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サイバー聖戦 実は「はったり攻撃」 イスラム国が米軍ツイッターなど乗っ取り

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サイバー聖戦 実は「はったり攻撃」 イスラム国が米軍ツイッターなど乗っ取り

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シリアのラッカで2014年6月に行われた軍事パレードで、装甲車の上に乗り、“国旗”を振る戦闘員。武力を誇示するが、サイバー戦闘能力は未知数だ(ロイター)  中東地域を管轄する米中央軍のツイッターとユーチューブの公式アカウントが12日、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国(IS)」を名乗るハッカーに乗っ取られた。ハッカーは米国への“サイバー・ジハード(聖戦)”を宣言。バラク・オバマ大統領(53)がワシントンでサイバーセキュリティーに関する演説を行っていた真っ最中に起きており、政権の面目は丸つぶれ。ただ、ハッカーの戦闘能力は未知数。脅迫のために掲示した個人情報はネット検索で誰にでも入手できるものばかりで機密情報は漏れていない。専門家からは「稚拙なはったり攻撃」との指摘も出ている。

 「米兵よ、背後に気をつけろ」

 ISに対する空爆を指揮している中央軍のツイッターに異変が起きたのは12日午後0時半。画面にISの戦闘員とみられる人物が映し出され、「イスラム国を愛している」とのメッセージが現れた。

 預言者ムハンマドの後継者を指す「カリフ」にちなんで「サイバー・カリフ」とも名乗ったハッカーは「米兵たちよ、われわれは来ている、背後に気をつけろ、イスラム国より」「われわれは既に、お前たちのパソコンの中にいる」といった脅迫のつぶやきを書き込んだ。

 さらに北朝鮮や中国の戦力を分析した資料のほか、米軍高官らの連絡先や退役した幹部の氏名と自宅住所、軍の基地の契約業者一覧などの情報も掲載。「おまえたちや妻子の全てを知っている」と脅した。

 その約1時間後には、ユーチューブの公式アカウントに「真実の兵士たちよ、立ち上がれ」と題したISのプロパガンダ動画がアップされた。

 大統領が警鐘鳴らす最中

 米国は北朝鮮の犯行と断定したソニーの米映画子会社へのサイバー攻撃を受け、報復も含め対策強化を打ち出したばかり。乗っ取りが起きた同じ頃には、オバマ大統領は演説で米国がサイバー攻撃の脅威にされされていると警鐘を鳴らしていた。

 大失態をさらした軍を統括する国防総省のスティーブ・ウォーレン報道部長は会見で「機密情報が漏洩(ろうえい)したわけではなく、軍の作戦を危うくするものでは決してない」と強調。「悪ふざけかいたずらとみている」と強がった。

 ホワイトハウスのジョシュ・アーネスト報道官も「深刻に受け止めている」とする一方で、「大規模な情報流出とアカウント乗っ取りには大きな違いがある」と軽微な被害を強調した。

 初歩的犯行、新情報なし

 専門家の見方も同様だ。サイバーセキュリティーの専門家はロイター通信に「他人のツイッターや電子メールのアカウントを乗っ取るのはそれほど困難ではない」と語り、ハッキングの“初歩”との認識を示した。さらにハッカーが脅しに使った個人情報について、国際軍事専門誌IHSジェーンズ・ディフェンス・ウイークリーのアナリスト、ディラン・リアケ氏は英紙デーリー・テレグラフに対し、分析の結果、「ネットで簡単に検索でき、新しいものは何ひとつ含んでいない」と明言。検索情報を悪用した“はったり”との見方を示した。

 ISは、仏週刊紙銃撃事件にからんで政治的ハッカー集団「アノニマス」からサイバー攻撃を受け関連サイトがハッキングされており、現時点では防御も含めサイバー戦闘能力は高くなさそうだ。だが、ISにはネット勧誘を通じ欧米諸国から多数の若者が合流しており、優秀なハッカーをリクルートしその能力を一気に高める恐れがある。(SANKEI EXPRESS

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