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政治
【拉致再調査】北委員長との会談調整 政府、月内にも訪朝正式決定
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日朝外務省局長級協議に臨む北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)・朝日国交正常化交渉担当大使(左から2人目)と外務省の伊原純一アジア大洋州局長(右端)。北朝鮮側はこの会合で、日本側の平壌訪問を提案した=2014年9月29日、中国・遼寧省瀋陽市(共同) 日本政府が、北朝鮮の特別調査委員会による拉致被害者らの再調査の実態を把握するため平壌への派遣を検討している調査団と、調査委トップの徐大河(ソ・テハ)委員長との会談を調整していることが14日、分かった。
政府は拉致被害者家族から意見を聞いた上で、月内にも外務省、拉致問題対策本部、警察庁などの担当職員で編成する調査団派遣を正式決定したい考えだ。
徐氏は国防委員会の幹部で、再調査を主導する国家安全保衛部の副部長を務めている。日本側は外務省の伊原純一アジア大洋州局長(58)を調査団の責任者として派遣し、調査の現状を把握できる立場にある徐氏に直接説明を求め、早期の報告を促す方針だ。
日本側の平壌訪問は、9月29日に中国・瀋陽で行われた日朝外務省局長級協議で、北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)・朝日国交正常化交渉担当大使(59)が伊原氏に提案した。7月3日に日朝両政府が発表した合意文書には調査団の受け入れを明記しており、派遣は合意に基づいて行われる。
政府・与党内には調査団の派遣に反対する意見もある。ただ、外務省幹部によると、これまでの水面下の交渉で「徐氏との会談が実現する見通しが立ちつつある」といい、政府は徐氏から事情聴取できれば拉致被害者の家族らから疑問視されている再調査の実効性を確認できるとみている。
その一方で、北朝鮮側が十分な説明を行わず、さしたる成果が得られない可能性も否定できない。政府は北朝鮮側の対応を慎重に見極めた上で最終決定する。
安倍晋三首相(60)は14日、官邸で開かれた政府与党連絡会議で拉致被害者らの再調査に関し「対話と圧力の姿勢で臨むが、解決するには対話しなくてはいけない」と述べ、調査団派遣に重ねて意欲を示した。
≪被害者5人帰国12年 「家族は安倍首相を信頼」≫
北朝鮮による拉致被害者5人が帰国してから15日で12年を迎える。残る被害者の帰国が果たせないなか、北朝鮮は日本に対し、再調査の進捗(しんちょく)確認のための訪朝を要請。16日には自民党や超党派の国会議員で組織する「拉致議連」が相次いで対応を協議する。被害者家族や支援組織「救う会」も緊急集会を開き、家族の声を伝える。
「あの国で死にたくなかった」。2002年10月に帰国した地村富貴恵さん(59)は帰国後、兄の浜本七郎さん(62)に北朝鮮での暮らしの過酷さをこう語ったという。浜本さんは「未帰国の被害者は心の底から助けてくれと言っている。絶対に諦めないし、諦められるはずがない」と話す。
だが、富貴恵さんと夫の保志さん(59)、蓮池薫さん(57)、祐木子さん(58)夫妻、曽我ひとみさん(55)の5人が帰国して以降進展はなく、北朝鮮は政府認定の拉致被害者について「8人死亡、4人未入国」という主張を変えていない。
今月5日に50歳になった横田めぐみさん=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(78)は11日の講演で「30歳までには、40歳までには(救出を)といいながら活動を続けてきた」と帰国を果たせない悔しさをにじませた。7月には北朝鮮による拉致被害者らの再調査が始まった。家族は政府から説明を聞くため何度も足を運んだが、期待するような答えは得られていない。
「報告があるなら行くけれど、説明だけなら…」。市川修一さん(59)=拉致当時(23)=の兄、健一さん(69)はそう考え、今月1日の説明会への参加を見合わせた。この日の説明会では、北朝鮮側の訪朝要請に家族から慎重な声が相次いだ。
一方、松木薫さん(61)=拉致当時(26)=の姉、斉藤文代さん(69)は「今回を逃せば、また何年も待たなければいけない」と懸念する。今年1月に母のスナヨさんが亡くなり、9月には自身に脳動脈瘤(りゅう)が見つかった。「何年か後に解決しても家族が誰もいなければ意味がない」。斉藤さんは、事態の進展には訪朝もやむを得ないと感じている。
10年ぶりに始まった再調査を解決に結びつけたいとの思いは、どの家族にも共通している。田口八重子さん(59)=拉致当時(22)=の兄で家族会代表の飯塚繁雄さん(76)は「家族は安倍総理を信頼している。訪朝は総理の判断だ」と指摘。そのうえで「北朝鮮のペースに巻き込まれているように見える。訪朝するのであれば北朝鮮が拉致問題を最優先に扱うよう、戦略を練って臨んでほしい」と話した。(SANKEI EXPRESS)