ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
科学
【Message from the Ocean】(5)ヤップ 豊かな自然 「島の日常」を学ぶ
更新
イカダに乗って海へ繰り出す子供たち。ちょっとした冒険にワクワクしていた=2014年10月19日、ミクロネシア連邦(米信託統治領)・ヤップ州マープ島(越智隆治さん撮影) ヤップ州は、ミクロネシア連邦(米信託統治領)の西端に位置し、ヤップ島をはじめ4島と約130の環礁からなる。ヤップダンスや、スターライトナビゲーション(星を利用した航海術)を学ぶ伝統カヌー学校、巨大な石貨、村ごとのカースト制度など、いまだにヤップ独自の伝統文化を色濃く残す、そして、手つかずの自然あふれる豊かな場所だ。
私は、毎年のようにヤップ州のマープ島にあるワチュラブ村という人口30人程度の小さな村に、家族を連れて訪れていた。長男の海友(かいと)は、1歳の頃から、そして、二男の颯友(はやと)は生後3カ月から。
島での彼らの生活は、とにかく自然の中で素っ裸になって遊びまくることだった。
陸では、放し飼いの犬や猫と戯れたり、ヤドカリを捕まえたり。ヤシの実を食べて、木登りをしたり、パチンコを作ったり、火をおこしてもらい、バーベキューをしたり。ヌーヌーと呼ばれる花輪や、ヤシの葉でバッグを作ったり。ジャングルを探検したり。ナタを振るって、道なき道を切り開いたこともあった。そして、町に出かけるときには、トラックの荷台に乗って移動した。
海では、魚を釣ったり、スノーケリングやダイビングを楽しんだ。ときには、ボートの操船をさせてもらうこともあった。ビーチの浅瀬に入ると、1日中海につかりっぱなしの日も多かった。
村人たちは、日本から来た子供たちの良き先生となった。木に登ってヤシを取ったり、魚を突いたり、全て自然の中にあるものを利用して食事を作ったりする彼らにとっては、日常生活での当たり前のスキルは、日本においては、学ぶ機会のない貴重なものだった。
≪思いっきり遊んで 「ここに住みたい!」≫
とにかく、日本にいたら「危ないから」とか、「人に迷惑がかかるから」ということが優先され、「これしちゃだめ、あれもしちゃだめ」と、がんじがらめにされてしまっている子供たちも、ここでは、本当にやりたいことを好きなようにさせてもらっていた。
ほとんどなにものにも拘束されず、自然の中で生き生きとはしゃぎ回る子供たち。彼らの目の輝きと笑顔は、日本にいるときの数倍も、数十倍も輝いていた。
自分のホームページやフェイスブックに、この島での息子たちの野性味あふれる生活をアップしたところ、「自分もこんな自由な場所で、子供たちを思いっきり遊ばせたい」と、自分たちがこの村に訪れるタイミングに合わせて、やってくる親子連れの知り合いも少しずつ増えてきた。
しかし今、この豊かな自然が多く残るヤップに、中国人投資家による一大リゾート開発の波が押し寄せてきている。陸には数千も客室のある大型リゾートホテルやカジノが建設され、マンタの住む海も大型の船が出入りできるように、大幅な開発が行われる可能性もあるという。
この小さな南国の島は、今、リゾート開発賛成派と反対派に分かれて対立している。ヤップ州では、先月、将来のリゾート開発の指標にもなる、州知事選が行われた。結果は、開発賛成派の知事が当選した。
外から来た自分たちに、「大規模リゾート開発反対!」と声高に言える権利はないのかもしれない。しかし、ここを訪れた多くの子供たちが、テレビもゲームもなくても、一日中楽しんでいられる、「またヤップに行きたい!」「ヤップに住みたい!」と、素直に口にできる、みせかけではない、素晴らしい自然と人々の生活の知恵が残されている。
自分たち家族にとって、特別な場所でもあるこの場所が、いつまでも、今のままの姿であってほしいと願わずにはいられない。(写真・文:海洋フォトジャーナリスト 越智隆治(おち・たかじ)/SANKEI EXPRESS)
YAP RIZE DIVING CENTER www.rizedivingcenter.com