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アフガニスタン 大統領選決着、経済浮揚へ期待

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アフガニスタン 大統領選決着、経済浮揚へ期待

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9月22日、アフガニスタンの首都カブールで、税務当局によって閉鎖させられた飲食店。町の道路は整備され、タリバン政権時代には禁止された女性の写真を使ったポスターは普通の風景になった。女子の就学率が上がり、多くの女子生徒が町を歩く=2014年(岩田智雄撮影)  アフガニスタンで不正投票をめぐり混乱していた大統領選が決着し、来年以降の米軍などの駐留に道筋がついたことで経済浮揚への期待が高まっている。駐留継続に対する不安から、アフガンでは昨年以降、外国からの支援頼みの経済が停滞していたため、首都カブールでは、胸をなで下ろす市民の声が聞かれた。

 米軍駐留継続に道筋

 市内で建設業などを営んできたザビフラ・バデルさん(30)は、「私たち実業家は、混乱の犠牲者だ」と不満をあらわにした。

 バデルさんは4年前に建設会社を立ち上げ、地元住民や国際部隊から注文を受けてきた。警備用の大型コンクリートブロックは1個で600ドル(約6万5000円)の利益を生み、100個ほど売りさばいた。

 しかし、アフガンの治安維持を担ってきた国際治安支援部隊(ISAF)は、年内に撤収する。これに追い打ちをかけるように、来年以降、アフガン軍の支援のために規模を縮小させて兵士駐留を継続させる予定だった米、北大西洋条約機構(NATO)とアフガン政府の交渉が行き詰まった。

 理由は、駐留兵の地位を定める安全保障協定への署名をハミド・カルザイ大統領(56)が昨年以来、拒否してきたことだ。イスラム原理主義勢力タリバンとの和平などを署名の条件にしてきたが、「米兵の駐留を許した大統領」として、タリバンや反米感情を持つ一部アフガン人の恨みを買うことを避けたとの見方が根強い。

 今年に入っても、大統領選に立候補し、不正投票をめぐって対立したアシュラフ・ガニ元財務相(65)とアブドラ・アブドラ元外相(54)の政争が続いた。不安定な政治や国際部隊の完全撤退による治安悪化への懸念から、アフガンからの資金流出や投資減少が加速した。

 昨年は歳入が初の減少

 世界銀行が発表した昨年の経済指標をみると、新規会社登録数は約3100件と前年比で38%減となった。国際支援を除く歳入は約19億ドル(約2100億円)で、統計のある2003年以降で初めて減少に転じた。実質経済成長率は3・6%の見通しで、前年の14.4%から大きく落ち込んだ。01年のタリバン政権崩壊後、国際支援を受けて右肩上がりだった経済は、成長が頭打ちになっている。

 バデルさんは昨年9月に会社をたたみ、小さな連絡事務所を開いて市場復活を待つ毎日を送っている。

 今月21日、ガニ、アブドラ両氏が数カ月に及ぶ政争を経て挙国一致政権を作る文書に署名し、ガニ新大統領の就任が決まった。ガニ氏は安全保障協定の署名を明言している。世銀は、15年に実質経済成長率を4.9%に戻すことは可能だとしている。バデルさんは「ISAFが撤収しても、外国の支援は続くから景気は回復する」と話す。

 国際支援を待つ市民

 不動産業を営むモハマド・ミール・ハムラーズさん(45)によると、カブールの賃貸物件の相場は4年前に比べて4割以下に下落した。

 カブールは国際支援で道路整備などが進み、ここ数年で見違えるほど環境は良くなっている。しかし、ハムラーズさんの事務所の隣の飲食店は、所有者が税金を納められず、1週間前に税務当局に閉鎖させられたという。ホテルや高級飲食店の入り口はテロ防止の金属製の二重扉などで守られ、住民がタリバンの脅威と背中合わせで生きている状況は以前と変わらない。

 ハムラーズさんは「カルザイ大統領は自分のことしか考えなかった。この国は指導者によって、かつての内戦状態に戻ることもありうる。協定署名で国際社会の支援をつなぎとめることが必要だ」と訴えた。(カブール 岩田智雄(いわた・ともお)、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■アフガニスタン大統領選 4月の初回投票で首位となったアブドラ・アブドラ元外相と2位のアシュラフ・ガニ元財務相が6月の決選投票に進んだ。暫定結果でガニ氏が首位となったが、アブドラ氏が投票で大規模な不正があったとして、このままでは最終結果を受け入れられないと表明。全投票の監査と再集計が行われるとともに、両者による挙国一致政権を樹立することが合意され、9月?日にガニ氏の大統領就任が決まった。

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