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東証一時2万円回復 15年ぶり 「クジラ」下支え 海外投資家が牽引

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東証一時2万円回復 15年ぶり 「クジラ」下支え 海外投資家が牽引

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日経平均株価のこの日の高値である2万6円を表示する大和証券トレーディングルームのモニター=2015年4月10日午前、東京都千代田区(大西史朗撮影)  10日の東京株式市場で日経平均株価が一時、2万円を回復した。ITバブルと呼ばれた2000年4月以来約15年ぶり。終値は前日比30円09銭安の1万9907円63銭。東証株価指数(TOPIX)は4.65ポイント安の1589.54。出来高は約20億4500万株だった。

 円安進行で企業業績が改善し、国内外の資金が市場に流入した。バブル崩壊後の長期低迷を経て、日本経済は再生に向け一歩前進した。

 東京証券取引所第1部に上場する企業の株式時価総額は約573兆円と、バブル期の1989年12月に記録した最高額の約590兆円に迫った。ただ、金融緩和で余った資金が実力以上に株価を押し上げている面がある。

 89年12月29日に3万8915円87銭の史上最高値を記録した平均株価は、バブル崩壊や金融危機で下落傾向が続いた。2000年のITバブルで一時持ち直したが、08年9月のリーマン・ショック後、10月の取引時間中に6994円90銭のバブル後最安値に落ち込んだ。

 12年12月に経済政策「アベノミクス」を掲げる安倍政権が発足すると上げの勢いを増し、日銀が13年4月に大規模な金融緩和を実施して上昇基調が定着した。金融緩和による円安で大企業の業績が回復し、設備投資や賃上げの動きが積極化した。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの公的資金による株式投資の拡大も相場を支えている。

 10日は、前日の欧米株の上昇を好感し買い優勢で始まった。平均株価への影響が大きいファーストリテイリング株が好決算で急伸したことも相場を押し上げ、一時2万6円00銭の高値をつけた。その後は達成感から利益確定の売りが広がり下落に転じた。

 ≪「クジラ」下支え 海外投資家が牽引≫

 平均株価が一時、2万円の大台を回復した。政権はアベノミクスの成果と「手柄」を誇示し、市場では強気論が勢いづく。だが、政府や日銀が振り付けた「官製バブル」に個人投資家は踊らず、熱気は乏しい。

 4万円視野

 「大きなバブルは制御できないが、ミニバブルぐらいは歓迎だ」。甘利明(あまり・あきら)経済再生担当相は10日午前、平均株価が2万円をわずかに超えた直後の記者会見で、こう喜んだ。野田佳彦前首相が衆院解散に言及し、「アベノミクス相場」が事実上始まったのは2012年11月14日。その終値8664円と比べると、2.3倍の水準まで上昇した。統一地方選・前半戦の投開票を12日に控え、政権からは「アベノミクスが奏功している証拠だ」(官邸筋)とアピールする声が聞こえる。

 株高はこのところ加速している。平均株価は1月につけた今年の安値から3000円以上も上昇した。日米に続いて欧州中央銀行(ECB)が量的金融緩和を決めたのをきっかけに、お金がさらに流れ込むとの見方が広がったためだ。

 「東京五輪の時には株価4万円が視野に入る」。投資コンサルタントの武者陵司氏は3月、東京都内で開いた投資セミナーで熱く語った。約四半世紀前につけた最高値3万8915円を超えるとの予想は今や珍しくない。

 7兆~8兆円流入

 相場上昇の主役は、市場で「外国人」と呼ばれる海外投資家だ。欧米に比べて日本企業の業績改善ピッチが速いとの分析から、積極的に株を買っている。野村証券の予想では、主要上場企業約300社の最終利益が15年度は約15%増える。

 海外勢に買い進むことへの安心感をもたらしているのが、その巨大さから市場で「クジラ」の隠語で呼ばれる官製資金だ。

 クジラの筆頭格で厚生年金など約130兆円を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は昨年、安全第一の運用方針を変更、国内株式投資の割合を倍の25%に増やすことを決めた。GPIFの「兄弟」とされる公務員などの共済も追随。さらに日銀が異次元緩和の一環として年3兆円の上場投資信託(ETF)を吸い上げる。大和証券の塩村賢史シニアストラテジストは日銀と年金の合計で「年に7兆~8兆円規模の資金が株に流れる」と試算する。クジラの存在が、株価が下がりにくい市場をつくっている。

 個人は戸惑い

 「今の相場は何かおかしい。上がる理由が分からず、経験したことのない雰囲気だ」。証券仲介業の女性(52)は個人投資家の戸惑いを代弁する。株価が上昇を続けた3月、海外投資家が差し引き5300億円を買い越す一方、個人投資家と国内機関投資家の代表格の保険会社はいずれも1000億円以上、売り越した。

 カブドットコム証券の野口泰司営業推進部長は10日、「注文の電話はいつもよりも少ない。お客さんは冷静で熱狂は感じない」と話した。

 「世界的な金融相場」(藤戸則弘三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資情報部長)は、年内に見込まれる米国の利上げで崩壊する恐れもある。

 ある経済官庁幹部は「アベノミクスを自画自賛するような話ではない。無理に株価を維持しても、お金の流れが逆回転を始めると収拾がつかなくなる」と警鐘を鳴らした。( SANKEI EXPRESS

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