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法王の食卓 元料理人兼衛兵が紹介 バチカン市国

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法王の食卓 元料理人兼衛兵が紹介 バチカン市国

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著書「ボナペティ~スイス・ガード」を手にする、バチカン市国の衛兵を務めていたころのダビッド・ガイザーさん=2014年11月10日、バチカン(AP)  【Viva!ヨーロッパ】

 バチカン市国の衛兵とローマ法王フランシスコ(78)の「料理番」を2年間務め、先月(3月)、母国のスイスに帰任した男性が出版した法王の食卓に関するレシピ本が話題になっている。ヨハネ・パウロ2世(1920~2005年)とベネディクト16世(87)の前任2人の法王の好物として受け継がれた料理も含めて、70の料理(9編構成)の作り方が丁寧に説明されており、法王たちの人間の顔に迫る史料としても貴重といえ、人気を呼んでいる。

 出身国の一品が好物

 このレシピ本は、スイス・チューリヒ出身のダビッド・ガイザーさん(24)が昨年10月に出版した「ボナペティ~スイス・ガード(どうぞ召し上がれ~スイス衛兵より)」。タイトルはバチカンの公用語であるイタリア語で付けられているが、本文はガイザーさんの母語であるドイツ語で書かれている。

 ちなみにガイザーさんは、元々スイスでは名の知れたシェフで、これまでにもスイスで2冊のレシピ本を上梓したことがあるプロの料理人だ。スイスではよく、英国のカリスマ・タレントシェフ、ジェイミー・オリバーさん(39)と比較され、“チューリヒのオリバー”とも称されている。

 「ボナペティ・スイス・ガード」によると、法王フランシスコは、出身国であるアルゼンチンで1世紀前に誕生した牛乳と砂糖を使ったデザート「ドゥルセ・デ・レチェ」が大好物。スペイン語圏では広く親しまれている糖菓だが、2013年3月に法王フランシスコが就任してから初めて、法王の食卓の定番になったという。

 ポーランド出身のヨハネ・パウロ2世の好物は、生地にパン種を入れない「ピエロギ」と呼ばれるポーランド風のギョーザ。皮の中にザワークラウト(塩漬け発酵キャベツ)やジャガイモ、肉、チーズなどを入れ、好みに応じてフルーツも入れたりするのがピエロギの伝統的な作り方だ。

 ドイツ出身のベネディクト16世の好物は独バイエルン地方の料理。ザワークラウトやスパイスを利かせたソーセージを多用した料理が紹介されている。

 スイス人派遣の伝統

 フランス通信(AFP)によると、スイス人衛兵の指揮官、ダニエル・アンリグ氏はこの本に関連して「兵士が戦ったり戦争したりするには、しっかり食べていなければならない」とコメント。著者のガイザーさんは「歴代の法王の中には、料理好きで自ら厨房に立たれた法王もいたという。掲載したレシピの中から、読者がお気に入りの料理にトライしてみれば、より一層バチカン(法王庁)が身近に感じられるはず」と話している。

 本はスイスやドイツでは版を重ねる人気となり、今年の夏には要望が多かった英訳本も出版されることになった。

 ところで、ガイザーさんは13年2月から2年間、シェフとして「法王の料理番」を務める一方、衛兵も兼務した。軍隊を持たないバチカンでは、イタリア北部で国境を接するスイスから派遣された衛兵が法王周辺の警備を一手に引き受けているのだ。これは16世紀から続く伝統で、バチカン内の警察業務にもスイス人衛兵が当たっている。

 衛兵になれる条件は、(1)カトリックのスイス国民であること(2)年齢19歳から30歳まで(3)身長174センチ以上(4)国民皆兵制が基本のスイスで基礎軍事訓練の課程を修了していること(5)伍長と兵卒は独身であること-など。志願者の中からスイスの教会が選抜してバチカンに派遣している。衛兵隊のモットーは「勇敢にして敬虔に」。総じて気さくな衛兵たちは、観光客の記念撮影にも応じてくれる。(SANKEI EXPRESS

 ■バチカン市国 イタリアのローマ市内にある国土面積0.44平方キロ(東京ディズニーランドよりやや小さい)の世界最小の独立国。全世界のカトリック教会の中心である法王庁の所在地で、国家元首はローマ法王。1929年2月、当時のイタリアのムッソリーニ政権と法王庁とのラテラノ条約によって成立した。人口は約840人で、大半は法王庁の聖職者とスイス人の衛兵が占める。サン・ピエトロ大聖堂、システィーナ礼拝堂、バチカン宮殿などを擁し、国土全域がユネスコの世界文化遺産として登録されている。

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