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渡辺謙55歳 なお挑戦の途上 ブロードウェー「王様と私」満員デビュー
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プレビュー公演の初日から一夜明けた3月13日、米ニューヨークのリンカーン・センター内で記者会見する渡辺謙さん=2015年(共同) 日米の映画で活躍する人気俳優、渡辺謙さん(55)がブロードウェーのミュージカルにデビューした。主役の一人として出演するミュージカル「王様と私」のプレビュー公演がニューヨークで始まり、初日の舞台から一夜明けた13日、渡辺さんは日本のメディアと記者会見し、「55歳にしては最大のチャレンジだ」と語った。ミュージカルが初めてなら英語での舞台も初めて。まさに大変な挑戦だが、「全力で取り組みたい。生みの苦しみを味わっても、芝居がすべての生活は楽しい」と意欲を示した。
プレビュー公演初日の12日、会場となったニューヨークのリンカーン・センター内のビビアン・ボーモント劇場は1000人以上の観客で満員となり、渡辺さんは長時間にわたる歌やセリフも最後まで演じきり、公演が終わると観客はスタンディングオベーションで応じた。
「王様と私」は1860年代のタイ・バンコクが舞台で、王子らのために王が呼び寄せた英国人の女性教育係と王との関わりを描いている。リチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタイン2世のコンビによる人気ミュージカルで、1951年にブロードウェーで初演されてから3回リバイバルされ、今回は1996年以来の上演になる。最初の3回の上演(全4625回)と、56年の映画化では名優、ユル・ブリンナー(1920~85年)がはまり役としてスキンヘッドの王を演じ、人気を博した。
渡辺さんは王の役で、文化の違いにぶつかりながら王と交流を深めていく相手役の教育係は実力派の米舞台女優、歌手のケリー・オハラさん(38)が務める。
「演劇集団 円」の出身で元来は舞台俳優の渡辺さんだが、ミュージカルは全く初めて。13日、記者会見した渡辺さんは映画との違いについて「映画はある程度間違いを許容するが、ミュージカルはミスを減らさないとお客さんに届かない」と語った。
演出を担当したバートレット・シャー氏(55)は米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで「確かに(渡辺さんの英語は)心配だ。しかし、彼に演じてもらうことで(英語が母国語でない東洋人と)西洋人との出会いのリアリティーが伝わる」と説明。「『硫黄島からの手紙』(2006年)で見せた彼の威厳にあふれ、一方で抑制が利いた演技に感銘した。あの時から、王様は渡辺さんと決めていた」と語った。昨夏、カナダ・バンクーバーで映画「ゴジラ」の撮影中だった渡辺さんに直談し、出演を固辞していた渡辺さんを「ベストダンサーもベストシンガーもいらない。とにかく根っから王様が演じられる役者が欲しいのだ」と口説き落としたという。
会見で渡辺さんは「自分の感触と相手(観客)の感触を通じ、本当にここでショーをやっているという実感が足元から感じられた一晩だった。深いテーマ性があるこのミュージカルを今、観客に届けられることに喜びを感じる」と語った。その上で4月16日の本公演初日に向けて「英語で表現する力をもっと精度を上げ、深めていかないといけない」と強調した。渡辺さんは7月まで出演する。55歳、まだ限りなき挑戦の途上にある。(SANKEI EXPRESS)