ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
経済
税の無駄遣い 595件、2831億円 検査院13年度報告
更新
河戸光彦会計検査院長(左)から決算検査報告を受け取る安倍晋三(しんぞう)首相=2014年11月7日夕、首相官邸(共同) 会計検査院は7日、官庁や政府出資法人などの2013年度の決算検査報告を安倍晋三首相(60)に提出した。税金の無駄遣いを指摘したのは595件、2831億円で、12年度より約2000億円少なかった。
国民の安全に直結する防災施設や鉄道施設などインフラの保守管理で国や自治体、事業者の不備が露呈。東日本大震災の復興関連事業でも、有効に活用されていない国の補助金や交付金の存在が明らかになった。
安倍首相による消費税再増税への判断が注目される中、昨年より減ったとはいえ、依然として多額の税金が無駄遣いされている状況に国民の厳しい視線が注がれそうだ。検査院は引き続き震災復興関連の施策や実質国有化している東京電力への調査を進め、国会に報告する。
局地的豪雨などへの対応を目的とする全国のダムの検査では、23道県の106カ所で河川から流入した土砂が堆積し、治水機能が低下している現状が判明。「洪水ハザードマップ」の作成をめぐっても、避難施設名を記載しないなど自治体の不備が目立ち、補助金など8億9000万円が有効活用されていなかった。
13年度のJR北海道のレール検査状況を調べた結果、未検査や未補修など不適切だったのが計約500カ所に上ることを確認。JR四国でも20カ所が未検査だった。
一方、東電福島第1原発事故による放射性セシウム汚染問題を受けた肉牛など畜産農家への支援事業では、未使用の交付金595億円が国庫に返納されていなかった。
また計4410億円を交付した岩手、宮城、福島3県での集団移転促進事業では、土地の造成工事の遅れや、希望者の減少で空き区画が生じる状況を確認。放射性物質に汚染された「指定廃棄物」の処理では、耐用年数が切れた容器を保管に使っていた施設もあった。
法令違反に当たる「不当事項」は402件で141億円。日本オリンピック委員会(JOC)に加盟する全日本スキー連盟など10団体は、事実と異なる領収書に基づき合宿の滞在費を算定するなどして09~12年度に国の補助金計2億6000万円を不当に受け取っていた。
検査院は指摘金額が昨年度より減った理由を、100億円以上の無駄を指摘した案件が半数以下になったほか、複数の部局や地域に絡む案件が減少したためとしている。
≪宅地造成、廃棄物処理…震災復興事業「停滞」裏付け≫
会計検査院が公表した2013年度の決算検査報告からは、東日本大震災の復興事業が必ずしも計画通りに実行されていない状況がうかがえる。
集団移転の促進事業でみられる宅地造成の遅れ。放射性物質に汚染された廃棄物の処理では、耐用年数が切れた容器を保管に使ったケースもあった。国や自治体は住民の要望を踏まえ、安全に配慮した対応が求められる。
移転事業を所管するのは国土交通省。岩手、宮城、福島の3県で被災した地域住民らに高台への集団移転を促す費用として11年度以降、約4410億円を投じた。
しかし検査院によると、13年度末に宅地の造成工事が完了する予定だった55事業のうち、実際に終えたのは13事業のみ。作業遅れの影響で移転する考えを変えた被災者も多く、分譲や貸し付けの希望があった区画は当初の約1万4000から約1万に減少した。整備予定の342団地のうち、希望区画数が減ったのは192団地に上り、検査院は「国交省は、事業規模見直しも含め市町村に助言すべきだ」と指摘した。
一方、放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8000ベクレルを超える焼却灰などの「指定廃棄物」の保管状況について、検査院は、環境省や、国交省と委託契約を結んだ自治体や事務組合などの事業主体を調査した。
指定廃棄物は基本的に、事業主体の施設で容器に入れ保管することになっているが、14年6月時点で6事業主体のごみ処理場など7施設で、耐用年数を超えた容器に保管していたことを確認。他にも9事業主体の11施設では、耐用年数が不明の容器が使われていた。環境省は「耐用年数が過ぎていても安全性に問題はない」と強調するが、引き続きチェックが必要だ。
また被災地への木材安定供給を目指す林野庁の補助金事業では、実際には被災9県(青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉、新潟、長野)に原木がほとんど届いていない状況も明らかになり、検査院は効果を疑問視している。(SANKEI EXPRESS)