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GDP2四半期連続減 在庫調整で「想定外」のマイナス

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GDP2四半期連続減 在庫調整で「想定外」のマイナス

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7~9月期のGDP速報値の発表後に、今年2番目の下げ幅となった日経平均株価を示すボード=2014年11月17日午後、東京都中央区八重洲(共同)  内閣府が17日発表した今年7~9月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.4%減、このペースが1年間続くと仮定した年率換算は1.6%減で、2四半期連続のマイナス成長となった。マイナス幅は4~6月期の1.9%減(年率換算は7.3%減)から縮小したが、プラス転換を見込んだ政府や民間予想より大幅に悪い結果で、景気低迷が鮮明となった。

 「デフレマインドが払拭し切れていないなか、(4月の)増税のインパクトが想定より大きかった」

 予想外のマイナス成長について、甘利明(あまり・あきら)経済再生担当相(65)は17日の会見でこう述べた。夏場の天候不順が個人消費を押し下げたほか、住宅投資や設備投資の回復遅れも響いた。

 GDPの約6割を占める個人消費は前期比0.4%増と2四半期ぶりに増加。衣類や日用品は増税に伴う駆け込み需要の反動減から持ち直した。だが、自動車や家電は不振が続き、回復の度合いは弱かった。

 設備投資も0.2%減と2四半期連続の減少。増税後の生産回復の遅れによる稼働率低下で、投資が控えられた形となった。企業が、増税直後に積み上がった在庫を調整したことも成長率を押し下げた。住宅投資も増税の影響が続いており、6.7%減と2四半期連続の減少だった。

 ただ、甘利氏は「企業収益が雇用者報酬につながる好循環は動いており、景気後退という一言では片付けられない」とし、「アベノミクスの失敗ではない」と強調した。

 ≪在庫調整で「想定外」のマイナス≫

 民間予測外れ

 内閣府が発表した今年7~9月期のGDP速報値は実質年率1.6%減で、事前の民間予測平均の実質年率2.42%増を大幅に下回った。民間予測と政府の統計がこれほど食い違うのは珍しい。多くのエコノミストが驚きを隠さない「予測外れ」の背景には、消費税増税後という特殊な経済状況下で、企業の在庫調整の影響や設備投資の回復を読み誤ったことがあるようだ。

 「在庫の減少が成長率のマイナスに寄与するとは思っていたが、これほどとは思わなかった」。7~9月期の実質GDPを年率で前期比2.2%増と予測していた日本総研の下田裕介副主任研究員は、予測が大きく外れた理由をこう説明した。

 在庫の減少にはさまざまな背景が考えられるが、GDPの統計上はマイナスに働く。7~9月期は結果として成長率を前期比0.6ポイント、年率換算だと2ポイント以上押し下げた。下田氏は前期比0.2ポイント程度の押し下げとみていたという。

 ただ、在庫の減少は先行き、景気にプラスに働く可能性もある。個人消費の低迷で4~6月期に積み上がった在庫の削減が終われば、消費の回復とともに「生産の増加が期待される」(下田氏)ためだ。

 今回、もう一つ事前予測と速報値が大きく異なったのが設備投資だ。民間予測は、先行指標とされる機械受注統計や日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)の底堅さから、設備投資はプラスに転じるとの見方が強かった。想定外の2四半期連続減の結果について、農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「非整合的な内容」と首をかしげる。

 また、明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは、そもそも「GDP速報値段階は基礎統計がそろっておらず予測は非常に難しい」とこぼす。

 一方、内閣府は今回の速報値に、設備投資の動向を示す7~9月期の法人企業統計などを加味した改定値を12月8日に発表する。在庫調整が、企業の投資意欲につながれば速報値段階よりもGDPが改善する可能性もある。

 ≪東証急落、今年2番目の下げ幅≫

 週明け17日の東京株式市場の日経平均株価は5営業日ぶりに急反落した。日経平均の終値は前週末比517円03円安の1万6973円80銭と、1週間ぶりに1万7000円を割り込むとともに、今年2番目の下げ幅を記録した。

 東京外国為替市場では、7~9月期のGDP速報値の発表後に円売りが加速し、一時は約7年1カ月ぶりとなる1ドル=117円台をつけた。その後は、「株価下落のリスク回避で安全資産とされる円を買い戻す動きが強まった」(大和証券の今泉光雄チーフ為替ストラテジスト)ことで、115円台に上昇した。債券市場では、長期金利の指標である新発10年債(335回債、表面利率0.5%)の利回りが前週末より0.005%低い0.470%だった。安全資産とされる国債に買いが集まって利回りは低下した。(SANKEI EXPRESS

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