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拉致再調査 北「まだ初期段階」 報告先送り 不誠実な「遅延戦術」 日本は慌てず内容重視

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拉致再調査 北「まだ初期段階」 報告先送り 不誠実な「遅延戦術」 日本は慌てず内容重視

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政府の説明を聞くの飯塚繁雄代表(右)、横田早紀江さん(右から3人目)ら拉致被害者家族会のメンバー=2014年9月19日午後、東京都千代田区の内閣府(三尾郁恵撮影)  菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は19日の記者会見で、北朝鮮側が拉致被害者らの再調査を行う特別調査委員会の最初の報告に関し、「現在はまだ初期段階だ。現時点でこの段階を超える説明を行うことはできない」と伝えてきたことを明らかにした。当初は報告時期を「夏の終わりから秋の初め」と設定していたが、遅れる見通しとなった。菅氏は「時期は現時点では未定だ」と述べた。

 安倍晋三首相(59)は19日、都内で講演し「報告が手間取っていることは事実だ」と認めた上で、「形ばかりの報告には意味がない。北朝鮮は誠意を持って調査し、全てを正直に回答すべきだ」と強く牽制(けんせい)した。

 菅氏によると、北朝鮮側が18日、日本政府の報告時期の照会に対し、北京の大使館ルートを通じて通告してきた。北朝鮮側は「調査を誠実に進めている。全体で1年程度を目標としている」と説明したという。

 菅氏は「拉致被害者をはじめ日本人に関する包括的、全面的な調査を迅速に行い、結果を速やかに通報すべきだと考えており、このような問題意識は北朝鮮側にしっかり伝えている」と述べ、早期の調査状況の説明を求めていくことを表明。「拉致された方について北朝鮮は全て掌握していると思う」とも語った。一方、外務省の伊原純一アジア大洋州局長(58)は19日、拉致被害者家族会の飯塚繁雄代表(76)らと内閣府で会談し、安否再調査の現状を説明した。同席した山谷(やまたに)えり子拉致問題担当相(63)は「誠実な回答を出すよう(北朝鮮に)強く求めていくことが、一日も早い全面解決につながる」と述べた。

 飯塚代表は説明会終了後、報道陣に「北朝鮮は全く不誠実だ。政府は小さなことで慌てふためくことなく、しっかりした方針で焦らずやってもらいたい」と強調。横田めぐみさん=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(78)は北朝鮮からの初回報告が遅れていることについて「がっかりしている」と語った。

 ≪不誠実な「遅延戦術」 日本は慌てず内容重視≫

 拉致被害者らの再調査をめぐり、北朝鮮が1回目の報告を先送りするという「遅延戦術」に出てきた。北朝鮮の不誠実さは明らかだが、政府としては、報告の遅れはあえて厳しくは追及せず、内容の伴った再調査結果を出すよう粘り強く求めていく方針だ。

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官は19日の記者会見で「夏の終わりから秋の初め」とした北朝鮮側からの報告時期について「双方認識し、一致していた」と北朝鮮の約束違反を指摘。ただ報告の遅れを直接批判することには終始慎重な口ぶりで、外務省幹部も「『なぜ結果が出せないのか、誠意が感じられない』と憤るのは賢明な判断ではない。調査を前に進めることが大事だ」と強調した。

 報告の遅れで北朝鮮を責め過ぎれば、再調査自体が中止になる可能性を恐れているわけだ。

 政府は、北朝鮮側から報告を先送りしてきた理由を聞いていないため、北京の大使館ルートで引き続き連絡を取り、真意を確認する。再調査の途中経過を把握するため、日朝の外務省局長級協議の開催を働きかけることも視野に入れる。

 報告が遅れた背景について、別の外務省幹部は「期待感が高まり過ぎると北朝鮮は引いてしまう。1年間かけてやろうとしているのに、1回目からそんなに結果は出せないだろう」と語り、北朝鮮が日本の世論の高まりに“二の足”を踏んでいるとの見方を示した。日朝関係筋によると、日本が再調査を最優先で求めている拉致被害者12人について、北朝鮮側が回答を渋っているのだという。

 一方、拉致問題に取り組む支援組織の関係者は、再調査を通じて見返りを求めている北朝鮮が、駆け引きを仕掛けているという見方を強めている。

 「水面下で北朝鮮が調査結果の一部報告の見返りに、日本の独自制裁の追加解除を求め、安倍政権がそれを拒否しているのではないかとみられる」。拉致被害者の支援組織「救う会」の西岡力(つとむ)会長はそう話す。

 拉致の可能性を排除できない行方不明者を調べている「特定失踪者問題調査会」の荒木和博代表も「(報告時期の)時間をずらすことで、日本をあせらせて、値段をつり上げようとしているのでは」と、時間稼ぎをすることで、さらなる見返りを引き出そうとしているとみる。

 再調査に北朝鮮が応じた背景には、外貨不足があるとされ、北朝鮮は今後も日本に見返りを求め続ける可能性も考えられる。西岡会長は「途中で何らかの要求に応じれば、すべての拉致被害者救出に失敗する恐れがある」と説明。北朝鮮に対して「日本が譲歩すると思ったら大間違いだというメッセージを伝え続けるべきだ」と語る。

 「今のやり方を変えないと事態は動かない」と強調する荒木代表は北朝鮮を動かすためには、「恐怖感」が必要とする。その上で「放っておいたら、『日本がどう動くか分からないぞ』と思わせないといけない」と指摘した。(SANKEI EXPRESS

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