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【Message from the Ocean】ニューカレドニア、バヌアツ ジュゴン 人懐っこい理由は…

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【Message from the Ocean】ニューカレドニア、バヌアツ ジュゴン 人懐っこい理由は…

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人魚のようにも見えるジュゴン?_イルカのような三角形の尾びれを持っているのがジュゴン。そうでないのがマナティだ=2012年10月25日、フランス領ニューカレドニア島(越智隆治さん撮影)  オーストラリア南部を中心に、熱帯から亜熱帯にかけてのインド洋と太平洋の広い地域に生息する海の哺乳類ジュゴン。その個体数は約10万頭といわれる。沖縄でもたまに目撃情報があり、8月17日には、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先となる名護市辺野古の東方沖でジュゴンとみられる海獣がヘリコプターから確認された。

 南太平洋の島国、ニューカレドニアとバヌアツに、ジュゴンの撮影で訪れたときのことだ。どちらの国にも、ジュゴンが生息していることは知っていた。今までに、パラオやインドネシア、オーストラリアなどで偶然遭遇したり撮影したことはあった。しかし、とてもシャイな性格なので、なかなか写真にしっかり収められない。うまい具合に撮影できたことはなかった。

 しかし、この2つの国では、ある海域にとても人懐っこいジュゴンがいて、かなり接近して、というか目の前で一緒に泳ぐことさえできるという情報を得た。そこで両方訪れることにしたのだ。

 最初に訪れたのは、ニューカレドニア。首都ヌーメアから車で約2時間半の、町も何もない静かな海岸だ。ここに、1頭のオスのジュゴンが姿を見せる。長いときには1日中、この海岸近くで餌になるウミヒルモという海草を食べたり、遊んでいたりするのだという。

 実際に近寄ってみると、最初は多少警戒してはいるものの、今まで遭遇したどのジュゴンよりも、その警戒心は何十倍も弱かった。カメラを向ける僕にちょっと背中を見せる程度で、逃げようとはしない。

 それどころか、自分に害がないと認識したのか、慣れてくると向こうの方から僕の体に接触してくるばかりか、ドスドスと頭をおなかにぶつけてきた。さらにウエットスーツの上から甘噛みし始めたのだ。「こいつ大丈夫かな」と思い、よく見るとペニスを出していた。

 「やや! これはちょっとやばいかも」と思い、少し時間と距離を置こうと、ビーチに向かって泳ぎ始めると、今度は向こうから追いかけてきて、同じことを繰り返そうとする。

 ≪500キロを泳いだ「あいつ」だったのか≫

 こんな状態だから、思う存分撮影はできたが、気に入られ方が気に入らない。一緒に同行していた、現地のダイビングサービスのガイドには、そんなそぶりは見せていなかったのに。

 このフレンドリー?いや、変態ジュゴンとの遭遇の数日後、僕はバヌアツのエピ島にある、ラーメン湾に生息するというフレンドリージュゴンの撮影に訪れていた。

 しかし、確かに数頭のジュゴンには遭遇したし、他の海域で出会ったジュゴンに比べれば、撮影可能な距離にいてくれたけど、ニューカレドニアで出会ったあの変態…、もとい、フレンドリージュゴンとは比べ物にならない。「変態でもいいから、もっと接近してほしい」と本気で思ったものだ。

 ガイドしてくれたバヌアツ人に聞いた話では、数年前、その人懐っこいジュゴンに向かって、銛(もり)を投げた男性がいて、それ以降そのジュゴンの姿が見られなくなってしまったということだった。銛を投げた本人いわく「ジュゴンに向かって投げたのではなくて、ジュゴンについて泳いでいた魚を捕まえようとしただけだ」とか。

 いずれにしても、バヌアツのフレンドリージュゴンは、その日から姿を消した。

 このジュゴンが姿を消した時期を同じくして、ニューカレドニアに、人懐っこいジュゴンの遭遇情報が出回るようになった。

 バヌアツからニューカレドニアまでの距離は約500キロ。図鑑やネットなどで調べたところによると、ジュゴンが500キロ(東京~大阪くらい?)の外洋を泳いで移動することは、あり得ないことではないという。

 確証があるわけではないが、もしこの2頭のジュゴンが同じ個体であったのなら、それはそれで、なんだかちょっと感動的な話ではある。本格的に調べようとも考えたが、ジュゴンの物語として、自分の心にしまっておくことにした。だから、たとえ多少変態であっても、またこのジュゴンに会いに行きたい。(海洋フォトジャーナリスト 越智隆治(たかじ)、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■おち・たかじ 1965年、神奈川県生まれ、千葉県浦安市在住。慶応義塾大文学部卒。産経新聞社写真報道局を経てフリーの海洋フォトジャーナリストに。スキューバダイビングと海の総合サイト「ocean+α(オーシャナ oceana.ne.jp)代表。大物海洋生物をテーマに世界中の海を舞台に撮影し、これまでのダイビング数は7000本。「海からの手紙」(青菁社)、「WHALES! クジラ!大写真集」(二見書房)など著書多数。個人のウェブサイトは、INTO THE BLUE(takaji-ochi.com)。バハマでタイセイヨウマダライルカと泳ぐクルーズなど世界中の大物海洋生物と泳ぐツアーを企画している。

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