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消費税再増 財務省の策謀にはまるな

 アベノミクスによる景気の好転を受けて、2013年度の一般会計税収は46兆9529億円となり、前年度実績(43.9兆円)比で6.9%、3兆円余り増えた。財務省はこれについて、13年度の当初予算の税収見込み43兆円と比較せずに、補正後の予算で見込んだ税収に比べて「1.6兆円上振れ」と矮小(わいしょう)化した数値を記者発表した。財務省はご丁寧にも、1.6兆円分のうち1兆円は「一時的要因による」と説き、アベノミクス効果を打ち消すのに努めた。

 意図的に低く見積もり

 名目国内総生産(GDP)の前年比伸び率は1.9%であるのに対し、税収総額は6.9%伸びた。GDP増加分1に対して税収がどれだけ増えたかという税収弾性値は3.7で、従来の実績値である3~5の範囲内だ。財務省は税収弾性値を1.1程度にしか見ない。内閣府は、経済モデルを使った「経済成長と財政健全化に関する研究報告書」(11年10月17日付)で01~09年の税収弾性値を4.04と算出している。財務官僚は弾性値を決め打ちして、国家経済政策の要の予算を運営し、税制を動かす。この狂った国家経済の羅針盤(税収弾性値)をそのままにしておかず、首相は正確な弾性値を内閣府や御用学者ではない専門家に算出させて15年度予算以降に生かすべきだ。

 その財務省が14年度に見込んでいる一般会計税収総額は50兆円で、13年度実績比3兆円余りの増収である。内訳をみると、13年度に比べて増加しているのは税率を8%に引き上げた消費税収(増収額4.47兆円)だけで、所得税収と法人税収はそれぞれ7300億円、4900億円の減収となる。

 こうした税収減は通常、景気の失速を前提にするのだが、13年度税収を意図的に低く見積もり、消費税増税効果を際立たせようとする財務官僚の数字操作のたまものだ。増税しなければ、後述するような消費需要などの減退はなく、アベノミクスによって、14年度も13年度並みの経済成長達成は十分可能のはずだ。弾性値3とすると一般会計税収は5.7%増えて49.6兆円が見込める。成長率が13年度を上回れば楽々50兆円を超す。つまり、消費税増税がなくても50兆円程度の税収は確保できる計算になる。だから財務官僚は「自然増収」を無視したがる。

 消費増税ショックは大きく、5月の勤労者家計の実質消費支出は前年同期比8.8%減まで落ち込んだ。実質収入も4.6%減で、春闘による賃上げは増税後の物価上昇にはるかに及ばない。その現実を無視して、日経新聞は「夏場以降の回復」を連日のように書き立てるし、消費税増税で安倍晋三首相の背中を押した黒田東彦日銀総裁は消費増税前の駆け込み需要の反動減について「おおむね事前の想定の範囲内」と言い続け、個人消費、設備投資とも底堅いと楽観する。

 97年の教訓生かせるか

 今回の増税後の消費の落ち込みや実質収入の減少、鉱工業の出荷の減少や在庫の増加傾向は1997年度の消費増税後をかなり上回っている。アナリストの片岡剛士三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員は、消費税増税後の景気回復過程は「L字型」を示すと指摘した。つまり、需要は落ち込んだまま停滞を続け、来年以降にも及ぶ可能性があるという。97年増税の場合は98年以降の慢性デフレを招いてしまった。

 グラフは増税前の96年度と比べて税収がどうなったかを示している。所得税収と法人税収は大きく落ち込み、その減収分が消費税増収分をはるかに超えて財政が悪化して、現在に至る。全体の税収が増えたのは97年度だけだが、それでも消費税以外の税収は減っている。98年度からはデフレ局面に入り、消費税を含む全体の税収は96年度を下回り続けている。増税で財政は健全化するどころか、悪化しっぱなしである。

 財政赤字を理由に、財務官僚は次なる消費税増税を仕掛け、野田佳彦民主党政権(当時)を丸め込んで、自民、公明の両党を巻き込んだ「3党合意」を成立させて、2014年4月から8%、15年10月から10%への増税路線を敷いた。97年増税による惨憺(さんたん)たる結果を無視したわけである。

 14年度は財務官僚が見込んだ予算ベースで消費税収は大幅に伸びるが、所得税と法人税収入はアベノミクス効果が表れた13年度実績を下回る。1997年増税がそうだったように、増税によるデフレ効果が税収減となって本格的に表れるのは増税実施の翌年度からである。財務省はその愚を繰り返すうえに、2015年秋の再増税を安倍首相に最終決断させようとしている。首相は失敗の責任を絶対にとらない官僚の意のままになるのか、それとも、97年増税の失敗の教訓を生かして、官僚からの圧力をはねのけるか。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS

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