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世界に羽ばたく日本のゲーム音楽 PRESS START-Symphony of Games-

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世界に羽ばたく日本のゲーム音楽 PRESS START-Symphony of Games-

更新

尺八と中棹三味線のユニットHIDE+HIDEによるオーケストラと和楽器の華やかな合奏=2014年9月13日(提供写真)  「PRESS START-Symphony of Games-」は、ゲーム曲をクラシックと同様の本格オーケストラの編曲で演奏するという画期的な企画だ。指揮は、カラヤンの招きでベルリンで研鑽を積んだ竹本泰蔵が務めた。

 脇役と思われる場合もあるゲーム音楽を聴くコンサートは、昔から存在していたわけではない。1980年代の初期は8bitという低規格で鳴らされていたゲーム音楽は、その頃から熱狂的なマニアは存在したが、生演奏で再現するコンサートは、すぐには開かれなかった。90年代にそうしたライブが行われたところ、思いがけず人気を博すことがわかって、次第に常態化していった。本格的な管弦楽を中心とした編曲により、ゲーム音楽を鑑賞しようというこの企画は、2006年に初めて開かれ、ゲームを愛するファンたちに大喝采を持って迎えられた。08年には上海で開かれ大成功も果たした。

 和楽器とのコラボも

 今回は、開催日に『大乱闘スマッシュブラザーズ』(任天堂)が発売されることを記念し、第1部はその収録曲の特集が企画された。人気作品のキャラクターが多数登場するため、あたかもゲーム音楽の集大成的な勢いのある内容となった。

 「今日はたくさんの音楽を演奏します。その音楽がよくなるために100%の力を注ぎました」と語る作曲家の酒井省吾は、短いゲーム曲を集合させてさまざまな編曲家にオーケストラ編曲を施させるこの企画には、数多くのハードルがあり、構成に苦心した様子をにおわせた。

 第2部は多彩なゲストを登場させながら進行。『悪魔城ドラキュラX~月下の夜想曲~』は、山根ミチルの編曲による幻想的な味わいが傑出していた。山根は「ゲーム音楽は、かつて容量的な音数や音色の制限が大変だったが、ゲーム機能が進化した現在では、そうした制限がなくなった。オーケストラで録音したものをそのまま収録して、いろいろなタイプの曲を作れるようになった」と語る。山根は11月に行われるメキシコのゲーム音楽フェス「VCONCERT2014」のヘッドライナーとして招かれている。ゲーム音楽をその黎明期より作りだしてきた俊英が、存分に才能を発揮し、世界にはばたく時が来た。

 『討鬼伝』/『討鬼伝 極』では、尺八と中棹三味線のユニットHIDE+HIDEが登場。オーケストラと和楽器の華やかな合奏が繰り広げられた。作品の持つ影と光の織りなす世界観が、こうした「和」の響きとよく共鳴し、ドラマチックなスリルを表現。ゲームの世界観は映像的なので、ロック・ベーシストでもあったという三味線の尾上秀樹(藤本流三味線準師範)のビジュアライズされたパフォーマンスがよく映えた。オーケストラメンバーには、ギターに窪田晴男、ベースにバカボン鈴木といった本格ロック・ミュージシャンたちも加わっており、エッジのたった演奏も迫力満点であった。

 圧倒的な輸出産業に

 本編最後は『ポケットモンスター X・Y』『ファイナルファンタジーXIII』という怪物的な2作品の曲で終わった。『ポケモン X・Y』の全世界での累計販売本数は1200万本、『ポケットモンスター』シリーズ全体では累計1億8600万本売れてることがMCで披露され、ゲームが圧倒的な日本の輸出産業として君臨していることを印象づけた。

 当日は、ウィーンでゲーム音楽コンサートを行う作曲家、植松伸夫からのビデオメッセージで15年の4月11日にPRESS STARTパリ公演が決定したことが発表された。いま、世界のさまざまな場所で日本のゲーム音楽の饗宴が繰り広げられる状況が生まれている。譜面は一度作られさえすれば、世界の現地オーケストラによって公演が可能だ。この日の会場にも外国人ファンの姿があった。今後の展開が楽しみなイベントである。(アーティスト・作詞家 サエキけんぞう/SANKEI EXPRESS

 ■PRESS START-Symphony of Games- 竹本泰蔵氏(指揮者)、桜井政博氏(ゲームデザイナー)、植松伸夫氏(作曲家)、酒井省吾氏(作編曲家)、野島一成氏(シナリオライター)の5人が企画するゲーム音楽のオーケストラコンサート。ゲームハードやメーカーの縛りにとらわれずに楽曲を選び、演奏する。2006年から毎年1回行われており、今年9回目を迎える。08年に上海公演、来年にはパリ公演を予定。さらなる世界進出が期待される。

 ■さえき・けんぞう アーティスト・作詞家。1980年ハルメンズでデビュー、86年パール兄弟で再デビュー、作詞家として、沢田研二、サディスティック・ミカ・バンド他多数に提供。最新刊は「ロックの闘い1965-1985」(シンコーミュージック)。

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