SankeiBiz for mobile

【デンマーク連続テロ】容疑者はデンマーク出身の22歳 「自国育ちテロ」 欧州の若者過激化

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

【デンマーク連続テロ】容疑者はデンマーク出身の22歳 「自国育ちテロ」 欧州の若者過激化

更新

襲撃されたシナゴーグ(ユダヤ教会堂)前に花束を供える少女=2015年2月15日、デンマーク・首都コペンハーゲン(AP)  2人が犠牲となったデンマークの首都コペンハーゲンの連続銃撃テロで、警察当局は15日、射殺した容疑者がデンマーク生まれの22歳の男だと発表した。デンマーク情報機関は、イスラム過激派の影響を受け、1月のパリ連続テロをまねた「ホームグロウン(自国育ち)テロ」とみているもようだ。

 ロイター通信によると、警察は16日、容疑者を「助言や行動」で手助けしたとして、男2人を15日に拘束したと明らかにした。年齢や国籍は不明。地元メディアは、2人が容疑者に武器や隠れ場所を提供した疑いがあると伝えた。

 警察は、14日の銃撃で使われたとみられる自動小銃を押収、容疑者が2つの銃撃事件を単独で実行したとの見方を強めているが、この2人との関係や動機などの解明を急ぐ。

 容疑者は2013年にコペンハーゲンの列車内で19歳の男性を刺傷したとして逮捕され、有罪判決を受けたほか、犯罪組織とも関わりがあり当局が監視下に置いていた。氏名は非公表だが、地元メディアは約2週間前に出所したオマル・フセイン容疑者だと報じた。

 イラクやシリアなどに渡航したとの情報はなく、国際テロ組織アルカーイダやイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」との関係は不明。

 連続銃撃テロは14日午後と15日未明に発生。イスラム教の預言者ムハンマドを風刺した画家らが「表現の自由」を討議していたカフェと、シナゴーグ(ユダヤ教会堂)が相次いで銃撃され、2人が死亡した。警察によると、容疑者は2件の銃撃の後、移民が多いノアブロ地区に戻っていた。(ロンドン 内藤泰朗/SANKEI EXPRESS

 ≪「自国育ちテロ」 欧州の若者過激化≫

 デンマークの首都コペンハーゲンで起きた連続銃撃テロ事件は、外国人でなく自国民が起こす「ホームグロウン(自国育ち)」の若者による犯行の可能性が高い。パリの風刺週刊紙襲撃に始まる連続テロに酷似した事件が1カ月余りで繰り返された形だ。欧州ではイスラム過激主義に染まる若者が増えているとされ、同様のテロがさらに起きる危険が指摘されている。

 「イスラム国」から資金

 容疑者は、14日のカフェ銃撃の際、アラビア語で「神は偉大なり」と叫んだとの目撃情報がある。

 1月のパリでの風刺週刊紙銃撃では、イエメンを拠点とする国際テロ組織「アラビア半島のアルカーイダ(AQAP)」が、イスラム教の預言者ムハンマドの名誉が汚されたとして犯行声明を出しており、新たなテロを警告していた。

 今回の事件も、ムハンマドの風刺画とユダヤ人が標的となった点でパリの連続テロと酷似する。パリのテロ犯3人はいずれも、フランスで生まれた移民出身の若者たちで、ある時期にテロを正当化するイスラム過激思想の説教師と接触し、洗脳された。

 パリ東部のユダヤ系食料品店で人質を取り籠城したクリバリ容疑者は、週刊紙襲撃事件の容疑者、クアシ兄弟の弟と刑務所で服役中に知り合ったとされる。

 クアシ容疑者はAQAPから、クリバリ容疑者が過激派「イスラム国」からそれぞれ資金提供を受け、ベルギーの武器闇市場からテロで使った武器を入手していた。

 社会の底辺でもがく

 ロンドンを拠点にイスラム過激思想を喧伝(けんでん)する英国人説教師、チョードリー容疑者は産経新聞とのインタビューで「欧米の偽善や矛盾を明らかにするイスラム思想は国境を越えて世界に広まっており、もう誰も止めることはできない」と述べていた。

 イスラム圏を含む外国からの多くの移民を受け入れてきた欧州社会の底辺でもがき、過激思想に染まる若者たちは少なくない。こうした〝テロリスト予備軍〟への対処が重要だと専門家らは指摘する。

 過激派の再教育に取り組む民間団体、クイリアム財団(本部ロンドン)の専門家たちは「社会で疎外感を覚え、過激化した若者がテロリストになるのは難しくはない。若者を過激化させない仕組みを時間をかけても、欧州社会でつくっていかないと、テロは収まらない」と警告している。(ロンドン 内藤泰朗/SANKEI EXPRESS

ランキング