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「エリザベート」の死に神に重なる 舞台「スワン」 一路真輝さんインタビュー
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「ドラと白鳥の関係は、エリザベートとトートのよう」と話す、女優の一路真輝(いちろ・まき)さん=2014年11月13日、東京都文京区(小野淳一撮影) 「大舞台のミュージカル女優」という印象が強い一路真輝(いちろ・まき、49)が、翻訳劇のストレートプレーに挑戦している。日本初演となる「スワン」で、仕事にも恋人との関係にも疲れた女性の家に飛び込んできた白鳥が、若い男性に姿を変えることで、人間関係に変化が生じていくファンタジー。閉塞(へいそく)感の中で自由を求める女性の思いが投影された白鳥は、宝塚歌劇団の時代から何度も演じてきた舞台「エリザベート」に登場する死に神「トート」に重なるという。
「スワン」は1993年にオフ・ブロードウェーで上演された米作家エリザベス・エグロフの戯曲。米ネブラスカ州郊外に住むドラ(一路)が、仕事や恋人ケビン(大澄賢也)との関係に行き詰まった生活にある日、白鳥(細貝圭)が飛び込んでくる。登場人物は3人だけの濃密な舞台で、男性に姿を変えた白鳥がもたらすドラの心境の変化を丁寧に描く。「アナと雪の女王」の主題歌「ありのままで」の訳詞を書いた高橋知伽江が翻訳、映画監督の深作欣二の長男である深作健太が演出している。
物語はコンテナハウスの中で進み、ドラも白鳥もおりの中に入れられているかのよう。閉塞感の中で孤独を感じ、自由を求めるドラはイプセン作「人形の家」の主人公ノラを思わせる。さらに、幻のような白鳥に救いを求める姿は舞台「エリザベート」における、皇妃エリザベートと死に神「トート」との関係にも重なる。
「『ノラ』が戯曲のベースにあるだろうと思います。また白鳥は、いまの生活から逃げ出したいドラの深層心理から出てきた幻想かもしれません。エリザベートを演じた経験から女性が持つ孤独感や、自由になりたいという気持ちを表現して、最後は救いが見つかるような形にしたい」
初めての翻訳劇は「自分のターニング・ポイントとなる舞台」と話す。「40代最後の年にこの作品に出合い、私は読んでとても面白いと思ったし、ある程度、経験を重ねた女性に響く物語だと思っています。これからは白馬の王子様ではなくて白鳥を待つ時代になるのかも(笑)」
長女(8)の出産と育児で4年間休業して4年前に復帰。休業で肩の力が抜けて、いろいろなことに挑戦できる心境になった。「(宝塚にいた)10代から芸の世界にまっしぐらで、こうあるべきという道を歩いてきたような気がします。それがパタッと崩れたんですね。いろんな役をやってほしいと思ってもらえる、ニュートラルな位置にいる女優でありたいと思います」
そんな舞台を長女は欠かさず見に来るという。「仕事との両立は全然できてなくて、寂しいと思うことはいっぱいあるようです。でも『ママが女優で良かった』と言ってくれて。いろんな意味が含まれているでしょうけれど、頑張るしかないかなと」。女優を志している様子の長女には「やりたいことはやらせてあげたいけれど、もっと違う世界も見てほしいと思っています」と、母親の素顔がのぞいた。(文:藤沢志穂子/撮影:小野淳一/SANKEI EXPRESS)
2014年12月23日まで東京・紀伊國屋ホール。サンライズプロモーション東京 (電)0570・00・3337