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テロ新時代 全世界に潜在的脅威拡散 イスラム国合流の若者 後を絶たず

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テロ新時代 全世界に潜在的脅威拡散 イスラム国合流の若者 後を絶たず

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米ミネソタ州ミネアポリス市内のモスク(イスラム教礼拝所)で祈るソマリア系住民。一帯ではソマリア系住民が中東地域に赴くことへの懸念が強まっている=2014年12月12日(黒沢潤撮影)  2001年の米中枢同時テロから13年余を経て、世界は「テロの新時代」を迎えた。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」がシリアとイラク北部一帯に「国家」の樹立を宣言。その主張に共鳴しイスラム国に合流する欧米諸国などの若者が後を絶たず、テロの潜在的脅威が全世界に拡散している。米国では、ソマリア系が住む中西部ミネソタ州ミネアポリスのシダー・リバーサイド地区(通称リトル・モガディシオ)がテロ戦闘員の一大供給源と見なされ、治安当局の厳重監視下に置かれている。

 失業で怒りくすぶる

 「近くで強盗があったという理由で警察に突然呼び止められ、後ろから膝下を蹴られた。『お前はイスラム国に合流するんだろう』と何度も怒鳴られた」

 ソマリア系の高校生、オマル・モハメド君(18)が憤慨しながら語った。ソマリア系の若者は頻繁に警官の職務質問を受け、地区には緊張した空気が漂う。

 ソマリア内戦が激化した1990年代以降、ミネアポリス一帯には約10万人のソマリア系難民が流入し、全米最大の拠点を作り上げた。ここから最近、15人前後が中東に渡ったという。

 この中には19歳の少女もいた。青果店を経営する親類のモハメド・アフメド氏(39)によれば、少女は2014年8月に姿を消した後、シリアから突然、携帯電話でメッセージを送ってきた。高校時代の成績は優秀で、社交的な性格。少女がどのように勧誘されたかは分かっていない。

 移民の若者が過激思想に傾く理由の一つは失業だ。

 イスラム国に合流した若者の家族から相談を受ける「ソマリア教育社会対策団体」のアブディリザク・ビヒ代表(49)は、「街で5人と会えば仕事があるのは1人だけ。母国で医者だった者もタクシー運転手をしている」と話す。

 ミネソタ大のカオ・アブディ助教授(社会学)は、警察によるソマリア系を狙った職務質問も反米感情をかき立てていると話した。

 貧困にあえぎ、怒りをくすぶらせる人々にとり、イスラム国の主張は魅惑的だ。ネット上には潤沢な資金や充実した社会福祉を喧伝するイスラム国の動画があふれる。ソマリアの過激組織アッシャバーブの勧誘ビデオも「戦場は“ディズニーランド”だ」と言葉巧みに宣伝。彼らを「聖戦」にいざなうイスラム導師らも市内で暗躍しているという。

 カトリックから改宗

 キリスト教徒の白人が改宗し、イスラム国への加入を図るケースもある。

 米南部ノースカロライナ州ランディス出身の元中古車販売店員、ドナルド・モーガン被告(44)は14年1~8月にレバノンに滞在してシリア入りを目指したが、旅費が底を尽き、ニューヨークに帰国したところを逮捕、起訴された。

 被告はレバノンで「イスラム国のため戦う同胞に勝利を」などとネットで発信していたという。

 特殊部隊を志した被告は新兵訓練を修了できず、1991年の湾岸戦争への従軍を認められなかった。次に得た副保安官の仕事も長くは続かず、ボディービルダーを目指していた2008年、カトリックからイスラム教に改宗。中古車店を辞めた12年、ランディスの近くに団体「イスラム・センター」を設立、過激思想に関する発信を始めた。

 ジョージ・ワシントン大学でテロリストの心理を研究するジェロルド・ポスト氏は、被告をテロリスト志願者の典型例である「自らを世界から喝采を浴びることのできる傑出した存在だと思い込む、英雄的・空想的な人物」とみる。

 中古車店の元同僚(47)によると、被告は13年10月に町を出る前、「米国では虐げられているが、イスラム国では信徒がすべてを支配している」と話していたという。(ミネアポリス 黒沢潤、ランディス 加納宏幸/SANKEI EXPRESS

 ≪「ポップ・ジハード」 残虐性の無害化狙う≫

 雪が積もる林の中、腰に銃を携えた覆面の男数人が雪合戦に興じる。続いて素顔の男が現れ、ドイツ語で「ドイツの兄弟たちよ。ジハード(聖戦)に招待する」と語り、カメラに向けて人さし指を突き立てた。

 「アブ・タルハ・アルマニ」を名乗る男の本名はデニス・クスペルト氏(39)。ドイツ出身の元ラップ歌手だ。イスラム国の政治宣伝担当とされ、独情報当局はイスラム国指導部とも近いとみる。

 イスラム過激派のネット活用に詳しい専門家、アジーム・エルディフロウイ氏は、こうした宣伝ビデオを「ポップ・ジハード」と表現する。

 人さし指を立てるのはイスラム教で「神の唯一性」を示すが、ラップ歌手の「決めポーズ」でもある。聖戦の思想を欧米の若者文化と融合させ、その残虐性を「無害化」する。クスペルト氏はこの手法を用いる象徴的存在だという。

 当局資料によると、ガーナ人の父とドイツ人の母を持つクスペルト氏は旧西ベルリンの移民系地区などで育った。交通事故で重傷を負い、イスラム教に傾斜。2013年初めにシリアに渡った。宣伝ビデオが出現したのは14年4月ごろからだ。

 過去の過激派にはない、欧米文化で育った若者が親しみやすい宣伝は、ネットを通じて一気に拡散した。(ベルリン 宮下日出男/SANKEI EXPRESS

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