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国際
イランと「対IS協議」 米の綱渡り外交
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過激派「イスラム国」の活動範囲(※赤丸は主な空爆地点)=2014年9月23日現在、※米中央軍の資料などから作成
22日、米軍がシリア領内のイスラーム教スンニー派過激組織「イスラーム国」(IS)の拠点に対して空爆を開始した。米国とともにサウジアラビア、アラブ首長国連邦、ヨルダン、バハレーン、カタールも有志連合として軍事行動に参加した。
今回、米国は空爆をシリアとイランに事前通報した。特に米国との国交が30年以上断絶され、敵対関係にあるイランに事前通報を行ったことは、ISの掃討作戦に関してはイランと協調したいというオバマ政権の意向を示している。
<国連総会出席のためニューヨークを訪問中のイランのロウハニ大統領は23日、「他国への攻撃は国連の枠組みで行われるべきだ」と牽制(けんせい)しつつ、空爆そのものの非難には踏み込まなかった。そこには、今後、正念場を迎える核開発問題をめぐる協議などを念頭に、イスラム国という「共通の敵」との戦いを通じて米国との接近を図る意図も見え隠れしている>(9月24日「MSN産経ニュース」)
確かにロウハニ大統領は、米国との対決を避ける発言をしている。しかし、イランはこの機会を利用して中東における自らの影響力を高めようと腐心している。23日、イラン国営「イランラジオ」が興味深いニュースを報じた。
<イランのザリーフ外務大臣が、地域でのアメリカによる対テロ連合に参加しないことを明らかにしました。ザリーフ大臣は、中国の国営テレビCCTVのインタビューで、「イランは、アメリカが主導する連合に参加しないが、テロ組織ISIS(引用者注記・イラクとシリアのイスラーム国、ISの旧称)との戦いでイラク政府を支援する」と述べました。また、「あらゆる連合は、地域諸国の中から生まれるべきである」とし、「地域の危機の元凶は、地域外の圧力である。このため、この危機を、それを起こした首謀者と共に解決することはできないだろう」と語りました。さらに、イランがイラクのクルド自治区を支援しているとする一部の報道について、「イランは、テロやあらゆる脅威に対抗する枠組みで、イラク政府や同国のクルド自治区を支援する」としました。ザリーフ大臣はまた、「イランは、イラクに対し軍備面での支援を行い、軍事面でのアドバイスをしているが、直接、軍事駐留をおこなっていない。なぜなら、この措置は、非建設的で危険を伴うからだ」と強調すると共に、「いかなる国への軍事的な駐留も、その国の国民の怒りや反対を引き起こし、新たなテロを勃発させる可能性がある」と述べました>(9月23日「イランラジオ」日本語版ウエブサイト)
ザーリフ外相は、米国の国名をあげることを注意深く避けているが、「地域外の圧力」という表現で米国を批判している。裏返して言うと、アラビア半島に所在するわけではないが、イランは地域内の国家なので、イラクやシリアに展開するISの掃討作戦に貢献することができるという意味だ。
イランは、軍隊をイラクやシリアに派遣すると、民族的(イラク、シリアはアラブ人、イランはペルシア人)反発を買うと懸念している。さらにシーア派(12イマーム派)のイランが、スンニー派のISを攻撃することに対して、イラクとシリアのスンニー派が反発する可能性がある。それだから、イラク政府というクッションを置いて、IS掃討作戦を展開しているという手の内を明かしている。
ISの掃討をめぐって、イランはイラクを通じてアラビア半島における影響力を拡大するとともに、米国の圧力を緩和することに成功しつつある。このような状況を最大限に利用して、イランは核開発を進めることを意図している。イランの核開発を阻止しつつ、IS掃討ではイランと協調していくという綱渡り外交を米国は余儀なくされている。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)