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サイバー銀行強盗1000億円荒稼ぎ ロシア、ウクライナ、中国のハッカーか
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世界中からハッカーが集まる会議「カオス・コミュニケーション・コングレス」の参加者たち。ハッカーたちの技術は政府や企業の予想を超える速度で進化している=2014年12月27日、ドイツ・ハンブルク(AP) ロシアのコンピューター・セキュリティー大手「カスペルスキー・ラボ」は16日、2013年末から現在までに、全世界30カ国の銀行約100社が極めて高度なサイバー強盗に遭い、総額10億ドル(1185億円)が不正送金される被害に遭っていたとのリポートを公表した。被害の大半はロシア国内の金融機関だったが、日本や米国、そしてオランダやスイスといった欧州の金融機関の被害も多く、こうした金融機関から数百万ドル(数億円)が不正送金されていた。インターポール(国際刑事警察機構)やユーロポール(欧州刑事警察機構)はロシアやウクライナ、中国のハッカー集団による犯行の可能性が高いとみている。
カスペルスキーの発表前に資料を入手した2月14日付米紙ニューヨーク・タイムズや2月16日付英BBC放送(いずれも電子版)などが報じたが、その手口はかつてないほど巧妙だ。
ハッカー集団はまず、標的となる多くの銀行の行員数百人の社内パソコンに電子メールで「カーバナック」と呼ばれるウイルスを送る。ハッカーたちは、感染したパソコンから行員のキーの打ち方や当該パソコンのスクリーンショット画像のデータなどを入手し、自由自在に外部操作できるようにする。
その後、ハッカー集団は、ネットバンキングの国際送金サービスなども利用し、自分たちのダミー口座に銀行から大金を送金したり、キャッシュカードを使わず、特定の時間に特定の現金自動預払機(ATM)から現金をはき出させ、仲間が持ち去るといった手口を重ねた。
カスペルスキー側は被害にあった銀行名などは公表していないが、最高被害額は1000万ドル(約11億8500万円)。ATMから計730万ドル(約8億6500万円)を盗まれた銀行もあった。
カスペルスキーからの情報を元にインターポールやユーロポールも犯人特定に努めているが、被害の大半がロシアだったことや、ウクライナ国内のATMが不定期に大金をはき出していたことで今回の一件が発覚したこと、そしてダミー口座が米JPモルガン・チェース銀行と中国農業銀行の名義だったことから、ロシア、ウクライナ、中国のハッカー集団が深く関わっているとみている。
ロシア在住のカスペルスキーの主要セキュリティー技術者セルゲイ・ゴロワノフ氏はBBCなど複数の欧米メディアに「ハッカー集団は銀行員のまねをし、銀行員の正常な日常取引に見せかけた」と話し、スパイのようにしたたかな手口に驚愕(きょうがく)したという。
カスペルスキーの北米事務所(米ボストン)のマネージング・ディレクター、クリス・ドゲット氏もニューヨーク・タイムズ紙に「サイバー犯罪の戦術や方法の中で最も洗練された攻撃法だ」と述べ「『カーバナック』を用いたサイバー強盗は、金融機関に対する高度なサイバー攻撃の増加を意味している」と警告した。
さらにカスペルスキーはBBCに、今回発覚した方法が「従来のように銀行顧客を狙う方法ではなく、銀行本体から大金を盗むもの」と説明、サイバー強盗の手口が新段階に入ったとして危機感を募らせている。
昨年末に発生した米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)へのハッカー攻撃以来、政府や企業がサイバー犯罪への対応を強めているが、ハッカー側の進化の速度は想像以上だ。ユーロポールのサイバー犯罪部門のトップ、トルールス・オーティン氏は昨年10月、BBCのラジオ番組で、世界のサイバー犯罪で中心的役割を果たしているのは約100人で、その大半がロシア語圏に住んでいると明かし、「彼らを取り締まる必要がある」と訴えていた。(SANKEI EXPRESS)