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現代中国人のメンタリティー浮き彫り 映画「二重生活」 ロウ・イエ監督インタビュー
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映画「二重生活」のロウ・イエ監督=2015年1月25日、東京都渋谷区(高橋天地撮影) 中国当局による自作への“検閲”に猛反発し、学生たちの立場から天安門事件(1989年)を描く青春映画「天安門、恋人たち」(2008年)の製作を強行したことで、ロウ・イエ監督(49)は5年間に及ぶ映画の製作禁止処分を受けた。
当局がいくら脅してもすかしても、ロウ監督はまるでどこ吹く風。“喪”が明けるまでにも、南京でゲリラ撮影を敢行し、中国では存在自体がタブーとされる同性愛者の恋愛模様をスリリングに表現した「スプリング・フィーバー」(09年)を発表。国内での上映禁止処分をあざ笑うかのように、カンヌ国際映画祭では脚本賞を手にしてしまう。
製作禁止処分が解けた後、ロウ監督が初めて製作したのが新作の恋愛サスペンス「二重生活」だ。脚本も手がけたロウ監督は、不倫に走る男女ややる気のない刑事など、どこか倫理観に欠けた人物ばかりを作品に登場させていて、これがまた当局をヤキモキさせそうで、いかにも彼らしい。「僕は現代中国人のメンタリティーを浮き彫りにしたつもりです」。無表情のまま、ロウ監督はさらりと言ってのけた。
優しい夫、ヨンチャオ(チン・ハオ)とかわいい盛りの幼い娘に恵まれ、夫婦で共同経営する会社の業績も順調なルー・ジエ(ハオ・レイ)。ところが、ヨンチャオにはサン・チー(チー・シー)という愛人がいて、彼女との間に幼い息子をもうけていた。ヨンチャオはずるずると流されるままに2つの家庭を維持していたが、ある日、一夜を共にした女子大生、シャオミン(チャン・ファンユアン)が事故死したことが契機となり、ヨンチャオとルー・ジエの平穏な日々に綻(ほころ)びが生じる。
実は本作に対しても、当局は修正指導という名の「横やり」を入れてきた。「1つは性描写が激しいこと。もう1つは、ある登場人物がもう1人の登場人物に対し、スコップで13回殴りつける場面が好ましくないとのことでした。当局は『3回』に減らすよう要求しました」とロウ監督。注文がついたのは、公開までわずか40日しか残されていないというギリギリのタイミングだった。
ロウ監督は一計を案じ勝負に出た。中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で拒否の立場を表明し、17日間に及んだ当局との一連のやり取りをすべて公開した。「向こうも相当困ったようで、一番偉い人が交渉に出てきましたよ」。最終的に妥協案を引き出し、関連場面を3秒間だけカットすることで決着を付けた。ただ手打ちに納得したわけではなく、自分の名前をクレジットから外した。東京・渋谷アップリンクほかで公開中。(高橋天地(たかくに)、写真も/SANKEI EXPRESS)
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