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【国際政治経済学入門】米中サイバー戦争、休戦の可能性も

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【国際政治経済学入門】米中サイバー戦争、休戦の可能性も

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中国・首都北京市  北京では、この7月9、10日に米中の閣僚級による第6回「経済・戦略対話」が開かれた。軍事・安全保障では南シナ海・東シナ海における中国の軍事的威圧行動、経済では人民元の為替レート操作問題と並んで、今回の焦点になったのは、「サイバー・セキュリティー」問題だ。

 「2013年には米政府所有を含めた世界中の無数のコンピューター・システムが攻撃にさらされたが、その多くが中国政府及び軍による」(米国防総省が議会に提出した14年版「中国に関する軍事・安全保障の進展」報告書)というありさまで、米中間のサイバー攻撃・反撃は日常茶飯事だ。

 「対話が必要」認め合う

 米国の専門家によると、この6月19日午後6時に突如「フェイス・ブック」のコンピューター・サーバーがサイバー攻撃を受けて約30分間機能停止した。米軍のサイバー攻撃部隊は、15分間で中国人民解放軍の仕業と発信源を突き止め、報復攻撃に出て、中国国内の携帯電話を不通にさせた。すると、中国側からの攻撃が止んだので、米側も報復を中止した。「やられると、静かに即座にやり返す」のがサイバー戦争の常道だが、表立って発表しない。手の内を明かさないためだ。

 だが、米司法省は5月19日、サイバースパイの容疑で、中国軍の「61398部隊」所属の5人を起訴、顔写真付きで指名手配した。米原子力大手ウエスチングハウス(WH)、鉄鋼大手USスチールなど企業5社と労働組合が同部隊によるサイバー攻撃にさらされ、米産業の虎の子である原発や、太陽光パネルの重要技術が盗まれたという。中国側は容疑を全面否定し、「でっちあげだ」と猛反発。サイバー安全保障を話し合うため、米中が設けた作業部会の中止を決めた。

 今回の経済・戦略対話で米中の折り合いはつかず、作業部会の再開で合意もできなかった。だが、米中の関係閣僚の声明を読むと、サイバーに関する「対話」が必要と認め合っている。米国のケリー国務長官はサイバー攻撃による知的財産の盗窃を批判しつつ、「両国が議論を続けることが大切だと合意した」と言い、楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に、よう・けつち)・中国国務委員(外交担当)は「米側がサイバー問題に関する両国の対話と協調の条件を作り出すよう望む」と応じた。

 中国側にしてみれば、米当局がマイクロソフトなどインターネット・サービス大手をことごとくコントロール下に置き、しかも世界のネット情報の大半が米国内の光通信ケーブルやサーバーを経由する状況で、サイバー戦争を対等に戦える状況ではない。米側のネット探知能力がずば抜けて高いことは、上記の61398部隊とその犯行者たちを特定したことからもうかがわれる。

 まずは民間が警告

 さらにこの6月9日、サイバー・セキュリティー企業の米クラウド・ストライク社は中国人民解放軍が07年以降、米国や欧州に対するサイバー攻撃を行っているとする調査報告書を公表した。この報告書は、中国人民解放軍総参謀部第3部には61398部隊の他に61486部隊があると暴露し、この部隊を「Putter Panda」と名付けた。部隊は上海市閘北区に拠点を置き、電子メールを通じて特殊なマルウエア(悪意のあるプログラム)を送り付け、米国の国防当局や欧州の衛星および航空宇宙産業などを対象にサイバースパイ活動を行っているという。犯行者の1人の電子メール・アドレスを突き止め、米側のサイバー探査能力を誇示している。

 この種の報告は米情報当局や軍の手で行わず、民間企業を使う。61398部隊の存在も民間のサイバー・セキュリティー会社、マンディアント社から13年2月に明らかにされていた。まずは民間の手で警告し、中国側の出方次第で米政府が告発に乗り出すわけである。

 無防備の日本は

 圧倒的に見える米側のサイバー戦闘能力に対して、中国側は共産党の指令下に置かれているとみられる情報通信機器・技術大手「華為技術」と「ZTE(中興通訊)」の2社が海外の通信インフラ市場でのシェア拡張を着々と進めている。華為技術は低価格と高性能が売り物で、日本ではソフトバンク系の高速無線通信ネットワークを構築するなど、無線や端末機器で通信各社に食い込んでいる。華為技術が納入する通信ネットワークやサーバーに「バックドア」と呼ばれるスパイ装置を埋め込むと、難なく相手国の個人や企業の情報を入手し、悟られることなく相手を攻撃できる。

 米国は中国からのサイバー攻撃に十分対抗できるし、中国製品も米国のネットワークから排除した。米側の弱みは、米国のネット関連企業が情報通信の巨大市場である中国市場から閉め出されたり、さまざまな報復措置をうけたりすることだ。米中がサイバー戦争を休戦状態に持っていく可能性は否定できない。その場合、中国からの攻撃に対し、ほぼ無防備の日本はどうするか。サイバー・セキュリティーはあくまでも自国の問題で、米国の民間が販売するセキュリティー・システム技術を買え、というのが米国の姿勢なのだ。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS

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