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日朝首脳会談12年 拉致家族「こんな長い間、何を」

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日朝首脳会談12年 拉致家族「こんな長い間、何を」

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会談を前に北朝鮮の金正日総書記(右)と握手する小泉純一郎首相(当時)=2002年9月17日、北朝鮮・首都平壌市の百花園迎賓館(代表撮影)  北朝鮮が拉致を認めた日朝首脳会談から17日で12年。拉致被害者らの再調査が7月に始まったが、報告時期は不透明のままだ。

 「北朝鮮はおかしい国なので難しいのは分かるが、こんな長い間、何をやっているんだろうと思う」。日朝首脳会談で「死亡」とされ、今も帰国できていない拉致被害者、横田めぐみさん=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(78)は語る。

 12年前の会談では、金正日(キム・ジョンイル)総書記が拉致を認めた上で小泉純一郎首相(当時)に謝罪。現在政府が認定している拉致被害者17人のうち、蓮池薫さん(56)ら5人が帰国を果たした。一方で、北朝鮮はめぐみさんら8人を「死亡」、4人を「未入国」としている。

 しかし、北朝鮮が出してきた書類には改竄(かいざん)や捏造(ねつぞう)の疑いがあり、めぐみさんのものとして出してきた「遺骨」も日本側のDNA型鑑定で別人のものと判明。日本政府は被害者の即時帰国を求めている。

 長く従来の主張を変えなかった北朝鮮は今年5月に、拉致被害者らの再調査をすることで日本と合意。7月に調査が始まり、日本政府は北朝鮮に対する独自制裁の一部を解除した。今月にも最初の調査結果報告がある見込みだが、具体的な日程は決まっていない。

 進展のなかった間、被害者家族が次々に亡くなった。今年だけでも、市川修一さん=拉致当時(23)=の父、平さん=享年(99)=ら3人が死去。北朝鮮に残る被害者も年齢を重ねており、家族は再調査での進展を強く望んでいる。

 再調査に関し、田口八重子さん=拉致当時(22)=の兄で家族会代表の飯塚繁雄さん(76)は「もしいいかげんな内容であれば、解除した制裁を再びかけるなど、対応を考えてほしい」と話し、早紀江さんは「期待しているけれど、絶対に(今回だけで)最後にしてはいけないと思っている」と全員帰国までの取り組みを求めている。

 ≪ずれ込む北の報告 月内危うく≫

 拉致被害者の安否再調査を行う北朝鮮の特別調査委員会の報告がずれ込んでいる。日本政府は当初、1回目の報告に関し「9月第2週」を想定し、日朝の外務省局長級協議開催を目指し水面下での調整を進めてきたが、月内すら危うい状況になりつつある。再調査の内容を精査したい日本と、経済制裁の解除を要求する北朝鮮とのせめぎ合いが背景にあるようだ。

 加藤勝信官房副長官(58)は17日の記者会見で、現在の交渉状況に関する拉致被害者家族向けの説明会を19日に開催すると発表した。その上で、「全ての拉致被害者の安全確保と即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引き渡しに向けて全力を尽くす」と述べた。

 北朝鮮は7月4日、調査委を設置し、調査を開始した。これを受け、菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は1回目の報告について「夏の終わりから秋の初め」で日朝が合意しているとの見解を示した。

 再調査の最大の焦点は、12人の拉致被害者の安否だ。北朝鮮はかつて12人について「8人死亡、4人未入国」と主張した。政府は北朝鮮がこれまでの主張を覆すかどうかを早急に見極めたい構えだが、北朝鮮は経済制裁の解除を強く求めているもようだ。

 外務省幹部は「北朝鮮は日本国民の疑念を払拭できる誠実な調査を行わなければならない」と強調する。ただ「日本国内の期待値が高すぎて、北朝鮮は結果が出しづらくなっている」(別の外務省幹部)との見方も出ている。

 ≪脱北者が再調査へ思い「帰国に全力を」≫

 拉致の可能性が排除できない行方不明者を調べる特定失踪者問題調査会は17日、京都市内から失踪した特定失踪者らの現地調査を行った。帰還事業で北朝鮮に渡り、その後日本に帰国した脱北者への聞き取り調査も実施。脱北者は拉致被害者らの再調査について「一日も早く帰国できるよう政府は全力を挙げてほしい」と語った。

 2004年に帰国した榊原洋子さん(64)は「北朝鮮に渡ったことは、だまされたとはいえ悔しかった。拉致被害者はどれだけ悔しいだろう」と被害者の心情を推察。60代の女性も「拉致被害者は祖国に帰る日を望んで生きている」と早期帰国を求めた。榊原さんは、北朝鮮に残る日本人配偶者らの中には再調査の先行きが不透明で帰国の意思を示せない人もいると指摘。「家族みんなを日本に戻し、心配なく暮らせるようにしてほしい」と話した。(SANKEI EXPRESS

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