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国境超えた友情の実話を熱演 ユ・ジテ、伊勢谷友介 映画「ザ・テノール 真実の物語」
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作品を通して大親友となった主演のユ・ジテ(劉智泰)さん(上)と伊勢谷友介(いせや・ゆうすけ)さん=2014年8月14日、東京都港区(川口良介撮影) 一度は甲状腺がんで声を失うも奇跡のカムバックを果たした韓国の天才オペラ歌手と、彼を支え続けた日本の音楽プロデューサーとの友情を描く「ザ・テノール 真実の物語」(キム・サンマン監督兼脚本)は、実話をベースにした日韓合作映画だ。ユ・ジテ(38)がオペラ歌手に、伊勢谷友介(いせや・ゆうすけ、38)が音楽プロデューサーにそれぞれ扮(ふん)し、生きがいとは何かを存分に教えてくれる。
映画監督としての顔も持つ2人は、スクリーンで見た作品のでき栄えにほくそ笑んでいる様子。ユは「『完璧なオペラ歌手になる』という思いで撮影に臨みました。ベストに近い演技ができたことがうれしいです」と胸を張り、伊勢谷は「作品は冒頭から重厚感たっぷりに、格式を重んじながら、オペラの世界の匂いを感じさせてくれます。まず、そんなすてきな演出をしてくれる監督の映画に出演できてよかったですね」と満足そうだ。
ヨーロッパを“主戦場”としてきた韓国人のオペラ歌手、ベー・チェチョル(ユ)は「アジア史上最高のテノール」と各地で絶賛され、まさにキャリアの絶頂にあった。そんなある日、突然、声が出にくくなる。医師からは「甲状腺がん」を診断され、がん細胞は声帯を冒していた。歌をとるか、命をとるか-。究極の選択を迫られたチェチョルは手術を受け、声帯の神経を切断した結果、かつての歌声を失ってしまう。これまでチェチョルを褒めそやしてきた関係者や仕事仲間は手のひらを返したようなひどい態度を取り、次々と去っていった。そんなチェチョルのもとへ現れたのが日本人プロデューサー、沢田幸司(伊勢谷)。彼の声に魅了され、ファンの一人でもあった沢田は、部下(北乃きい)と甲状軟骨形成手術の権威を探し出し、半ば強引にチェチョルに手術を受けさせるのだが…。
「僕は終わった」「歌わない人生なんて本当に想像できるか?」-。引退をめぐって、よく息が合ったやり取りを熱量たっぷりに見せてくれるユと伊勢谷だが、演技をめぐってはどんな下準備をしたのだろう。
「撮影前に『自分たちは何のために生きているんだろう』-という部分をお互いにきちんと話し合えた気がするんですよ。その結果、この人(ユ)を信頼してもいいんだと思えるようになりました」と伊勢谷。本作の登場人物に負けないくらい強固な信頼関係を構築できたことが演技にいい影響を与えたことを強調した。これに対し、ユは「僕たちは同い年なので共感できることも多く、『社会貢献をいかにすべきか』と関心も似通っているんですよ」と納得の表情で応じると、伊勢谷が「唯一の違いは結婚しているか、していないかの違いですかね。そうだ、パパか否かも2人の相違点ですね」とユーモアたっぷりに口を挟んだ。
伊勢谷は出演の打診に対し、即座に応じた。政治レベルではすっかり硬直化してしまった日韓関係を念頭に、俳優活動といった個人レベルで、韓国人と信頼関係を築き、きちんとつながっていけば、やがては国家レベルでも、ひょっとしたら諸々の摩擦が軽減する兆しが見えてくるかもしれない…。伊勢谷はこう直感した。「両国の友好に向けて俳優として関われることは大変光栄なこと。いかにそれが難しいかということはまったく考えず、これは一生懸命に打ち込んでいい作品だと考えて撮影に臨みました」。
一方のユは「だからこそ観客に好かれる映画になることを望んでいました。作品に込められた平和、愛、調和といったメッセージについても考えてもらえればうれしいです」と言葉を継いだ。10月11日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:川口良介/SANKEI EXPRESS)
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