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ドル建て株価は下落 海外の不安映す

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ドル建て株価は下落 海外の不安映す

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日本株式指数の円建て、ドル建て比較=2014年7月1日~9月16日  【国際政治経済学入門】

 日経平均株価は円安の追い風を受けて1万6000円台を付けているが、ちょっと変である。というのは、ドル建てでみると、株価は下落基調にあるからだ。

 グラフは、主要国・地域の株価をドル建てと現地通貨建ての2つで示す「MSCI」指数の日本株と、円の対ドル相場の推移である。円建て株価指数は、円安基調と並行してじりじりと上昇し、9月19日時点で7月初めに比4.4%上昇したが、ドル建てでみると逆に3%近く下落している。円安の進行度合に比べ、円建て株価の上昇幅が小さいからだが、円建て指数とドル建て指数は日銀による異次元緩和が2013年4月4日に打ち出されて以来、ほぼ重なるようにして変動してきた。それが、8月中旬あたりから乖離(かいり)し始め、現在に至る。

 GDP速報受け乖離

 きっかけはどうやら、8月13日発表の4~6月期国内総生産(GDP)第1次速報値のようである。実質経済成長率は、消費税増税前の駆け込み需要の反動減が「想定外」の大きさとなり、年率換算でマイナス6.8%だった。9月8日発表の第2次速報ではマイナス7.1%に下方修正された。家計消費は戦後最大級の落ち込みだし、住宅投資や民間設備投資はもっと激しく下振れした。企業在庫も増え始めた。7月以降の家計消費などの景気指標は停滞しており、消費税増税実施当時に想定した「7~9月期からのV字型回復」は望み薄だ。

 日本の景気減速について、21日に閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、麻生太郎財務相や黒田東彦(はるひこ)日銀総裁が米国などから厳しく景気てこ入れを求められる始末だった。麻生、黒田両氏とも景気回復に楽観的で、財務官僚は財務相に来年10月からの消費税再増税を「国際公約」とさせる手はずだったようだが、それどころではなかった。

 ドル建て株価の低迷はこうした国際的な対日懸念の反映のように見える。何しろ、日本国内ではいまだに経済への先行きへの楽観論が支配的で、慎重な安倍晋三首相とは対照的に谷垣禎一(さだかず)自民党幹事長をはじめ与党内では消費税率再引き上げについて「予定通り」の声が多数派だ。

 株価に話を戻すと、気掛かりなのは、「外国人投資家」の動向だ。通常、日本株の売買の6、7割はニューヨーク・ウォール街を本拠にする投資ファンドなど外国人投資家が占める。これら投資ファンドは、日本株など海外株と米国株をドル建てで計算し、保有シェアをしばらく固定して資産を運用する。円安に振れると、日本株のドル換算価値が下がる。すると、投資ファンドの自動売買プログラムは日本株の保有シェアを引き上げるよう日本株を買い増す。その結果、「円安=日本株高」の構図となる。それが、アベノミクスがもたらした円安が、株高につながった最大の要因である。

 もちろん、米国株価も米投資ファンドの対日株式投資に影響する。米国株が上昇しているとき、投資ファンドの米国株保有シェアが基準値より上がるので、このときも自動売買プログラムが作動して、日本株を買う操作が行われる。しかし、最近の米株価は連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和打ち切りや利上げ懸念を受けて、一進一退の状況にある。日本株価は昨年のように、円安と米株高の二重の押し上げ要因を享受できそうにない。

 しかも、今回は円安にもかかわらず、外国の投資ファンドの日本株買いの意欲は高くないようで、海外の多くの投資ファンドが資産構成に占める日本株のシェアを引き下げている可能性もある。

 政府は国内最大の投資ファンドで、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式保有の比率を引き上げるといった株価底上げ策を検討している。ところが、投機的な海外の投資ファンドは、日本経済の地合いがよくないと見れば、GPIF効果で一時的に日本株が上がった瞬間をとらえて売り逃げしかねない。株価を高めに安定させるためには、やはり、持続的な経済成長を実現する財政・金融政策に徹するしかない。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS

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