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夢の眼鏡 未来見通せず 誤算の連続、グーグル販売中止 撤退観測も

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夢の眼鏡 未来見通せず 誤算の連続、グーグル販売中止 撤退観測も

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「グーグルグラス」をかけるグーグルの共同創業者、セルゲイ・ブリン氏。かつてこの眼鏡で「世界を変える」と語っていたが…=2013年2月20日、米カリフォルニア州サンフランシスコ(AP)  米グーグルが、眼鏡型のウエアラブル端末「グーグルグラス」のテスト版の販売を19日で中止する。2012年に「夢の次世代端末」として華々しく発表し、米英で昨年、1500ドル(約17万円)で一般発売したばかり。ところが、盗撮やプライバシー侵害の懸念のほか、自動車運転時の使用の危険性、心身への悪影響といった問題が次々に露呈。対応アプリの開発も進まなかった。グーグルは新機種の開発を継続するとしているが、「事実上の撤退でお蔵入りになる」との見方も。“先駆者”の挫折は、IT各社が力を入れているウエアラブル端末全体の足を引っ張る懸念もある。

 開発中枢から切り離し

 「グーグルグラスはまだ幼年期。皆さんが最初の一歩を踏み出すことでわれわれに歩き方を教えてくれた」

 グーグルは15日、公式サイトで購入者への感謝をつづった。

 欧米メディアによると、販売中止となるのは「グラス・エクスプローラー・プログラム」と呼ばれるテスト版。次世代技術の研究開発部門である「グーグルX」から切り離し、別組織で開発を続けるとしている。ただ、普及版の投入は見送られることになり、後継機の発売時期も明らかにしなかった。

 グーグルは「卒業」と表現したが、人材や資金が大量投入される中枢部門のグーグルXから分離されたことで、IT業界アナリストや専門家からは、その先行きに悲観的な見方が広がっている。

 誤算の連続「市場がない」

 「現実世界とネットの仮想世界の融合」をうたい文句に登場したグーグルグラスは無線でネットにつながり、右目上のモニターに地図などが表示され、音声操作で通話やメール送信のほか、写真や動画の撮影などもできる。対応アプリの開発を促進するため、13年5月に技術者向けに発売。その1年後、一般消費者も購入できるようになった。

 ところが、誤算の連続に見舞われた。ロイター通信によると、普及のカギとなるゲームなどのアプリの開発に参入した16社のうちツイッターなど9社が販売台数の少なさなどを理由に昨年中に撤退。米リトルガイゲームのトム・フレンセル最高経営責任者(CEO)は「現時点では市場がない」と言い切り、普及は困難との見方を示した。

 使用者からも「テスト版に高額な費用がかかるのも問題だが、最大の失望は専用アプリがないことだ」(英国の大学のコンピューター学講師)などの不満の声が相次いでいる。

 プライバシー懸念も逆風

 さらに米英では盗撮やプライバシー侵害への懸念から着用を禁止する映画館やレストランなどが続出。米国では自動車の運転中に着用していた女性が交通違反で反則切符を切られ、その後取り消しになったが、安全性が問題視された。さらに昨年10月には、毎日長時間使い続けた米国の男性が「ネット依存症」と診断され、心身への悪影響もクローズアップされた。

 米調査会社フォレスター・リサーチが最近実施した調査でも、消費者の5割がプライバシーを侵害する機器だと認識していることが分かった。

 ウエアラブル端末の先駆的存在で、IT各社による開発競争にも火を付けた“夢の眼鏡”だが、マイナスイメージの浸透で消費者から見放され、その未来は見通せない状況だ。

 米ネットオークションのeBay(イーベイ)では現在、定価の半値で出品されている…。(SANKEI EXPRESS

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