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秘密交渉1年半 法王も仲介 米、キューバと53年ぶり正常化交渉へ
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12月17日、米首都ワシントンで、キューバとの国交正常化交渉の開始を発表したバラク・オバマ米大統領=2014年(ロイター) 半世紀にわたり敵対してきた米国とキューバが関係改善へ歴史的一歩を踏み出した。バラク・オバマ米大統領(53)は17日、ホワイトハウスで声明を発表し、1961年以来、断交状態にあるキューバとの国交正常化交渉を開始することなど、対キューバ政策を抜本的に変更する包括的な新方針を明らかにした。キューバのラウル・カストロ国家評議会議長(83)も17日、ハバナで演説し、「オバマ大統領の決断は尊敬と評価に値する」と歓迎した。関係改善はローマ法王フランシスコ(78)が仲介した。
両首脳は政策転換の発表に先立ち16日、約1時間にわたって「キューバ革命以来」(米高官)とされる電話協議を行い、受刑者や情報機関要員の相互の釈放などについても話し合った。
米側の新たな方針の柱は、(1)今後数カ月間で、キューバの首都ハバナに米国大使館を開設(2)米国人のキューバへの渡航、送金規制を緩和(3)銀行、貿易取引の正常化(4)キューバの民間部門に資する物品などの輸出拡大(5)米国によるキューバのテロ支援国家指定の見直し-など。ホワイトハウスによると、両国政府は来年1月、ハバナで局長級の国交正常化交渉を始める。ただ、来月から米上下両院の多数派となる共和党から強い反発が出ており、曲折も予想される。
米国は1961年1月、キューバ革命(1959年)を経て成立したフィデル・カストロ政権が社会主義化を進める中、米系資産を全面接収したことを受けて、キューバに断交を通告した。61年4月には、ケネディ政権下の米国の支援を受けた反革命部隊が武力侵攻したが、失敗。62年2月、米国は対キューバ全面禁輸を発動した。対立がエスカレートする中、62年10月、米国はソ連がキューバに中距離ミサイル基地を建設中と発表、ミサイル撤去を求めてキューバを海上封鎖するキューバ危機が起きた。結局、ソ連側が折れて基地建設を中止して撤去したが、ソ連船が一時カリブ海域に接近するなど、人類は全面核戦争の恐怖を目の当たりにした。
オバマ大統領は声明で、「過去約50年間の米国による(キューバに対する)孤立化政策は結局、効果がなく機能しなかった」と述べ、関与・融和政策にかじを切る必要性を強調した。米国はブッシュ前政権下で経済制裁などを強化したが、オバマ政権は人権状況の改善などを条件に対話を模索していた。
両国の秘密交渉は約1年半前に始まり、オバマ氏が「キューバとのハイレベルの接触」にゴーサインを出したのは昨年春だった。さらにキューバと国交があるカナダが場所を提供、オタワとトロントを舞台に7回前後の交渉があった。
南米アルゼンチン出身で人権問題に熱心なローマ法王も仲介の労を執った。オバマ氏は今年3月、バチカンで行った法王との初会談の大半をキューバ問題に費やしたとされる。法王はその後、オバマ氏とカストロ氏に書簡を出し、それぞれが拘束する情報機関員らの釈放を要請。10月に双方の代表団を集めてバチカンで行われた詰めの交渉で双方は歩み寄った。
任期があと2年となり歴史に残る「功績づくり」を焦るオバマ氏と、経済制裁の解除を強く望むキューバ側の思惑が一致、さらに法王の仲介で背中を押され、歴史の歯車が回った。(SANKEI EXPRESS)