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【内閣改造】新閣僚、緊張の引き継ぎ 貢献度、距離感で自民派閥に明暗
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茂木(もてぎ)敏充前経済産業相(右)を大臣室に招き入れ、事務引継を行う小渕(おぶち)優子経産相(左)=2014年9月4日午後、経産省(宮川浩和撮影) 第2次安倍改造内閣が4日、本格始動した。安倍晋三首相(59)は官邸で記者団に「今日から新たな気持ちで経済再生、地方創生に全力を挙げていく」と改めて表明。新閣僚らは前任者から事務の引き継ぎを受けるなど公務をスタートした。
小渕(おぶち)優子経済産業相(40)は4日午前9時すぎに経済産業省に登庁した。記者団に「おはようございます」とだけ述べ、足早に執務室に向かった。笑顔も見せたが、緊張した表情だった。
原発再稼働への対応などエネルギー政策を担う重責から、3日の記者会見では「要職をいただき光栄ではあるが、身の引き締まる思いだ」と語っていた。
4日午後に前任の経産相だった茂木(もてぎ)敏充自民党選対委員長(58)から事務の引き継ぎを受けた。茂木氏が「最高の人に引き継ぎができたと思う」と激励し、小渕経産相は「しっかり頑張りたい」と応じた。
山谷(やまたに)えり子拉致問題担当相(63)は、内閣府で引き継ぎを行った。前任の古屋圭司氏(61)から「これから胸突き八丁の協議が始まろうとしている。全ての拉致被害者を取り戻すため全力を尽くして」とエールを送られ、「何としても解決に向け結果を出したい」と応じた。
消費者担当相を兼務する有村治子女性活躍担当相(43)は、消費者庁で森雅子氏(50)から「『子育てママ』の代表として夢と希望を与えてほしい」と激励され、「声なき声に応える」と強調。松島みどり法相(58)は、法務省で前任の谷垣禎一(さだかず)自民党幹事長(69)から書類を受け取り、「しっかりやります」と緊張した表情をみせた。
政府は4日の臨時閣議で、副大臣25人と政務官27人の人事を決定。東日本大震災からの復興を担当する小泉進次郎内閣府兼復興政務官(33)を留任させ、防衛政務官に公明党の石川博崇(ひろたか)参院議員(40)を充てた。女性の積極登用の方針を踏まえ、女性の副大臣3人、政務官4人を起用したほか、衆院当選1回の議員3人を抜擢(ばってき)した。
≪貢献度、距離感で自民派閥に明暗≫
内閣改造から一夜明けた4日、自民党各派は入閣を待望していた議員の“収支決算”に歓喜や悲嘆する光景がみられた。安倍晋三首相は、派閥トップとの距離感も考慮して入閣枠を調整したとみられ、今回の人事は、各派会長の求心力にも大きな影響を与えそうだ。
「私の初入閣を報道するテレビ画面に『大島派』のマークが出たのが、本当にありがたかった…」
行政改革担当相に抜擢された有村治子氏は4日の大島派(番町政策研究所)会合で、大島派会長の大島理森(ただもり)前副総裁(67)を前に言葉を詰まらせた。
大島派では防衛相兼安全保障法制担当相として江渡聡徳(えと・あきのり)氏(58)も初入閣。前会長の高村(こうむら)正彦氏(72)が党副総裁に再任されたことも踏まえれば、12人の小派閥で3つの重要ポストを獲得する大躍進となった。
大島氏自身も、国会では花形ポストの衆院予算委員長に内定。首相周辺は「大島氏は、集団的自衛権をめぐる与党協議で『裏の交渉役』として汗をかき、首相が高く評価した」と重用の理由を打ち明ける。
第3派閥の岸田派(宏池会)は会長の岸田文雄外相(57)が留任し、事務総長の望月義夫氏(67)が環境相として初入閣。望月氏は4日の岸田派会合で「『宏池会から』というのを決して忘れない」と、岸田氏の後押しに感謝した。ただ、林芳正前農林水産相(53)や小野寺五典(いつのり)前防衛相(54)は閣内から去っており、岸田氏にとっては「痛し痒(かゆ)し」といえそうだ。
第2派閥の額賀(ぬかが)派(平成研究会)は、額賀福志郎元財務相(70)が推薦した竹下亘(わたる)氏(67)が復興相、小渕(おぶち)優子氏が経済産業相に入閣。麻生派(為公会)も麻生太郎副総理兼財務相(73)の強い推しで、山口俊一氏(64)が科学技術担当相に登用された。二階派(志帥会)も、西川公也氏(71)が念願だった農水相ポストを射止めた。
大島派などとは対照的に、お通夜のような雰囲気に包まれたのが、入閣ゼロだった石原派(近未来政治研究会)だ。会長の石原伸晃(のぶてる)前環境相(57)は4日の石原派会合で、改造人事について触れることはなかった。石原氏は周囲に「首相はあまり話をきいてくれない」と愚痴をこぼしているという。
不穏な空気に包まれているのが、谷垣禎一(さだかず)幹事長率いるグループ(有隣会)だ。谷垣グループでは、遠藤利明元文部科学副大臣(64)の入閣を希望したが、閣内での登用はゼロ。グループ幹部は「谷垣氏は三顧の礼で幹事長を頼まれたのだから、遠藤氏の処遇だけでもお願いできなかったのか」と不信感を募らせている。
最大派閥の町村派(清和政策研究会)は、会長の町村信孝元官房長官(69)が宮路和明元厚生労働副大臣(73)らの入閣を求めたが、首相は認めなかった。宮路氏は派閥幹部の前で涙を流したという。2012年の党総裁選でぎくしゃくした首相と町村氏の関係はいまだに暗い影を落としているようだ。
石破(いしば)茂地方創生相(57)に近い議員による「無派閥連絡会」も閣内での登用はなし。鳩山邦夫元総務相(65)が主催する「きさらぎ会」も、河井克行元法務副大臣(51)らの起用は見送られた。(SANKEI EXPRESS)