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モンゴル 水面下で日朝交渉仲介

 拉致問題解決を目指す安倍晋三首相(59)の求めに応じ、モンゴルが日朝交渉の仲介役として存在感を発揮している。ソドブジャムツ・フレルバータル駐日モンゴル大使が産経新聞の取材に応じ、北朝鮮の特別調査委員会の再調査報告が明らかになれば、被害者とその家族の面会場所をモンゴル国内で提供する考えを表明した。日本政府はモンゴルから得られる情報も参考に日朝交渉を粘り強く進める構えだ。

 安倍首相は今年7月、来日したツァヒアギーン・エルベグドルジ大統領(51)と会談した際、「拉致問題解決に向け協力してほしい」と要請。大統領は「協力する」と応じていた。

 フレルバータル氏は、モンゴルが日本、北朝鮮両国と良好な関係にあることを強調。その上で「日本の言うことを北朝鮮に伝達し、北朝鮮の反応は日本に伝達する。われわれの努力だ」と述べ、水面下で日朝双方の外交当局者と接触していることを明らかにした。

 また、「北朝鮮には日本側が満足する報告をしてほしい。日本には北朝鮮側が期待する範囲の制裁解除も段階的にやってほしい」と双方が歩み寄るよう求めた。ただ、拉致被害者の帰国の可能性については「不透明で予断できない」と述べるにとどめた。

 モンゴルは、拉致された横田めぐみさん=拉致当時(13)=の両親が今年3月、めぐみさんの娘のキム・ウンギョンさんと面会した際に場所を提供した。フレルバータル氏はこうした働き掛けを踏まえ、「今後も日本からリクエストがあれば、もちろん努力する」と強調。拉致被害者が新たに判明した場合、家族らとの面会場所を提供する考えを示した。大統領はすでに、安倍首相と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記(31)による日朝首脳会談をモンゴルで開くよう提案している。

 一方、フレルバータル氏は、日本国内で飯島勲内閣官房参与(68)や在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の許宗萬(ホ・ジョンマン)議長と接触。「2人とは良い関係を持っている。仲がいい」と明かし、日朝交渉進展のため尽力していることも明らかにした。

 北朝鮮は金正日(キム・ジョンイル)総書記の体制下では、日本政府が認定している未帰国拉致被害者12人について「8人死亡・4人未入国」と主張。今回の調査は金正恩第1書記の指導下で初めて実施されたため、これまでの主張を覆す結果を日本側に示すかどうかが焦点となっていた。

 北朝鮮は7月4日、特別調査委員会に「拉致被害者」「行方不明者」「日本人遺骨問題」「残留日本人・日本人配偶者」-の4分科会を設置。委員長には国家安全保衛部副部長を兼務する徐大河(ソ・デハ)国防委員会安全担当参事が就任した。金第1書記に近い人物とされ、調査を主導してきたとみられる。

 ただ、北朝鮮は以前の調査で、めぐみさんのものとする「遺骨」を提示したものの、日本側のDNA型鑑定で別人と判明するなど数々のずさんな調査が浮き彫りになっている。このため、日本政府は今回、生存者情報の真偽を慎重に見極める構えだ。

 1回目の報告時期をめぐっては、7月1日に日朝外務省局長級協議が北京で開かれた際、「夏の終わりから秋の初め」を目標に実施することで合意していたが、菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)が19日の記者会見で報告時期のずれ込みを明らかにしている。(比護義則/SANKEI EXPRESS

 ■ソドブジャムツ・フレルバータル駐日モンゴル大使 ウランバートル出身。1976年、旧ソ連のモスクワ国際関係大学卒。モンゴル外務省入省。97~2001年、駐日モンゴル大使。05~08年、外務省アジア局長。08~11年、駐北朝鮮モンゴル大使。12年から現職。

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