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「外すとイライラ」ネット依存 グーグル眼鏡で米男性 初の症例報告

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの経済

「外すとイライラ」ネット依存 グーグル眼鏡で米男性 初の症例報告

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 米グーグルが限定発売した眼鏡型端末「グーグルグラス」を毎日長時間使い続け、身心に不調をきたし治療を受けた男性の症例に関する論文が公開され、波紋が広がっている。男性はグラスがないとイライラして興奮状態になるなどの禁断症状が表れ、「インターネット依存症(IAD)」と診断された。現実世界と仮想世界を融合する革新的な端末として注目されたが、男性は夢までも眼鏡のフレーム越しに見るようになったという。次世代IT機器として期待される「ウエアラブル端末」は肌身離さず身につけるだけに、依存症になりやすいという不安が浮き彫りになった格好だ。

 こめかみたたく

 IADと診断されたのは、米海軍の31歳の男性兵士。カリフォルニア州サンディエゴにある米海軍の薬物乱用治療施設(SARP)の医師団が14日に依存症専門の医学誌に研究論文を発表した。

 米メディアによると、この男性は昨年9月、アルコール依存症が再発したとしてSARPに入所。酒、たばこ、薬物のほか、パソコンや携帯電話などの電子機器を絶つ35日間のリハビリプログラムに入った。

 ところが、その治療中、論文の共同執筆者でSARPの研究部門のトップを務めるアンドリュー・ドーン博士は、男性がこめかみの辺りを右手の人さし指で軽くたたく動作を繰り返すことに気づいた。

 不思議に思い調べてみると、男性は入所前の2カ月間、試験発売されたグーグルグラスを就寝と入浴時を除き一日最長18時間も着用し続けていたことが分かった。こめかみをたたくのは、グラスを操作する動作だったのだ。

 夢も「窓」越し

 男性はグラスをかけたまま海軍の任務に従事し、「次第にグラスなしでは仕事に自信が持てないようになった」と告白した。入所後も、意思に反した動作のほか、グラスを使えないことに極度のいらだちを示すなど禁断症状が表れ、記憶障害も確認された。禁断症状は通常のアルコール依存症よりも激しかったという。

 男性はドーン博士に「眠った後もグラスの右目の上に付いている小さな灰色の窓越しに夢を見ていた」とも打ち明けた。プログラム終了後、禁断症状は改善したが、グラス越しの“悪夢”は断続的に続いているという。

 ドーン博士は「私の知る限り、グーグルグラスの問題使用によるネット依存症の初の症例だ」と指摘。「グーグルグラスは本質的に何も悪くない」としながらも、「現実逃避傾向の人や精神的に不安定な人にとっては問題のある機器だ」と述べ、使用上の注意を促した。

 専門の医療施設も

 IADとは、ネットやゲームに長時間没頭し仕事や学業、日常生活に支障が及ぶ状態を指す。米国や韓国、中国では社会問題として認識されている。米国には専門の医療施設があるほか、ネット使用を絶つ治療プログラムも広く行われている。

 持ち歩けるスマートフォンの普及で依存症はさらに深刻化しているとされ、日本でも全国学力テストでスマホの使用時間が長い児童・生徒ほど成績が低いとの結果に衝撃が走り、対策の必要性が指摘されている。

 スマホ以上にネットと常時つながっていられるウエアラブル端末は、依存症を招くさらに恐ろしい存在となりかねない。(SANKEI EXPRESS

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