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遠い国で起きた悲劇だと思わないで 映画「皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇」 シャウル・シュワルツ監督インタビュー
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初めて映画作りに挑んだ報道カメラマンのシャウル・シュワルツ監督=2015年4月2日(高橋天地撮影) パレスチナ紛争を精力的に報道してきたイスラエル出身のカメラマン、シャウル・シュワルツ(40)が、監督兼カメラマンとして初めてドキュメンタリー映画を手がけた。作品はメキシコ国内に跋扈(ばっこ)する複数の麻薬カルテルと警察の戦いに肉薄したもので、邦題も「皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇」とおどろおどろしいものとなった。
「世界で最も危険な街」とされるメキシコの都市、シウダー・フアレス。毎年3000件以上の殺人事件が発生するこの街で、地元の警察官、リチ・ソトは証拠品の収集に力を注いできたが、なかなか本格捜査に着手できない。事件の背後には麻薬カルテルがいて、捜査関係者への報復が後を絶たないためだ。実際、彼の同僚はわずか1年間に4人も殺害され…。
プロモーションで初来日したシュワルツ監督は、麻薬戦争に巻き込まれ市民100人が殺害されても、地元警察が立件に動くのはわずか3件-という絶望的な現状を改めて指摘したうえで、「麻薬戦争がどこか遠い国で起きた悲劇だと思わないでほしい」と訴えた。
一方、シュワルツ監督は警察側ばかりの話に終始せず、麻薬カルテルの武勇伝を高らかに歌い上げるメキシコの人気ジャンル「ナルコ・コリード」の若い歌手、エドガー・キンテロにも密着し、彼とファンの思考回路の解明も試みた。
「麻薬カルテルを扱った映画は多いですが、彼らの存在に触れたものはありません。僕は差別化を図ったわけです。最初、彼らの歌詞を聴いたとき、怒りがこみ上げてきました。でも、ジャーナリストに大切な心構えは、自分と異なる存在をいかに理解するかと思い直し、好奇心へと昇華させていったのです」
20年近い報道カメラマン生活を経て、シュワルツ監督が映画撮影に興味を持ったのは、ふと目の前に現われるドラマチックな現実を切り取るには、1枚の写真だけではおのずと限界があると感じたからだという。シュワルツ監督が4年をかけた命がけの“潜入取材”で描きたかった視点の一つが「麻薬取引が社会に富を生み出している」という現実だ。「麻薬戦争が約6万人ものメキシコ人の命を奪った一方で、麻薬取引がもたらす富を渇望しているメキシコ人も大勢います。他のドキュメンタリー映画がほとんど光を当てたことがない領域ですよ」。映画作家デビューした大型新人は、すでに次回作の準備に着手したそうだ。4月11日から東京・シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS)
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