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テロに屈した「正恩氏映画」お蔵入り サイバー攻撃 米、北の関与断定

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テロに屈した「正恩氏映画」お蔵入り サイバー攻撃 米、北の関与断定

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公開中止を受け、「ザ・インタビュー」の宣伝ポスターをはがして運び去る米ジョージア州アトランタの映画館チェーン、カーマイク・シネマズの係員=2014年12月17日(AP)  米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)は17日、クリスマスシーズンの25日から公開を予定していた北朝鮮の金正恩第1書記(31)の暗殺が題材のコメディー映画「ザ・インタビュー」の公開中止を決めた。この作品をめぐっては、製作元のSPEがサイバー攻撃を受け、社員の個人情報から未公開作品までがネット上に流出。さらに犯人側が上映映画館をテロ攻撃するとネット上で脅したことから、観客の安全確保などを理由に公開中止となった。米当局は一連のハッカー攻撃は北朝鮮の仕業と断定。言論や表現の自由を封じた前代未聞のサイバーテロにハリウッドが怒りの声を上げている。

 「今後、公開せず」

 米紙USA TODAY(電子版)やロイター通信などによると、16日、犯人側が「世界は恐怖に満ちるだろう。9・11(の大規模テロ)を思い出せ。上映時間には映画館に近づかないことをおすすめする(家が近くなら、外出した方が良い)」などと上映館へのテロ攻撃を示唆する脅迫文をネットの掲示板に投稿した。

 そのため、事態を重視した米国内の主要映画館が公開の中止や延期を決定。16日のニューヨークでのプレミア上映も中止されたことからSPEが公開中止を決めた。17日午後には公式サイトなどからこの作品の情報がすべて削除された。

 SPEは「映画配給を抑圧するためのずうずうしい行為と努力を悲しく思う。われわれは表現の自由の権利を支持しており、このような結果は極めて遺憾である」との声明を発表。SPEの広報担当者はロイター通信などに「今後、公開する計画は一切ない」と明言した。公開時期の延期やウェブ配信なども行わないという。製作費4400万ドル(約52億2200万円)を費やしたこの作品は永遠にお蔵入りすることになった。

 FBIが捜査

 11月24日からSPEに対して行われた大胆かつ執拗(しつよう)なサイバー攻撃では、役員や社員の個人情報や、映画製作に絡む社内メモ、俳優の映画出演料のほか未公開作品まで流出する異常事態となり、米連邦捜査局(FBI)が捜査している。

 こうした一連のサイバー攻撃は、当初からこの映画を強く敵視する北朝鮮が関与しているとみられていたが、複数の米メディアは17日、米捜査当局が北朝鮮の関与を断定し、近く発表すると報じた。

 米CNNテレビ(電子版)によると、ネット利用を政府が厳重管理している北朝鮮には「ビューロー121」と呼ばれるサイバー攻撃部隊が存在しており、米捜査当局は、指導部がこの部隊にサイバー攻撃を実行させたとみている。

 怒りのハリウッド

 一方、今回の公開中止にハリウッドでは失望や怒りが渦巻いた。米大物脚本家、アーロン・ソーキン氏(53)は米紙ロサンゼルス・タイムズ紙(電子版)に「米国は、われわれが最も大切にしている基本原則(言論・表現の自由の順守)に対して行われた前例のない攻撃に屈した」と遺憾を表明。一連のサイバー攻撃で個人情報がネットに流出した米のジャド・アパトー監督(47)は、劇場主の公開中止決定は“恥ずべき事態”で「匿名の脅しが来た映画はすべて、公開中止になるのか?」と怒った。(SANKEI EXPRESS

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