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ワールドオーシャンズデイ 危機のマンタ 救う女性博士

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ワールドオーシャンズデイ 危機のマンタ 救う女性博士

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毎日数回は海に潜ってマンタの生態を調査研究するアンドレア・マーシャル博士=2013年3月16日、モザンビーク(提供写真)  大きい個体では体長が5メートル以上に及ぶ世界最大のエイ、オニイトマキエイは通称「マンタ」と呼ばれる。海の中で優雅なダンスを見せるマンタだが、実は乱獲のために絶滅の危機にひんしているという。

 マンタの魅力にひかれた女性海洋探検家のアンドレア・マーシャル博士は、世界有数のマンタの生息地に移り住んで研究を続ける。長い間マンタは1種類だけしかいないと考えられてきたが、マーシャル博士は少なくとも2種類に分けられることを発見するなど、研究によって種の存続が危ぶまれるマンタを救う道を模索する。

 「マンタの生態や行動について毎日驚くような新しい発見があります」と話すマーシャル博士。研究拠点とするのは、アフリカのモザンビーク南部にある人里離れた海岸だ。この地域一帯は遭遇率が90%以上といわれる世界有数の「マンタスポット」でもある。

 マーシャル博士によると、マンタは魚類の中で最大の脳を持ち、信じられないほどの距離を泳ぎ、海面から1.5キロほどの深さまで潜ることができるという。約40年の寿命の間、眠ることなく泳ぎ続ける。好奇心が旺盛で賢く、人間と触れ合ったり遊んだりするのが大好きだ。

 海面付近で餌を取ることが多いため、釣り針や漁網に絡まったり、船に衝突したりすることがよくある。ある日、漁網に絡まったマンタが博士の元へやってきて痛みに耐えながら釣り針や釣り糸を取り除くのを辛抱強く待っていたという。「並外れた信頼を人に寄せてくれるのです」とマーシャル博士はいう。

 ≪実は3種 緻密な観察が結実≫

 今、マンタの生息数は激減している。食用や漢方薬の原料に使うために乱獲が行われているからだ。野生のマンタは2、3年に1匹しか稚魚を産まないため乱獲が行われると種の存続が危ぶまれる。世界のマンタの数は激減していてマーシャル博士が活動するモザンビークではわずか10年で88%以上も減少した。

 また、博士は毎日数回海に潜り、衛星タグを取り付けてマンタの行動を観察、さらに遺伝子サンプルを収集するなどして、約950もの異なるマンタをデータベース化。大半は見分けがつくという。

 そこでマーシャル博士は新たな発見にたどり着いた。特定の個体の尾の付け根に際立ったもようと脊椎の名残があることに気付いたのだ。長い間1種類しかないと考えられていたマンタが実は2つ目の種があると確信。そして博士のチームは2種類が存在することを証明し、2009年12月に論文を発表した。それは過去50年において最大の発見となった。さらに3つ目の種の存在についても確信を得たという。

 こうした努力が実って2013年、マンタは国際取引を規制することで保護を目指す「ワシントン条約」の規制対象となった。さらに、博士はモザンビーク政府にマンタの生息する海域の保護を訴えるなど、マンタを救う道を探っている。

 ≪一色海岸でビーチクリーン≫

 スキンケアのブランド「ドゥ・ラ・メール」は、海の重要性を認識して海洋保護に取り組む「ワールドオーシャンズデイ」の6月8日、神奈川県葉山町の一色海岸でビーチクリーン活動を行った。

 今年初めて行ったビーチクリーン活動は公式フェイスブックなどで募集。首都圏を中心に名古屋や大阪などからも参加した計約60人が海岸のごみ拾いを行い、45リットルのごみ袋25袋分が集まったという。ごみは、たばこの吸い殻やプラスチックごみが大半を占めた。(EX編集部/撮影:Jose Alejandro、NationalGeographic/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ワールドオーシャンズデイを記念したパッケージの化粧品「クレーム・ドゥ・ラ・メール(100ミリリットル)」は6月末まで限定発売。売り上げは海洋調査家の支援などに充てられる。

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