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ギリシャの至宝奪還、クルーニー夫人が指南 対英調停で弁護団「時は来た」

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ギリシャの至宝奪還、クルーニー夫人が指南 対英調停で弁護団「時は来た」

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英国・首都ロンドン  紀元前5世紀に建てられた世界遺産「パルテノン神殿」から英国に持ち出され、大英博物館に展示されている彫刻やレリーフなど「エルギン・マーブル(大理石)」。この歴史的な文化遺産を返還するよう、ギリシャ政府は数十年にわたって英側に働きかけ、今月初めには世界遺産を所管する国連教育科学文化機関(ユネスコ)も調停に乗り出す事態になっている。英側がかたくなに拒否する中、ギリシャの助っ人として浮上したのが、9月にイタリア・ベネチアで米俳優、ジョージ・クルーニーさん(53)と結婚式を挙げたばかりの英人権派弁護士、アマル・アラムディン・クルーニーさん(36)らの弁護団だ。15日にギリシャ政府首脳と会談したアマルさんは「エルギン・マーブルは返還される時が来た」と言い切り、返還実現に強い意欲をみせた。

 米大使館も援護射撃

 「彫刻(返還)へ 弁護士に熱狂」。10月15日付のギリシャのタブロイド紙エスプレッソは1面でアマルさんのアテネ訪問をこんな見出しで大きく伝え、別の左派系日刊紙は電子版で「彼女はジョージ・クルーニーを手に入れた。われわれにはエルギン・マーブルを取り戻してくれるだろうか?」と読者に問いかけた。さらにアテネの米国大使館も公式ツイッターで「ギリシャはユネスコの調停の行方を待っている。アマル、ありがとう!」とギリシャ側を援護した。

 AP通信や米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、英BBC放送(いずれも電子版)などによると、アマルさんは今月の13~16日の日程でアテネを訪問。アマルさんら弁護団は15日、アントニス・サマラス首相(63)やコスタス・タソーラス文化相らと返還実現の方策を長時間協議した。

 タソーラス氏は会見で「エルギン・マーブルの返還はわが国が絶え間なく、そして長期間にわたり要求している最重要課題である」と述べ、「世界的な文化遺産の返還はわが国の責務であり、実現に向けあらゆる手を尽くす」と訴えた。

 アマルさんも会見で「ギリシャ政府にはエルギン・マーブルを所有する正当な理由がある。大英博物館がそれを認め、ギリシャに返還する時が来た。不公平な状態があまりにも長く続いている」と指摘。別の弁護士は「傲慢な文化的破壊行為」と英側を強く非難した。

 ユネスコが調停勧告

 エルギン・マーブルは1800年、トルコ・イスタンブール駐在の英外交官が、当時、ギリシャを支配していたオスマン・トルコの特命全権大使となったのを機に、パルテノン神殿から英国に持ち出した。これをロンドンの大英博物館が1816年から展示しているわけだが、ギリシャ側の再三の返還要求に対し英側は文化財の公共性などを理由に拒否し続けてきた。しかし今月初め、ユネスコの政府間委員会は英側に対し、今後半年以内に調停に応じるよう、初めて正式な勧告を出したばかりだ。

 そんな最中、やり手弁護士で知られるアマルさんの手腕に期待がかかるのは当然だが、一方で、戦争などに絡む略奪美術品の返還問題は国際政治とも深く関わる問題だ。英オックスフォード大学の考古学の権威、ジョン・ボードマン氏は10月10日付英紙デーリー・テレグラフ(電子版)に「返還が認められれば、ぞっとするような前例になる。ルーブル美術館やベルリン美術館といった世界の主要な美術館のいずれかが台無しになるだろう」と警告した。(SANKEI EXPRESS

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