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「西側の価値観」認めず 中国、大学にも思想統制

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「西側の価値観」認めず 中国、大学にも思想統制

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北京大学内にある「スタンフォードセンター」で演説する米ロサンゼルス市のエリック・ガルセッティ市長。欧米の名門大学との連携を進める中国の大学からも、「西側の価値観」は排除されるのだろうか=2014年11月20日、中国・首都北京市(ロイター)  中国の袁貴仁教育相(64)が、国内の大学に「西側の価値観」を「排除」するよう指示したことが波紋を広げている。習近平政権が推し進める思想統制の一環だが、教育関係者らが疑問の声を上げ、論争を呼んだ。海外メディアは、中国指導部が思想引き締めに走る要因や負の影響を論じている。

 教育相が厳命

 「われわれの教室に西側の価値観を広める教科書を絶対に入れてはならない」

 中国国営新華社通信のニュースサイト、新華網の1月29日付記事によると、袁教育相はこの日、北京大や清華大など名門大学の責任者らを集めた会合で、教科書の使用管理の強化を求め、中国共産党の「指導を誹謗(ひぼう)し、社会主義に泥を塗る言論が大学にはびこるのを決して許してはならない」と強調した。

 「西側の価値観」とは何なのか。中国紙、光明日報(電子版、1月31日)が掲載した中国政府のシンクタンク、中国社会科学院の研究者の論考は「米国を代表とする西側国家が宣揚する立憲・民主や普遍的な価値、新自由主義」を例に挙げた。

 これらに先立つ1月19日、中国共産党中央と中国政府は、大学に対して「社会主義の核心的価値観教育」の徹底などを求める「意見」を発表しており、袁教育相の発言は、中国指導部の意向を大学の現場に下ろした形だ。

 だが、これは学問の自由の侵害に他ならない。大学関係者はもとより、それ以外からも批判が上がった。

 文化大革命時代を想起

 「教育相の発言は、毛沢東が発動し、混乱と暴力で、知識人の世代に傷跡を残した文化大革命時代の思想キャンペーンを想起させる」

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版、2月9日)は、中国の匿名の大学関係者の批判を紹介。西洋の思想が(体制維持にとって)潜在的な危険だとする考えに対し、「共産主義自体が西洋からの輸入品だ」と指摘する中国の知識人が特に不信感を抱いていると伝えた。

 シンガポール紙ストレーツ・タイムズ(電子版、2月12日)が掲載した米大学教授の寄稿は、「中国の数千万人の学生は備えるべき知識や技術を習得できず、ましてや経済面での世界的競争力を高めることはできない」「中国政府が締め付けをすぐにやめない限り、習氏が掲げる『中国の夢』は、衰退と後退を加速させる悪夢へと変わってしまうだろう」と警告している。

 意外なことに、中国共産党のメディアも異論を紹介した。党機関紙、人民日報のニュースサイト人民網は9日、文化大革命を念頭に、「極端に走って、知識分子に対して“左”が行ったような歴史の過ちを繰り返してはならない」とした天津の名門大学、南開大学の●(=龍の下に共)克学長(59)のコメントを掲載した。

 指導層の子弟は欧米留学

 だが、英BBC放送のウェブサイト(中国語版、2月10日)によれば、このコメントは新華網など他の主要ニュースサイトに一時転載された後、ほどなくして削除されたという。当局の指導があったのか、自主規制だったのかは不明だが、メディア規制の一端をうかがわせた。

 強まる思想統制の背景について、英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版、2月9日)は論評記事で、共産党の支配を揺るがす「カラー革命」の勃発を恐れてきた指導者層が、「ウクライナ危機」や香港の学生らが昨秋展開した「雨傘革命」といった反政府デモを目の当たりにして、懸念をさらに強めたと分析した。

 一方で論評は、国際通貨基金(IMF)が最近、購買力では中国が世界最大の経済大国だと発表したことに触れ、中国指導者の不安は「過剰で、被害妄想的でさえある」と指摘した。

 大学教育が今後どう変化するかは、中国の学生たちの大きな関心事となるだろうが、英紙ガーディアン(電子版、1月30日)の一言は皮肉めいている。

 「ハーバード大に留学していると伝えられる習近平国家主席の娘を含めて、中国政界のエリートらの子弟は、欧米の教育機関で学ぶことを好む」(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS

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