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TBS「ごめんね青春!」おわび 制作者のお粗末さ露呈

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TBS「ごめんね青春!」おわび 制作者のお粗末さ露呈

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東京・赤坂のTBS本社ビル=2010年12月22日、東京都港区(提供写真)  【メディアと社会】渡辺武達

 TBSが、10月26日に放送したドラマ「ごめんね青春!」の第3話で実在の学校名をせりふに使い、この学校の関係者に迷惑をかけたとして、番組公式サイト(www.tbs.co.jp/gomenne_tbs)におわびを掲載した。当然、ニュース報道だけでなくドラマにおいてもその内容には放送責任があり、そこに明白な誤りや名誉毀損(きそん)があれば、最近の朝日新聞による誤報問題と同様に、謝罪と真摯(しんし)な反省が必要である。

 ドラマは、高校教師が主人公の学園モノ。生徒に勉強を教えてほしいと頼まれた主人公の義姉が、自分の出身校として実在の校名を挙げて「それは無理」と断る場面があったというもの。この高校の校長から現在の学校についての“説明”を受け、おわびすべきだと判断したという。

 褒める内容であれば…

 今回のセリフは一見すると他愛のない、筆者も問題が発覚してから見てみたがサラッと見過ごしてしまうほどのものである。しかし、その背後には現在のテレビ局が抱える構造的な問題が隠れており、メディア関係者の抜本的な対処と意識改革が求められるもので検証しておきたい。

 番組ホームページにはとってつけたように「このドラマはフィクションです。登場する団体、名称、人物等は、実在のものと関係ありません」とあるから皮肉だ。実名ということでいえば、この第3話だけでも早稲田大学と東京大学という2つの実在大学名が出てくる。しかもそれらの大学には合格がむずかしい(と思われる)女子高校生の志望校として登場しており、「高学歴大学」の事例に使われている。

 つまり結果として、褒める内容であれば実在する学校名を出しても問題が起きないということだが、さらに言えば、出身大学でその人物を評価するという社会風潮をメディアが助長していることになり、大きな意味では「公共の福祉に資する」という放送法の目的条項に違反している可能性もある。

 現在の高校が事実上全入で、その半数以上が大学へ進学し、実際の大学生の少なからずが「真面目に勉強していない」から、大卒は「4年間滞在した証明」にすぎないという現実もある。その意味で、このドラマは大学進学を神聖化しており、犯罪的でさえある。

 理解されていない放送法

 ただ、問題の根絶には難しい面もある。ドラマもニュース報道も放映前にいくつもの局内チェック過程を経て茶の間に届く。今回の表現がチェックをすり抜け実際に放映されたことは、制作者に放送法が理解されていないということである。

 また誤りの訂正について、放送法の第9条は「(略)放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人から、放送のあった日から三箇月以内に請求があったときは、放送事業者は、遅滞なくその放送をした事項が真実でないかどうかを調査して、その真実でないことが判明したときは、判明した日から二日以内に、その放送をした放送設備と同等の放送設備により、相当の方法で、訂正又は取消しの放送をしなければならない」としている。

 しかし、今回の件では実名が出た高校への単なる名誉毀損であるととらえられ、ホームページで謝罪されただけ。こうした事例は他のメディアでもしばしばある。

 メディア業界でよく知られた事例では、1980年に、集英社発行のマンガ誌『少年ジャンプ』に掲載された「私立極道高校 39話」がある。そこには滋賀県に実在する5つの中学と卒業生4人が実名で登場する。学校関係者の抗議で、集英社は対象の中学に出向き、(1)当該マンガは連載を打ち切る(2)雑誌の回収は全国的規模で実施する(3)新聞紙上で訂正と謝罪を検討する-と回答し、その通り実行された。

 筆者は当時から滋賀県に在住しているから、関係中学の怒りが大きかったことをよく知っている。が、問題はなぜそれが起きたかである。後からわかったのは、作者のアシスタントが滋賀県の当該中学の出身で、それらの実名を出してしまったということである。

 今回の場合も、メディアの制作者が倫理面に疎く、抗議されるまで気づかないという愚かな現場実態が露呈したとしか言いようがない。(同志社大学社会学部教授 渡辺武達(わたなべ・たけさと)/SANKEI EXPRESS

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