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「未知の道」自動運転で米横断 部品大手デルファイ「究極のテストだ」

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「未知の道」自動運転で米横断 部品大手デルファイ「究極のテストだ」

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米カリフォルニア州サンフランシスコをニューヨークに向け出発するデルファイが開発した自動運転車。5600キロを走破して米国を横断し4月3日の到着を目指している=2015年3月22日(ロイター)  ハンドルを握らなくても目的地まで運んでくれる夢の自動運転車が、米サンフランシスコからニューヨークまで約5630キロを走破する米大陸横断に挑んでいる。米大手自動車部品メーカー、デルファイ・オートモーティブが開発したもので、22日に出発した。自動運転では、米グーグルがすでに公道での走行実験を繰り返すなど先行している。これに対し、今回の実験は一回の走行距離として米国最長記録となるほか、グーグルのように限られた地域内ではなく、交通状況がめまぐるしく変化する「未知の道」を走破する。デルファイは「究極の走行テストだ」と意気込んでいる。

 ゴールはNYのショー

 米主要メディアによると、独アウディのSUV(スポーツ用多目的車)「SQ5」をベースに、最新の自動運転技術を搭載した。レーダーとカメラのほか、22個のセンサーを備え、レーザー・マッピング技術によって周囲360度のリアルタイムの状況を立体的に画像化して把握。高性能ソフトウエアによって、周囲の複雑な交通状況に対応し、人間のようにハンドルやアクセル、ブレーキなどの運転操作を行う。

 サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジを22日に出発。高速道路を中心に走行し、車線変更や渋滞対応などの性能を試しながら、「ニューヨーク国際自動車ショー」の開幕日である4月3日に到着する予定だ。デルファイの技術者2人が乗り込み、1人は運転席に座り、もう1人がデータ収集などを行う。

 米ABCは出発日の22日の朝の情報番組で、約13キロの事前走行テストに女性リポーターが同乗しドライバーがハンドルを握っていない状況で車が市街地を走る様子を放映。「高速道路も高スピードで走り、カーブにも素早く対応している」などと伝えた。デルファイ研究所の責任者、ジョン・アブスメイヤー氏は番組で「人間よりずっと早く反応する」と胸を張った。

 また米CNNテレビによると、実験初日は車中での食事などのため3回停車した以外、5時間で約610キロを無事に走り切ったという。

 IT系企業への逆襲

 デルファイによると、今回の挑戦は、信号や標識などの道路状況を入力した地図データに基づき、限られた市街地などを走行するグーグルの実験よりも一歩先を行くものだ。道路や交通状況、気象条件の変化など予想のできない環境下での走行データを収集することを目的としている。

 デルファイのジェフ・オーウェンズ最高技術責任者(CTO)はメディアに「運転条件の範囲を拡大した究極のテストだ。自動運転車の市場で最高技術を提供するための、非常に貴重なデータが得られる」と述べ、実験の意義を強調した。

 収集したデータを活用して自動運転技術を確立。2020年から自動車購入時に5000ドル(約60万円)を追加するだけで、システムを搭載できるようにすることを目指す。

 デルファイは1999年に米自動車最大手のゼネラルモーターズ(GM)の部品製造部門が分離・独立して発足。2005年に経営破綻したが、再建を進め11年にニューヨーク証券取引所に再上場を果たした。

 自動車業界では、カリフォルニア州シリコンバレーに拠点を置くグーグルやテスラ・モーターズなどのIT系勢力が自動運転や電気自動車(EV)で攻勢をかけている。今回の挑戦は、伝統的自動車産業の“逆襲”としても注目される。(SANKEI EXPRESS

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