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北犯行に異論 ソニー内部説も サイバー攻撃 米専門家ら指摘
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北朝鮮の金正恩第1書記。お互いのリーダーを「独裁者」「サル」と揶揄し合う両国によるサイバー空間での壮絶なバトルは、闇に包まれた部分が多いのも事実だ=2013年7月27日、北朝鮮・首都平壌市(AP) 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記(31)の暗殺計画を描いたコメディー映画「ザ・インタビュー」を制作したソニー傘下の米国法人、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)に対するサイバー攻撃は北朝鮮政府が関与していると米政府は断定したが、米サイバーセキュリティー専門家らから異論が噴出している。北朝鮮による犯行だとは考えにくい点が多数あるためで、内部犯行説すら浮上してきた。米政府が主張の正しさを証明するには、詳細に情報を公表する必要があるが、それでは安全保障上の最高機密でもあるサイバー分野での手の内を明かすことになりかねないというジレンマを抱えている。
米連邦捜査局(FBI)は19日の声明で、「機密に当たる情報源と方法」を守るため全ての情報を明かすことはできないとした上で、北朝鮮による犯行と断定した根拠として、今回使われたウイルスが北朝鮮が以前に開発したものと類似点があることや、昨年3月に韓国の銀行や放送局が北朝鮮から受けたサイバー攻撃と手法が似ていることなどを挙げた。
だが、米CNNなどによると、専門家らは(1)過去に使われたウイルスを北朝鮮以外の個人や組織が流用した可能性がある(2)メディアで北朝鮮犯行説が持ち上がるまではハッカー側は金第1書記の暗殺映画に一切言及していなかった-などの疑問点を指摘、SPE側の内部犯行説も否定できないといている。
北朝鮮が以前に開発したウイルスは今では部品単位で販売されており、複数のグループが同じツールを共有している可能性がある。このため類似性をもって北朝鮮の犯行と判断するのは無理があるというのが、言い分だ。
また、「GOP(平和の守護者)」と名乗る今回の犯行グループは、当初は映画のことには一切触れず、SPEに対して不当なリストラへの抗議、金銭的要求などを行った。「ザ・インタビュー」のことに言及し始めたのは12月8日で、公開中止を要求したのは最初のサイバー攻撃(11月24日)から22日後の16日だった。
さらに、北朝鮮のサイバー攻撃能力を買いかぶり過ぎているとする主張もある。サイバーセキュリティーの専門家、スコット・ボルグ氏は「今回の犯行は、北朝鮮のサイバー攻撃能力に対してわれわれが想定しているレベルをはるかに超えている」という。今回、GOPは、SPEの従業員・俳優などの個人情報やメール、未公開のものを含む映画やファイル交換ソフトを大量に流出させ、100テラバイトのデータを盗み出したとしている。実際、それを裏付けるように盗んだ情報をサイバー空間に放出しているが、100テラバイトのデータをインターネット越しに流出させるには数週間はかかる。これにSPEの関係者が全く気づかなかったというのは不自然であり、「内部犯行説」が浮上する根拠になっている。
また、専門家がGOPのメッセージを言語解析したところ、英語の文法的間違いは元の言語から翻訳する際のミスによるものとみられ、攻撃者はハングルよりもロシア語を話す人物である可能性が高いとしている。
こうした一連の異説について、FBIやSPEは沈黙を貫いている。無論、バラク・オバマ大統領(53)自らが北朝鮮を名指しして断定した以上、確かな根拠があるに違いないとの見方が米メディアの主流だが、ふに落ちない点があることも確かだ。(SANKEI EXPRESS)