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科学
【Q&A】地下水の海洋放出 厳格基準、第三者が検査
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福島第1原発で、海洋放出のため、配管から排水溝に流れ出る地下水=2014年5月21日(東京電力提供) 東京電力は5月21日、福島第1原発で汚染水を減らす対策の一つである「地下水バイパス」の運用を開始し、地下水561トンを海に放出しました。
Q どんな仕組みなの
A 1~4号機原子炉建屋から山側に80~200メートル離れた12本の井戸で、建屋に流れ込む前の地下水をくみ上げて一時貯留タンクに集めます。集めた水の放射性物質の濃度を検査し、東電が定めた基準値以下なら海に放出します。
Q なぜ放出する必要があるの
A 原子炉建屋には1日約400トンの地下水が流れ込んで汚染水が増え続けています。汚染水を保管するタンクの容量には限りがあり、建屋への流入量を少しでも減らすことが喫緊の課題です。
Q どれくらい流入量を減らせるの
A 東電は1日数十~100トン減らせると試算していますが、地下水の動きは目で確認できないため、実際の効果が分かるまでには2、3カ月かかると説明しています。
Q 海に放出しても大丈夫なの
A 東電は国の法令基準よりも大幅に厳しい独自の基準を定めました。例えば放射性セシウム134は60分の1、セシウム137は90分の1、トリチウムは40分の1の数値です。
Q 水の検査結果は信用できるの
A 検査は東電以外に、第三者機関が実施します。4月にくみ上げた水を検査した結果、東電の基準を大幅に下回る数値でした。
Q 地元の理解は得られたの
A 福島県の漁協では本格再開を目指した試験操業を続けています。廃炉を進める上で地下水バイパスが避けて通れない作業であることなどを踏まえ、「苦渋の決断」として容認しましたが、風評被害を心配する漁業関係者は多くいます。
Q 今後の運用はどうなるの
A 東電は1週間に1度程度の頻度で放出する考えです。
Q 本当にうまくいくの
A 地下水をくみ上げ過ぎて山側の地下水位が急激に下がると、建屋の汚染水が外に流出する恐れがあります。東電は慎重に運用し、凍土遮水壁などの対策と併せて効果を高める計画です。ただ、これまでの汚染水処理では地上タンクからの高濃度汚染水漏れなどトラブルが多発したことから、東電の管理能力を疑問視する声もあります。
≪漁業者、苦渋の受け入れ≫
福島第1原発の地下水放出は、漁の本格再開を目指し試験操業を続けている福島県の漁協が、東電と国によるたび重なる要請を受け「苦渋の決断」として認めた経緯がある。漁師らは「汚染水対策のためにはやむを得ないが、消費者の反応が心配だ」と話した。
福島第1原発から南に約30キロのいわき市久之浜(ひさのはま)港の漁師、北郷輝夫さん(63)は「東電や国を信用できない気持ちを抑え、廃炉を進めるため苦渋の選択をしたのだから、放射性物質濃度の排出基準をしっかり守ってもらうことが大前提だ」と語った。
相馬双葉漁協(福島県相馬市)の佐藤弘行組合長は「安全だと確認した魚を出荷しているので、消費者は今まで通り受け入れてほしい。東電と国は排水基準を厳守するとしわれわれは容認した。今、異議を唱えることではない」と指摘した。
相馬市の松川浦漁港の高橋通さん(59)は「漁業者だけでなく、観光業など関係する人はみんな心配しているだろう」と不安を口にした。(SANKEI EXPRESS)