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【まぜこぜエクスプレス】Vol.26 誰もがきょうだい 平和を愛するイスラム教徒

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.26 誰もがきょうだい 平和を愛するイスラム教徒

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日本最大級のモスクである「東京ジャーミイ」の荘厳な堂内。案内してくれた下山茂さん(左)と、一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる=2014年9月5日(取材協力:東京ジャーミイ・トルコ文化センター、山下元気さん撮影)  最近の報道で「イスラム」という言葉はよく耳にする。では、いったい「イスラム教」とはどんな宗教で、「ムスリム(イスラム教徒)」とは、どんな人たちなのか、きちんと知っている日本人はどれくらいいるだろうか。そこで以前から「美しい建築物だなぁ」と気になっていた、東京都渋谷区の代々木上原駅にほど近いモスク(イスラム教の礼拝堂)「東京ジャーミイ」を訪れ、自身もムスリムで広報を担当する下山茂さんに話を聞いた。

 「知識得る機会少ない」

 全国におよそ80カ所あるというモスクの中でも最大規模を誇る東京ジャーミイは、観光客も多く訪れる。誰でも見学できるよう開放されている。とはいえ、女性は肌を見せないよう長袖にロングスカートかパンツ、髪の毛も見えないよう「ヒジャブ」と呼ばれるスカーフを頭に巻く。オスマントルコ様式の荘厳な堂内に入ると、ちょっとだけ緊張する。だが、光が差し込むステンドグラスや、アラベスク(植物がモチーフの紋様)、ブルーの装飾タイルに描かれたアラビア文字の幻想的な美しさにやがて心も落ち着いてくる。

 モスクを案内してくれた下山さんは「イスラム文化の美しさを知ってほしい」と語る。もちろんイスラムの魅力は、そのエキゾチックな文化だけではない。

 下山さんは大学生の時、アフリカのナイル川をゴムボートで旅をし、行く先々の村で心に残るもてなしを受けた。まるで親戚のように。彼らのホスピタリティーがイスラム教の精神によるものだと知ったことが、ムスリムになるきっかけだったそうだ。以降、下山さんは日本人ムスリムとして、その魅力を発信し続けてきた。

 「世界は何もアメリカとヨーロッパだけで構成されているわけではない。けれども、ずっと西欧をお手本にしてきた日本では手に入る情報が偏っている。イスラム教についての知識を得る機会が少ない」。下山さんの言葉も目力も熱い。こちらの胸も熱くなってくる。

 皮膚の色が違っても

 では、いったいイスラム教とはどういう宗教なんだろう? 下山さんは「根底にあるのは平等。皮膚の色(人種)が違っても、人間はきょうだい(平等)という教え」と言う。

 イスラム教の「平等」には長い歴史があり、奴隷解放は7世紀に遡(さかのぼ)る。イスラム教が生まれて間もなく、預言者たちはビラールという一人の黒人奴隷を解放する。そして彼を礼拝の同じ列に加えたのだという。「アメリカには19世紀まで黒人奴隷がいて、彼らには自由も民主主義もなかった。7世紀当時の社会的常識を考えると、奴隷だった黒人を同じ礼拝の列に加えるなんて、あり得ないことでした」と、下山さん。

 礼拝では誰しも横一列に並び、その前を横切ってはいけない。アッラー(神)と自分の間には何も存在しない、横切るのはその関係を断つことになるとのこと。「トルコから首相がきても、その列のどこかに並ぶだけです」と言う。

 ムスリムの多くは平等の精神を重んじ平和を愛する人たちだ。そして、実は、世界中でムスリムは増え続けており、「今や4人に1人がムスリムの時代」。イスラム教が多くの人に支持されるのには理由があるのだ。

 「20世紀の半ばアメリカの黒人たちはひどい差別を受けていました。彼らの中でキリスト教の“愛”に救いを求めたのがキング牧師。イスラム教の“平等”に救いを求めたのが、後の世界ヘビー級チャンピオン、ムハンマド・アリです」。アリも来日時には、東京ジャーミイに礼拝にきたのだという。

 イスラムの普遍性である「平等」。肌の色、民族、言語、血筋、階層などで優劣をつけない。神の前では、どんな人も同格、同等、同じ命だという。イスラム教とは、生き方そのものだと感じた。(女優、一般社団法人「Get in touch」理事長 東ちづる/撮影:フォトグラファー 山下元気/SANKEI EXPRESS

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