渡していた従来の大メディアの手法は通用しなくなっている」と話す。
また、朝日新聞は今回、産経新聞を含む疑問を呈した他のメディアに法的措置の可能性を示した抗議文を送付し、後に撤回。一部週刊誌の新聞広告の掲載を拒否したり、一部表現を黒塗りにしたりといった対応にも注目が集まった。
上智大の田島泰彦教授(メディア法)は「侮辱的な批判は除き、報道機関として異なった報道が出てきた時点で検証を始め、記事に対する反論は紙面ですべきだった」と指摘。そのうえで、「疑義を持たれた報道に真摯(しんし)に対応することもジャーナリズムには求められている」と話す。
朝日新聞は11日、社内の新組織で取材や報道の問題点を検討すると同時に、吉田調書、慰安婦問題をめぐる報道について、それぞれ第三者機関に審理や検証を求める考えを示した。ただ、青山学院大の大石泰彦教授(ジャーナリズム倫理)は「メディア自身が自浄能力を示すことが最も大切。第三者機関に検証を依頼することも有効だが、第三者に丸投げして説明回避のための理由にしてはならない」と、くぎを刺す。
一方、「ほとんどのメディアにとって『誤報』は無縁ではない。謝罪だけを求める『朝日たたき』を超えて、各メディアがそれぞれジャーナリズムの倫理や文化を見つめ直してほしい」と大石教授。「疑義を持たれたら、これまでのように居直るのではなく、自律性を示すことが読者の信頼につながる」と強調している。(三品貴志/SANKEI EXPRESS)
≪政府・自民「朝日は関係者と日本の名誉回復図れ」≫
朝日新聞の誤報問題について、政府・自民党からは12日、朝日新聞自らが関係者の名誉回復と国際社会への日本の信頼回復を行うよう求める声が相次いだ。自民党内には徹底的な検証も必要だとする声も上がっている。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は12日の記者会見で、朝日新聞が吉田調書に関する記事を撤回したことに対し、「誤報があった場合、それが個人や企業、国家の利益や信頼に多大な影響を及ぼしてしまう重大性に鑑みて、速やかに訂正し、責任を持って毀損(きそん)された名誉の回復に最善を尽くしてほしい」と求めた。
また、「言論の自由、報道の自由があることはもちろんだ」と強調した上で、「報道の影響力の大きさを考えれば、誤報などがないように細心の注意を払っていただく必要がある」とも述べた。
朝日新聞が慰安婦問題に関する一部報道の「訂正の遅れ」について謝罪したことにも「誤報については、できるだけ速やかに謝罪すべきだった」と批判した。
慰安婦に関する朝日報道を問題視してきた自民党の議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・古屋圭司(ふるや・けいじ)前国家公安委員長)は、慰安婦募集の強制性を認めた1993(平成5)年の河野洋平(こうの・ようへい)官房長官談話の検証を求め、10月にも開く次回会合で、古巣の慰安婦報道に批判的な前川惠司元朝日新聞ソウル特派員を招く予定だ。
会幹事長代理の萩生田光一(はぎうだ・こういち)総裁特別補佐(51)は12日、産経新聞の取材に、朝日の11日の記者会見を「心から読者や社会に向かっての謝罪ではなく、何が悪かったのかというのは全然説明していない」と批判し、党に正式な検証組織を設けるべきだとの考えを示した。
党内からは「国民への説明責任を果たすべきだ」(三原じゅん子女性局長)と朝日関係者の国会招致を求める声も出てきた。
これに対し、谷垣禎一(さだかず)幹事長(69)は報道各社のコメント要請に応じず、二階(にかい)俊博総務会長(75)は記者会見で「われわれの立場で言及は控えたい」と論評を避けた。稲田朋美政調会長(55)は記者団に「世界中で日本の名誉が毀損されている。信頼回復のための措置を講じてほしい」と朝日に注文したが「報道機関自らが報道を検証するのが一番大切だ」とも述べた。(SANKEI EXPRESS)