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ダンス・ダンス・アジア in マレーシア(下) 笑いと喝采 出演者の指導に興奮

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ダンス・ダンス・アジア in マレーシア(下) 笑いと喝采 出演者の指導に興奮

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首都クアラルンプールのランドマークにもなっている「ペトロナスツインタワー」をバックに路上でダンスを踊るブルートーキョーのメンバー。ストリートダンスの原点に立ち帰った=2015年2月7日、マレーシア(田中幸美撮影)  ストリートダンスでアジアの国々との文化交流を進める国際交流基金アジアセンター(東京都新宿区)のプロジェクト「ダンス・ダンス・アジア」。

 2月6~8日にマレーシアの首都クアラルンプールで行われた3回の公演も大好評だったが、勝るとも劣らない盛り上がりを見せたのが7、8の両日、3グループが2回ずつ行ったワークショップ。学生を中心に240人が参加し出演者とダンスの交流を楽しんだ。

 体一つでロボット以上にロボットの動きを再現する「ロボットダンス」が特徴の「タイムマシーン」のワークショップには、60人が参加。リーダーの黄帝心仙人(こうていせんにん)さんをはじめメンバーが、実際ステージで行うダンスの短いバージョンを1フレーズごとに指導した。ロボットダンスは動画サイト「You Tube」に数多く投稿されており、多くの参加者が「ロボットダンスをマスターしたい」と話していた。みんな黄帝心仙人さんの独特のダンスを食い入るように見つめ、まねするなど白熱したレッスンが繰り広げられた。

 最後にタイムマシーンが“模範演技”を披露すると、会場は大きな歓声と拍手が沸き起こり、興奮状態に。大学生のケルビンさん(22)はダンサー志望。「とても難しくてできなかったが、これからも挑戦したい。指導を受けてとても楽しかった」と話した。

 また、ブルートーキョーのワークショップでは、倒立や側転など新体操の基本技をメンバーの補助で行った。最年少で参加したソム・シー・ジェイくん(7)が倒立をすると、補助していたリーダーの大舌恭平さん(26)が体を持ち上げて浮かせるパフォーマンスを披露。参加者から笑いと拍手が湧き起こった。最後には記念撮影をするなど終始和やかなムードに包まれた。

 ≪ステージへ 日本独特のシーン伝える≫

 ストリートダンスは、40年以上前に米の路上で発生し、ヒップホップ、ブレイキンなどさまざまな種類に枝分かれしながら発展してきた。今なぜ、本場の米ではなくアジアとの交流を始めたのか。

 国際交流基金アジアセンター・文化事業チームの吉岡憲彦さんによると、東南アジア各国ではこれまで日本から和太鼓などを呼んでほしいというリクエストが圧倒的に多かった。しかしここ数年、アニメなどに加え「ストリートダンスをぜひ」という新たな声が高まってきたという。アジア各国に駐在する国際交流基金の職員からも、具体的なダンサー名を挙げて招きたいという声が上がる一方、個々のダンスチームはそれぞれ草の根レベルの交流を続けていた。

 シンガポールで7年連続、大規模なヒップホップのフェスティバルに出演するなどアジアのダンスシーンに詳しいレッキンクルーオーケストラのリーダーのYOKOIさん(39)は、「アジアの中で日本が最初にストリートダンスシーンが大きくなり、近隣の韓国や台湾に波及した。東南アジアはまさに発展途上の状態ですごい広がり方をしている」と話す。「東南アジアの中ではシンガポールが一つ抜きんでていて、フィリピンやタイなどもダンスのレベルが上がってきている」という。

 当初ストリートダンスのコンテストを東南アジア諸国で大々的に行うという提案もあったが、既存のコンテストが多数存在する上、一から作り上げるには障害が多く断念。そこで、「ストリートからステージへ」を合言葉に、多くのダンスカンパニーから優れた舞台作品が生まれている現状に着目した。

 日本のストリートダンスシーンは、ただ踊るだけにとどまらず、芝居の要素を取り入れた舞台作品を生み出すなど独自の進化を遂げている。そこで、公演やワークショップを通じて「同じアジア人として理解を深めることができたらとプロジェクトを始めた」と吉岡さんは話す。

 プロデューサーを務めるパルコの中西幸子さんは、ストリートダンスは欧米では若い人と社会を結ぶ媒介になっていて、公的機関も支援に乗り出しているという。さらにその効果も顕著に現れていて、「こうした流れは日本にも必ず来る。本腰を入れてストリートダンスに取り組んでもらえるような環境づくりをしたい」と話した。(田中幸美(さちみ)、写真も/SANKEI EXPRESS

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