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「師走総選挙」へ強まる解散風 首相、再増税先送りのシナリオ描く
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中国・首都北京市周辺地域 安倍晋三首相(60)は来年10月の消費税率10%への再引き上げの先送りを決めた上で、早期に衆院を解散し、12月中に衆院選を行う検討に入った。「12月2日公示-14日投開票」「9日公示-21日投開票」が想定される。今月17日に発表される7~9月期の国内総生産(GDP)の速報値を受け、再増税の先送りを表明し、国民にその是非を問うシナリオが有力視されている。
アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席のため中国を訪れている安倍首相は11日、北京市内のホテルで記者会見し、衆院解散・総選挙について「解散のタイミングについては何ら決めていない。私自身は解散について言及したことは一度もない」と述べ、まだ白紙の状態であることを強調した。一連の外遊日程を終えて帰国する17日にも、公明党の山口那津男(なつお)代表(62)らと解散について協議するとみられる。
山口氏は解散を打診された場合、受け入れる見通し。11日の記者会見では「報道各社の解散についてのシナリオや見通しが重なってきている。それなりの構えを考えざるを得ない」と述べ、公明党幹部に衆院選の準備に入るよう指示したことを明らかにした。公明党幹部は支持母体の創価学会側にも「準備を進めてほしい」と要請しており、学会側は11日に開いた各ブロックの責任者を集めた緊急会議で、態勢を整えるよう指示した。
一方の自民党では消費税率10%への再増税を先送りすべきだとの意見が急速に広がっている。年内に衆院選が実施された場合、政府・与党が予定通り消費税率の再引き上げを決定するかが最大の争点になるとみられるためで、再増税先送りに向けた自民党内の動きが早期解散論を後押しする構図となっている。
自民党の再増税慎重派でつくる「アベノミクスを成功させる会」(山本幸三会長)は11日、会合を党本部で開いた。前回は15人だった参加議員も、この日は27人に増加。山本氏は18日にも首相への提言をまとめる考えを示した。消費税再増税の「1年半先送り」を盛り込む方針だ。
衆院当選1回生でつくる「無名の会」(星野剛士会長)も11日に消費税に関する勉強会を開催。講師に再増税の先送りを訴える本田悦朗内閣官房参与(59)を招いた。会の幹部は「アベノミクスの恩恵は地方にまだ行き届いていない。再増税は先送りすべきだ」と語る。12日には鳩山邦夫元総務相(66)が主宰する派閥横断型の政策グループ「きさらぎ会」も本田氏を招いて勉強会を開く。
一連の動きの裏にちらつくのは、再増税先送り論者とされる菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)の影だ。自民党内には財政再建の観点から再増税を予定通り実施すべきだという声も少なくない。ただ選挙になれば、有権者の懐を直撃する再増税を声高に唱えづらくなる。再増税慎重派による相次ぐ勉強会の開催には、こうした議員心理を突いて反増税の世論を一気に党内に広げようという狙いも見え隠れする。
自民党執行部も吹き始めた「解散風」にブレーキをかける気配はない。谷垣禎一(さだかず)幹事長(69)は11日の党役員連絡会で解散について「首相が熟慮して決めるだろう」と官邸サイドの動きを黙認。二階俊博総務会長(75)も記者会見で「常在戦場だ。時が来れば果敢に戦い、自民党が圧勝できる態勢を整えたい」と強調した。(SANKEI EXPRESS)