ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
エンタメ
過去のどの役とも違う声で演じたい 舞台「ファントム」 城田優さんインタビュー
更新
撮影でファントム(エリック)の気配を漂わせた城田優(しろた・ゆう)さん。「役柄の心になりきって歌うと、全く(自分と)違うようになる」と語った=2014年6月17日、東京都港区(山田俊介撮影) 俳優の城田優(28)が13日から赤坂ACTシアター(東京)で上演されるミュージカル「ファントム 『オペラ座の怪人』の真実」(アーサー・コピット脚本、モーリー・イェストン作詞作曲、ダニエル・カトナー演出)で、仮面の奥に甘いマスクを封印し、異形の顔を持つ主人公ファントム(エリック)役に挑む。その容貌(ようぼう)により幽霊(ファントム)のようにして生きざるを得なかった主人公が、人間らしさを取り戻していく過程を「何より感情を大事にして演じたい」と話す。
仏作家、ガストン・ルルー(1868~1927年)のベストセラー小説「オペラ座の怪人」が原作。同じ原作のミュージカルに、劇団四季公演で有名なアンドリュー・ロイド=ウェバー作曲版や、その元祖とされるケン・ヒル版の「オペラ座の怪人」があるが、より深く主人公の人間性や内面の葛藤を掘り下げてみせるのが「ファントム」版の見どころだ。
自らを「オペラ座のファントム」と名乗るエリックは顔半分を仮面で覆い、オペラ座の地下で孤独に暮らす。かつて彼を愛で包んだオペラ座の元歌手の母親は早世。以降、唯一の味方は、オペラ座支配人のキャリエール(吉田栄作)だった。しかしある日、キャリエールが突然解雇される。頼みの綱を失った不安と怒りから、エリックは新支配人夫妻を追い出そうと、次々と怪奇現象を起こし人々を怖がらせる。城田は「偏屈に曲がってしまった部分と、オペラ座という大きなおもちゃ箱の中で遊んできた子供っぽさや、ピュアな部分とが同時にある」とエリックの本質を解釈する。
ところがある日、母に似た歌声にエリックの感情は揺さぶられる。声の主はオペラ歌手志望のクリスティーヌ(山下リオ)だった。「初めての恋です。一身に母の愛を受けていた幼少期の多幸感が、久々にエリックの胸によみがえります。光が差して、心の氷が解けるイメージです」
この遅い思春期は、エリックの心を温めた一方で、仮面の奥にしまい込んでいた情動を呼び覚ます。
イェストンの楽曲は、そんな感情のうねりを時にダイナミックに、また別の場面では繊細にメロディーに乗せる。当初、城田は「(エリックは)オペラに精通し、クリスティーヌに歌唱指導もするくらいだから、説得力を持たせるにはオペラのように歌ったほうがいいのか」と悩んだという。「ミュージカルでは話す声がそのまま歌になるのが素敵だし、心情を乗せることができるのでは」との思いがあったからだ。「だから直接、イェストンさんの前でオペラ風と、自分が思うエリックの声で歌ってみて、疑問をぶつけたんです。そしたら、『OK。そのままでいい。ロックスターみたいに歌って』と言われました。過去に演じたどの役とも違う、エリックとしての声をお聴かせしたい」
城田がどのようにして、ファントムからエリックへと仮面を脱がせていくのか。劇場に響く歌声がそのまま「解」となるはずだ。(文:津川綾子/撮影:山田俊介/SANKEI EXPRESS)
2014年9月13~29日 赤坂ACTシアター(東京)、キョードー東京(電)0570・550・799。10月5~15日 梅田芸術劇場メインホール(大阪)、劇場(電)06・6377・3800