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【チュニジア襲撃テロ】「母は首を撃たれ動けなくなった」

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【チュニジア襲撃テロ】「母は首を撃たれ動けなくなった」

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チュニジアのハビブ・シド首相(右)の見舞いを受ける女性(中央)。NHKは結城法子さんとしている=2015年3月18日、チュニジア(ゲッティ=共同)  「頭を抱えてしゃがんでいたが、耳と手と首を撃たれて、隣で母が首を撃たれて自力では動けなくなっていた」。チュニジアの首都チュニスで起きた博物館襲撃テロで、けがをした女性がNHKの取材に答え、事件を生々しく証言した。

 負傷の女性、陸自医官か

 NHKの報道によると、女性は結城法子さん(35)。取材は病室で行われ、顔面に手当てを受けた跡があったが、意識ははっきりとした様子で、バルドー博物館で遭遇したテロの惨状をしっかりとした口調で語っていた。

 インタビューで、女性は「(博物館の)外で銃声が聞こえてガイドの人に部屋から移動するように言われて、そうしたら後ろから銃声が聞こえてきて」と証言。一緒に行動していた母は叙(のぶこ)さん(68)といい、ともに銃撃を受け、けがを負った後、「母を置いて先に博物館を出てきた」と話した。

 結城さんとされる女性は米紙ニューヨーク・タイムズの取材にも答えており、電子版によると、18日朝(現地時間)にイタリアからクルーズ船で、母とともにチュニジアの首都チュニスに到着した。

 取材に対し、女性は、頭上を銃弾が飛ぶ音がし、床に伏せたが、頬にけがを負ったと状況を説明。「母が生きているかどうか確かめるため、体を揺すったが反応はなかった」と話した。その後、母を見失ったという。

 岩田清文陸上幕僚長は19日の記者会見で、事件に巻き込まれて負傷した日本人に、陸上自衛隊の結城法子3等陸佐が含まれている可能性が極めて高いことを明らかにした。岩田陸幕長は「報道で出ている結城氏は現役自衛官と似ている」と述べた。

 結城3佐は防衛医大を卒業後、2004年3月に陸自に入隊。現在は自衛隊中央病院(東京都世田谷区)に麻酔科医として勤務している。今月12日から24日までの休暇届は出ていたが、自衛隊の内規で提出が義務づけられている海外渡航申請は出ていなかったという。

 ≪中高年に人気 地中海クルーズ暗転≫

 チュニジアの銃撃テロで死傷した日本人6人は、大手海運会社「MSC」(スイス)の子会社「MSCクルーズ」(イタリア)が運航する大型クルーズ船に乗船し、7泊8日の地中海周遊ツアーに参加中だった。

 MSCクルーズの日本法人は「犠牲者の方のご冥福を心よりお祈りすると共に、ご家族・ご友人が被害に遭われた皆さまに謹んでお悔やみを申し上げます」とコメントした。

 日本法人によると、船は13日にスペイン・バルセロナを出港し、フランスとイタリアを経由して18日にチュニジア・チュニスに入港。乗客と乗員は計約5000人で、日本人は日本国内の複数の旅行代理店を通じて177人が乗っていた。

 このうち91人が大手旅行代理店エイチ・アイ・エスのグループ会社「クルーズプラネット」(東京都渋谷区)が扱うツアーに参加。クルーズプラネットは死亡1人と負傷1人を確認した。担当者は「ご迷惑をかけた人たちには今後しっかりと対応していきたい」と話した。

 残る2人の死亡と2人の負傷を確認したクルーズ旅行専門会社「ベストワンドットコム」(新宿区)の担当者は「亡くなられた方にお悔やみを申し上げます。けがをされた方の状況も把握する必要があるので早急に現地に向かい、対応にあたりたい」と述べた。

 世界遺産の宝庫として知られる地中海沿岸国。地中海クルーズは特に中高年に人気が高く、過ごしやすい気候になる春から夏にかけて需要が高まるという。チュニジアはヨーロッパとアフリカの中継地点として栄えた歴史のほか、リゾート地としても人気を集めている。

 外務省はチュニスへの渡航について「治安当局の警戒体制は機能しているが、治安状況が依然不安定」として十分注意するよう渡航情報を出していた。

 ≪海外の食文化、熱心に学ぶ 宮崎遥さん 卒業直後の旅で犠牲≫

 チュニジアのテロ事件で死亡した埼玉県狭山市の宮崎遥さん(22)は、小学校のころから読書好きで、大学では海外の食文化を熱心に学んでいた。9日に卒業式を終えた直後の旅行で、惨事に巻き込まれた。

 通っていた女子栄養大(埼玉県)によると、遥さんは「食文化栄養学科」に在籍し、昨年12月には1年半掛けた学習成果を発表した。「トルコ料理の発祥と成熟には、オスマン帝国時代からの歴史がある」。トルコの歴史的背景をひもときながら、料理を丁寧に紹介したという。

 高校は埼玉県入間市の学校へ。文芸部で小説を書いていたという。教諭は「進学先など目標が明確だった」。死亡した母、チエミさん(49)と一緒にトルコや中国など海外旅行に出掛けることもあったという。

 小学校の卒業文集には、将来の夢を「看護婦か小説家になりたい」とつづった。「入院した母のお見舞いに行ったとき、同じ年の女の子が入院していました。その子は寂しげな顔をしていました。私は、子供に元気を与えてあげることのできる看護婦になりたいです」(SANKEI EXPRESS

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